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展覧会レポート昭和のドラマ昔の土曜ワイド劇場懐かし邦画

昭和のテレビドラマ

        

傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三、「暗い穴の底で」 菊村到 (1981年) 

category - 昭和のテレビドラマ
2020/ 01/ 13
                 
毎月楽しみにしている東映チャンネルの「傑作推理劇場」
今回の二作品も、タイトルからそそられるものがあり期待して待っていました。


●傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 放送日: 1981年8月21日
原作: 和久峻三
脚本: 高橋稔
音楽: 渡辺茂樹
監督: 小野田嘉幹
制作: テレビ朝日、東映
出演: フランキー堺、春川ますみ、岡田真澄、
竹井みどり、西沢利明、船戸順ほか



神戸の売れっ子弁護士・鵜飼淳一郎(フランキー堺)のもとに
野島治子(春川ますみ)という買い物帰りの粗末な身なりをした女が依頼に現れる。
一度は断ったが鵜飼の新刊本まで購入している中年女を邪険に扱うわけにもいかず
人の良い鵜飼は治子の依頼を引き受けることにした。


傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三



治子はロシア人・マリノフスキーの屋敷でお手伝いを25年間務めていたが
最近になってマリノフスキーが死亡。
彼は生前、一億円にもおよぶ全財産を治子に残すという遺言書を書いていたらしい。


「一億円の財産」と耳にした鵜飼は思わず生唾を飲み込む。


治子の案内で鵜飼がマリノフスキーの屋敷に行くと
執事のフェルナンデス(岡田真澄)がいた。
彼は亡父と親子二代にわたってマリノフスキーの財産を管理しており
遺産は一億円ではなく二十億円という莫大なものになっている。


傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三



鵜飼はマリノフスキーの部屋を調べたが遺言書はどこからも見つからない。


治子の話ではマリノフスキーの死因は心臓まひでフェルナンデスが発見した。
しかも、亡くなる前夜にフェルナンデスに使い込みの疑惑を持ち
マリノフスキーに釈明しているのを立ち聞きしたという。



鵜飼は使い込みがバレそうになったフェルナンデスが
もともと心臓が弱いマリノフスキーを病死に見せかけて殺したのではないかと疑い始めた。

そこで、マリノフスキーの遺体を解剖したが薬物は検出されない。


傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三



心証を害したフェルナンデスは誣告罪で治子を告訴し泥仕合になってきた。


鵜飼は絵を描くのが趣味だったマリノフスキーの絵のモデル・頭山香織(竹井みどり)に会い
マリノフスキーの死後、フェルナンデスが庭で紙を燃やしていたという情報を得た。


傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三




香織から入手したその燃え残りを証拠に鵜飼は法廷でフェルナンデスを追い詰める。
そして、とうとう全財産を治子に残すという遺言書を燃やしたことを認めた。


鵜飼の活躍により、治子は二十億円にも及ぶ財産を相続する。
相続税を払い一億円を寄付してもかなりの額が治子の手元に残った。


ある日、伊丹空港で本のサイン会を開いていた鵜飼は
きれいに着飾って別人のようになった治子とフェルナンデスに遭遇する。


傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三


裁判では敵同士だったカップルの出現に鵜飼は唖然とした。



治子はマリノフスキーの遺書には全財産を日本に寄付すると書かれていたと打ち明けると
これから世界一周のハネムーンに出発するのだと言い立ち去って行った。
二人は芝居をし見事全財産を手に入れたというわけだった。



傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三


鵜飼は初めから治子が計算づくで自分に近づいてきたことを悟った時
鵜飼のベストセラー本を手にした香織がサインをしてくれと現れた。
彼女の指には高価なダイヤの指輪がまばゆい輝きを放っていた。


香織も二人の協力者だとわかった鵜飼はみすぼらしい身なりで登場した治子に
まんまと一杯食わされた悔しさを通り越して自虐的な笑いがこみ上げてきた。



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法廷のシーンで、原作者で弁護士でもある和久峻三氏が裁判長として出演している。

傑作推理劇場 「異人館の遺言書」 和久峻三


意外とセリフも多く堅い演技ながらもフランキー堺らと絡んでいた。


同氏の原作「赤かぶ検事シリーズ」では夫婦役だった
フランキー堺と春川ますみが弁護士と依頼人として登場。
赤かぶでは本物の夫婦みたいで絶妙なキャスティングでしたね。

