斬首に見る女のエロティシズム 玄人好みの美術展 クラーナハ展@国立西洋美術館

土曜日のクリスマスイブは上野にある国立西洋美術館へ
「クラーナハ展 500年後の誘惑」を見に行ってきました。

クラーナハ展

日本で初めてのクラーナハの大回顧展です。


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私がクラーナハ展をやると知ったのは夏頃だったでしょうか。
「うわぁ、クラナッハ展やるんだ!」と、
通好みの思ってもみなかった回顧展の情報に
絶対行く!と心が躍ったものでした。

本当は開催初日に行きたかったところですが
恵比寿ガーデンシネマでの「男と女」も同日スタートで
予定がズレにズレてクリスマスイヴにようやっといく事が出来ました!

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クリスマスイヴとあって上野も人が多かった。

12月半ばまで行われていた「ダリ展」や「ゴッホとゴーギャン展」は
教科書にも載ってしまうレベルの知名度から
ライトなファンや、一般層も巻き込んだおかげで大混雑でしたが
クラナッハとくると「誰?」状態なんでしょうね
混雑もなくゆっくりと見て回ることが出来てとても見やすかったです。

クラーナハ=誰?であっても、展覧会の広告はいろんなところで
されていましたので、女性と生首という組み合わせに
クラーナハをご存知ない方でも
この絵は印象に残っている方もおおいのではないでしょうか。



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ドイツの巨匠 ルカス・クラナッハ
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クラーナハはクラナッハと表記されることも多いので
クラナッハの方が馴染みがある方も多いかと思いますが
以後はクラーナハで統一します。

ルカス・クラーナハ(父)は1472年にクローナハで生まれと言われている
ドイツ・ルネサンスを代表する画家です。

クラーナハには同名の画家の息子がおり区別をつけるために
ルカス・クラーナハ(父)、ルカス・クラーナハ(子)と表記されています。


ザクセン選定侯フリードリッヒⅢ世の宮廷画家でもあり
ヴィッテンベルクに工房を構えています。


クラーナハは描くのが早いだけではなく
大規模な工房を持っていたため作品を大量生産しています。
また一つの作品でもいろんな表現方法を用いていたので
そういう才能も多くの作品を残すことに成功した要因のひとつだったのでしょう。


さらに素晴らしいのは画家としての成功だけではなく
事業家であり、市長としての政治家での活躍も見逃せません。

芸術家としての才能だけではなくビジネスセンスにも長けていた人物なのです。

日本では一般的な知名度は低いように思えますが
年代は失念しましたがかなり昔に書物でも紹介されており
今回そちらも展示されていました。

クラーナハというと裸体やユディトやサロメ、ヴィーナスなどの
女性たちを独特のエロティシズムをもって描いている印象があります。

今回告知で使われた「ユディト」の絵からも
クラーナハらしいエロティシズムが感じられますね。



ホロフェルネスの首を持つユディト

≪ホロフェルネスの首を持つユディト≫  ルカス・クラーナハ(父)  1530年頃


今回ウィーン美術史美術館より貸し出された「ホロフェルネスの首を持つユディト」ですが
3年にも及ぶ修復を経て日本にやってきました。

修復の様子は入場してすぐの約8分ほどの映像コーナーにて見ることができます。

5つのパーツからなるこの絵は裏の補強、色の修復を得て
生き生きとした表情に生まれ変わっています。


ルカス・クラナッハ

陶器のようななめらかで美しい肌と、冷たい表情でありながらも
大きく開いた胸元、柔らかな頬の紅さを持ちどこかエロティシズムを
感じさせるクラーナハのユディト。

眉の薄さや紅をさしながらも真一文字に閉じられた唇が
ユディトの醒めた表情と意志の強さを際立たせています。


剣にはホロフェルネスの血がうっすらとついている。

生首が置かれた白い台もきれいに修復されていて
女のエロティシズムと男の生首というアンマッチさを
表現していました。

ユディトの冷めた視線がこの絵を忘れられないものにしています。




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旧約聖書外典 「ユディト記」
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メラリの娘ユディトはマナセと結婚したが、夫を日射病で失って寡婦となった。
彼女は美しく魅力的な女性で多くの財産をもっていたが、
唯一の神に対して強い信仰をもっていたため、人々から尊敬されていた。


アッシリアの王ネブカドネツァルはメディア王との戦いにおいて
自分に協力しなかった諸民族を攻撃するため、
司令官ホロフェルネスを派遣する。

ホロフェルネスは軍勢をひきいてユダヤへやってくると
ベトリアという町を囲んだ。

水源をたたれたため町の指導者オジアは降伏を決意するが、
ベトリアにすんでいたユディトはオジアと民を励まし、神への信頼を訴える。


ユディトはそこである作戦をたてる。


それはユディト自身が着飾ってホロフェルネスのもとに赴くというものだった。

ユディトは神に祈って、ホロフェルネスのもとへ向かう。


エルサレム進軍の道案内を申し出た美しいユディトをホロフェルネスは喜んで迎えた。

ユディトは陣中で出される異邦人の食べ物を決して口にせず、四日待った。

四日目にホロフェルネスは酒宴にユディトを呼び出した。


ホロフェルネスは泥酔し、やがて天幕のうちにユディトは眠るホロフェルネスと二人だけで残された。

ユディトは眠っていたホロフェルネスの短剣をとって彼の首を切り落とした。

ユディトは侍女と共に、首を携えてベトリアの町へ戻り、事の次第を報告した。

やがて、司令官殺害は包囲軍の知るところになり、激しい動揺を引き起こす。

ユダヤ人はこの機会を逃さず、出撃し、敗走するアッシリア軍を打ち破った。


ユディトは105歳でなくなるまで、静かにベトリアの町で一人暮らした。


(Wikipediaより引用)


『ユディト記』は以前読んでとても長い物語だった記憶があるので
大筋がわかるウィキペディアより紹介させていただきました。



クラーナハのユディトは着衣をし、アクセサリーだけでなく
帽子までも着て身なりを整えた状態で生首を持っている。

冷静に敵将ホロフェルネスの首を斬りおとし
仕留めた様子のユディトがこの絵から感じられます。

「ユディト」というとこれらの絵も非常に有名ですね。


ホロフェルネスの首を斬るユディットカラヴァッジョ

≪ホロフェルネスの首を斬るユディト≫ ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1598~99年

カラヴァッジョの描いたユディトは、今まさにこの瞬間
ユディトがホロフェルネスの首を斬りおとそうとしているところ。

および腰で自らの意思というよりは
何者かに「斬ってみなさいよ」と言われ
色香に酔ってしまった哀れな男の首を
男の恐怖や痛み、斬りおとすことによって
直前まで生きていたものが死んでしまう
そんなことにも意識が行ってないユディトが描かれている。

そして、斬られる男のたまったものではないという
苦痛の表情と体の動きが何とも言えない。


ユディトクリムト

≪ユディト≫ グスタフ・クリムト 1901年

こちらは打って変わってエロ満載のクリムトのユディト。

ヌードになったユディトが官能的に表現されている。
ホロフェルネスの首は右下に描かれているだけ。

なんか一戦交えたあとに
エクスタシーの余韻を残したまま
さっきまで交わっていた男の首をかっきり
その陶酔から覚めてなくそんな自分に酔い切った
恍惚の表情のユディトが表現されているようだ。


斬首というと「サロメ」も有名だが
今回「ホロフェルネスの首を持つユディト」の隣には
クラーナハの「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」も
展示されていました。

こちらは以前「ハプスブルク展」でも見たもの。
再び見れるとは、行った甲斐がありました。


さて、話をクラーナハ展に戻して
クラーナハの描くエロという視点で作品をご紹介。



正義の寓意

≪正義の寓意≫  ルカス・クラーナハ(父)  1537年


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≪ヴィーナス≫  ルカス・クラーナハ(父)  1532年


泉のニンフ


≪泉のニンフ≫  ルカス・クラーナハ(父)  1537年以降


「ヴィーナス」でははっきりと見えますが
「正義の寓意」や「泉のニンフ」では
画像ではわかりにくいのですが
みな裸体に陰部のところを隠すように
透明な布をまとっています。

そのスケスケの布の存在が
かえって女性の陰部に視線を活かせている
というような表現を度々本展の作品紹介で用いてました。

私はそれより「正義の寓意」で陰部を
串刺しにしているところが秘部を強調していて
印象に残ってしまいましたね。

ヴィーナスのヴィーナスらしからぬ表情や
S字のややくねった曲線的な表現、
それぞれの裸体の小ぶりな乳房や
滑らかに出ているお腹など共通部分がありながらも
各々人物の視線は違っているのも興味深い。