夫婦は似てくるといいますが、この二人見た目のふくよかさもあり
似合いの夫婦でした。
それゆえ、今回パートナーが岡田真澄というのは似合わない組み合わせ。


空港で春川ますみが岡田真澄を「ダーリン」なんて呼んでいたのですが
「はぁ?」って感じでした。


また今回その春川ますみに一杯食わされてしまうフランキー堺の役どころも笑える。

最後にどんでん返しがあるのだろうなと予測しながら見ていましたが
それでも楽しめるドラマでした。




●傑作推理劇場 「暗い穴の底で」  
放送日: 1981年8月12日
原作: 菊村到
脚本: 長坂秀佳
音楽: 菊池俊輔
監督: 天野利彦
制作: テレビ朝日、東映
出演: 近藤正臣、山口果林、赤座美代子、谷村昌彦、井上昭文、
天田俊明、根岸明美、内田稔、高原駿雄ほか



エリートコースを歩む会社員・宇佐美(近藤正臣)は子供の頃から
極度の閉所恐怖症に悩まされていてエレベーターに乗るのすらままならない。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到




長い距離でも階段を使用する宇佐美はバイタリティ溢れる男と勘違いされているが
いつまでもごまかしきれるものではない。


そんな宇佐美は愛人関係にある神経内科の女医(山口果林)のクリニックで
診療を受け始めた折、患者が心を開いてくれないと克服出来ないと言われる。


宇佐美はこれまで誰にも言えなかった二十年前のある出来事を語りだした。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到


小学校六年生だった宇佐美は夏休みに川口に住む叔母夫婦の家へ遊びに行っていた。
近くには八歳とは思えない色気を持つ松永マリ子という女の子がいて
古井戸の中で二人きりになった宇佐美は思わず尿意をもよおしたと口実をつけて
井戸の中から出てしまった。


そこで車の中で黒川(天田俊明)が女を抱いているのを目撃する。
どぎまぎした宇佐美は思わずマリ子の自宅へと飛び込んでいくと
マリ子の母(根岸明美)が津山(井上昭文)を連れ込み情事にふけっていた。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到


物音を立てたために宇佐美がのぞき見していたのが母と津山にバレてしまう。


慌てた宇佐美はマリ子のことも忘れてそのまま叔母の家へ帰ったため
結果的にマリ子を古井戸に置き去りにしてしまった。
翌日、マリ子のことを思い出した宇佐美が古井戸へ行くと
既に土が盛られて埋められていた。


マリ子の母の情事を目撃したバツの悪さから
彼女の家に生存を確かめに行くことも出来ない。
先月、行ったときにはもうマリ子の自宅は空き地になっていた。
宇佐美はマリ子を井戸に置き去りにしてしまったというトラウマから
極度の閉所恐怖症を煩うようになったのだ。




翌朝、宇佐美は例の古井戸から白骨死体が見つかったという新聞記事を読んだ。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到



恐れていたことが現実となったと怯える宇佐美を
死体がマリ子かどうか確かめに行こうと女医が連れ出す。


宇佐美はそこでマリ子(赤座美代子)と再会した。


マリ子は井戸のそばにいた黒川に助けを求めて救出されたのだという。
そのあと家へ帰ったマリ子は母の情事の現場に乗り込んできた
父(谷村昌彦)と津山の刃傷沙汰を目撃した。

父はそれっきり家を出て、マリ子の母は津山と再婚した。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到


宇佐美はホッとしたのも束の間、白骨死体の存在が気になった。



津山がマリ子の父を殺して井戸に埋めたという疑惑が出てくる。
ところが、マリ子の父は別の女性と所帯を持っていて元気に暮らしていた。
この時、宇佐美は父からマリ子が黒川と結婚していることを知らされ驚く。


マリ子と会った宇佐美は体で誘惑しようとするマリ子の要求を断ると
黒川に会わせてほしいといい彼女の自宅に行った。


宇佐美は二十年前のあの日、妻を殺した黒川が死体を井戸に棄てるために
来ていたことを見破った。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到



その時、偶然宇佐美が現れたために黒川は妻の死体を抱き寄せ
カーセックスにみせかけて宇佐美を睨みつけて追いやる。


その後、井戸の中にいたマリ子を助け上げ夜になってから妻の死体を遺棄し
土を持って埋めてしまったのだ。


宇佐美の推理を聞いたマリ子は頭部を殴りつけて宇佐美を気絶させると
黒川と二人で車のトランクに押し込み走り出した。
意識を取り戻した宇佐美は暗くて狭いトランクの中で苦しみ
気が付いた時には包帯でぐるぐる巻きの状態で病院のベッドの上にいた。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到


傍らには刑事(高原駿雄)と女医がいる。


宇佐美は酔っぱらいの運転する車が黒川の車にぶつかったために
殺されずに済んだことを知らされた。


マリ子は閉所恐怖症の宇佐美が意識を取り戻しトランクの中で苦しむのを計算の上で
その恐怖を味わわせた後で殺そうと企んでいたというのだ。
彼女の二十年間に渡る怨念のすさまじさを感じゾッとした。




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劇中、重度の閉所恐怖症に悩まされる主人公の心理を伝える映像がいい。


狭い空間のエレベーターの中で感じる息苦しさと不安を様々な角度からあぶりだしている。


そのエレベーターが下がっていくとき、主人公はエレベーターの中ではなく
いつの間にか「かご」の上に乗っている。


傑作推理劇場 「暗い穴の底で」 菊村到


それはまるで井戸の中にいるようだ。
二十年前に暗い古井戸に置き去りにしてしまった少女の恐怖と絶望を味わわされることになる。


菊池俊輔の音楽も主人公の精神面の不安定さをうまく表現いて
映像と音楽で画面が歪むような不安を覚える。


「暗い穴の底で」というタイトルもいいですよね。


さて、来月は「死ぬより辛い」をやりますね。
これって確かテレ朝チャンネルで不定期にやっている「EXまにあっくす」でもリクエストがあったような。


これまた面白そうで期待して待とうと思います。



            
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傑作推理劇場 「百円硬貨」 松本清張、「雪の蛍」 森村誠一 (1981年)

category - 昭和のテレビドラマ
2019/ 12/ 09
                 
今月もまた「傑作推理劇場」から二作品が放送されましたが
原作が松本清張、森村誠一とあっていずれも楽しめました。




●傑作推理劇場 「百円硬貨」  
放送日: 1981年8月10日
原作: 松本清張  『百円硬貨』  隠花の飾り (新潮文庫) 収録
脚本: 橋本綾
音楽: 菊池俊輔
監督: 野田幸男
制作: テレビ朝日、東映
出演: いしだあゆみ、川地民雄、上村香子、
成田次穂、相馬剛三ほか




松本清張 百円硬貨



雨が降る東京駅、大川伴子(いしだあゆみ)は
公衆電話から長距離電話を掛けていた。


彼女は電話の相手に

「大阪経由で翌朝そっちに到着する。
何もかも捨てたから、もうあなたしか頼るものがない。
知らない土地でひとりで待つのは嫌なの。」

と泣きながら訴えていた。
その様子から深刻な状況に身を置いているのが容易にわかる。



伴子は電話を切ると列車に乗り込み女の一人旅とは思えない大きな二つのトランクを
荷台に置くと山陰の田舎町に着く十三時間後に思いを馳せた。




松本清張 百円硬貨





四年前、二十八歳だった伴子は明和相互銀行江東支店の出納係で
勤続十年となり毎日家と職場を往復する変わり映えしない人生に嫌気がさしていた。


そんなある日、バスに乗ろうと走りながら財布を開けた伴子はうっかり百円玉を落としてしまう。
しかし、バスに乗りそびれない方に意識が向いて転がった百円玉を拾い上げることが出来なかった。
バスに乗り込んだ伴子は、置き去りにされた百円玉の存在が妙に気になって仕方なかった…。


自分を変えようと免許を取り以前から気になっていた赤い車を購入することを決意。
店へ駆け込むとそこにはセールスマンの細川龍二(川地民夫)がいた。
それがキッカケとなり伴子は細川と親しくなり、肉体関係を結ぶまでにさほど時間はかからなかった。
細川は伴子より四つ上の三十二歳ですでに妻子がある。