クラーナハの裸体表現はピカソにも影響を与えたようで
クラーナハの「ヴィーナスとキューピッド」を模倣した
ピカソの作品もいくつか展示がされていました。



また「正義の寓意」については絵画コンペティションの映像が見られ
そこで描かれていた多数の画家の「正義の寓意」をコピーした作品の実物が
後ろの広々とした壁にズラリと並べられていて迫力がありました。

どうみても男に見える「正義の寓意」のモデルもあり
こちらも面白かったです。

絵画とは全く関係ないのですが潜在意識のワークで
活用できるヒントも得ることができました。

こんなところでお金を得るということの大きなヒントになる
事象に出会うとは思っても見ませんでした。



ルクレティア

≪ルクレティア≫  ルカス・クラーナハ(父)  1529年

こちらはクラーナハのルクレティアの作品群の一つ。

ルクレティアの歪んだ表情がなんともいえない。

「エロティシズム」というと男が女に感じる魅力のひとつ
また女が男を惹きつけるための戦略のひとつでもある。

次に紹介する男女の物語(恋愛)ですが
惚れるほれられるということは
決して甘くて人からの羨望を集めるだけではなく
時として愚かさだったり、嘲笑の対象になる場合もあります。


不釣り合いなカップル

≪不釣り合いなカップル≫  ルカス・クラーナハ(父)  1530~40年頃

老人が若い女に指輪をプレゼントする。
明らかに歳の差があるカップル。
男は女の若さと美しさに惚れているものの
女は計算ずくだったりする。


ヘラクレスとオンファレ

≪ヘラクレスとオンファレ≫  ルカス・クラーナハ(父)  1537年

オンファレの魅力に落ちてしまったヘラクレス。
女たちに囲まれて羊毛を紡ぐはめになってしまう。


さて、その他のクラーナハの展示作品をサクッと。

子どもたちを祝福するキリスト

≪子どもたちを祝福するキリスト≫  ルカス・クラーナハ(父または子?)  1540年頃

こちらは珍しい台北、奇美博物館からの貸し出し作品。



マルティン・ルターの肖像


≪マルティン・ルターの肖像≫  ルカス・クラーナハ(父)  1525年

展覧会ではクラーナハの生きた時代の背景なども綴られていました。
当時の宗教についても触れられており、クラーナハはルターなどの
宗教改革でも大きなかかわりを持っていたと書かれていました。


その他版画家としてのクラーナハ作品もあり
国立西洋美術館がクラーナハの版画作品を
結構持っていることを初めて知りました。

版画でもその色彩表現に版画の枠を超えたものもあり
興味深く見させてもらいました。

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こちらは入り口前にある撮影コーナー。
ユディトとホロフェルネスの顔の部分が扉になっていて
自分たちの顔を出して撮影することが出来ます。


カップルでユディトとホロフェルネスになって
撮影してみるのも面白いかも!?


師走ということで本来はもっと気持ち的に準備が整ってから
いいタイミングで落ち着いていきたかった「クラーナハ展」ですが
慌ただしいスケジュールの中でも混雑もなく
かなりじっくりと味わうことが出来たのでとても良かった。

この手の画家の展覧会はとても好きなので
来年以降もぜひぜひやってほしいものだ。


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911:Re: クラナッハ展
dezireさん

こんにちは。
こめんとありがとうございます。

クラナッハのホロフェルネスの首の切断面、良く描けている分グロテスクなんですよね(笑)
だから、ポスターやチラシでは切断面はあえてカットしてましたね。
一般の人から見たら若い女性と生首という組み合わせだけでもぎょっとしちゃいますね。

そうなんです、クラナッハの裸体画は純粋な少女のような面持でありながらも
独特の色気を醸し出しているのが魅力的です。

クラナッハについては取り上げているブログも多くはないのでブログを拝見させていただきます。


910:クラナッハ展
こんにちは、
私も「クラナッハ展」を見てきましたので、画像とレポートを拝見し、詳しい鑑賞レポートを読ませていただき、クラナッハの作品みたときの感動が甦って来ました。こんにちは、クラナッハの『ホロフェルネスの首を持つユディト』顔や衣装の美しさに魅了されましたが、左下の首を切られた生首が妙に絵の中に調和していて不思議な魅力を感じました。ラナッハの裸体画しは非常に美しく顔は清純な少女のようでしたが、薄布などをまとっているのがかえってセクシーで、誘惑されてしまいそうな雰囲気を感じました。

私は展示されていたルーカス・クラナッハの描いた作品を通じて、ルーカス・クラナッハという画家の本質を掘り下げて、ルーカス・クラナッハの全貌を整理し本質を考察してみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。






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