松本清張 百円硬貨




その二年後、二人の関係がバレて伴子は細川の妻(上村香子)と二人きりで会った。
細川の浮気は初めてではなく、いつも最後は妻のもとに戻ってきたという。
伴子はいくら金を渡せば別れてくれるのかと言われた上に、
泥棒猫呼ばわりされ自尊心を傷つけられた。



妻は娘が結婚するまでは離婚に応じるつもりはない。




それから二年、伴子は三十二歳になっていた。
妻から突然呼び出された伴子は、
三千万円の慰謝料を条件に離婚すると伝えられた。



松本清張 百円硬貨





細川は妻の実家は裕福で金が目当てではないといい、
二人が三千万円もの大金を用意するとは出来ないと知りながら
嫌がらせをしているだけだという。
しかし、このチャンスを逃したくない伴子は金は自分が作ると宣言してしまった。



ある土曜日、半ドンで行員たちは次々と退社し伴子一人となった。
合鍵で金庫を開けた伴子は三千万円をトランクに詰めると東京駅へ向かう。
公衆電話から愛する細川に電話した後に列車に乗り込んだ-。




翌朝、予定通りに国鉄の山金駅に着いた伴子は細川の迎えを待つ。
しかし、二十分待っても細川は迎えに来ない。
伴子は電話を掛けようとボックスに入るが小銭がないことに気がつく。




松本清張 百円硬貨




一万円札を両替するために切符を買おうとするが釣銭の用意がないという。
今日は日曜日であたりの店が全て休みと知った伴子は
見渡す限り山ばかりの田舎の駅で不安に襲われ泣きそうになった。


この時、「主人は浮気してもいつも私の元に帰って来た」という
妻の顔が脳裏に浮かび裏切られたのではないかという恐怖心が襲ってくる。
すでに、約束の時間から一時間以上が経過していた…。



精神に異常をきたした伴子はある行動をとると電話ボックスに向かう。



すると、ようやく細川が到着した。
ホッとした伴子が駆け寄ろうとしたところ、窓口で切符を買おうとしていた女が
「泥棒!」と追いかけてくる。


松本清張 百円硬貨




お金を崩すことだけに神経がいっていた伴子は彼女が切符代として出した金から
無意識に百円を盗んでいたのだ。
三千万円もの大金を手にしていながら、たった百円のために
伴子が掴もうとした幸せはするりと手から落ちていった。


この時、バス乗り場で財布から転げ落ちていった百円玉が脳裏に浮かんだ。



「あの時から、私の運命はこうなると決まっていたのだ…。」





隠花の飾り (新潮文庫)



冒頭から何度も映る百円玉。

主人公が公衆電話に投入する百円、バス乗り場で手からこぼれ落ち通りを転がって行く百円、
切符を買う時の百円。


なかでも発車するバスに乗り遅れまいと小走りしながら財布を取り出し
小銭を取り出そうとして百円玉を落としてしまう場面。


百円玉は勢いよく転がって行き、あっという間に喫茶店の前に立てかけてある看板までいくと
ようやっと障害物にあたることによって動きを止める。
主人公は勤続十年のベテラン行員で、つつましやかな一人暮らしを営みながらも
自動車免許を取得する金も自動車を買う金も持っている。


だが、この時バスに乗ることを選択し、百円を見捨てたという意識をしっかり持っていた。
それが、人生を賭けた最後の場面で大金を手にしながらも百円玉を手に入れたいばかりに
人の金を盗んでしまうことから全てがご破算になってしまうというオチ。


松本清張 百円硬貨



土壇場で100円に泣かされ彼女のプランが崩れることを暗示している表現がお見事!


また神経の細そうな主人公が山に囲まれた小さな駅で男の迎えを待つが時計の針が進むだけで男は現れない。
妻が放った「いつも最後に夫は自分のもとへ帰って来た」という言葉が脳裏によみがえり
裏切られたのではないかという不安に駆られるシーン。


松本清張 百円硬貨



その不安をあおるように周辺の山や畑、呑気に伸びをする駐在、罵倒する妻の姿などが
次々にフラッシュバックしてくる。
この主人公が味わった不安と孤独と絶望感を視聴者も同じように味わうことになるという演出がいい。




「百円硬貨」というタイトルがどんな意味を持ってつけられたのが気になっていた私にとって
繊細な伏線と描き方によっていろいろと考えさせられるドラマで興味深かったです。






●傑作推理劇場 「雪の蛍」  
放送日: 1981年8月11日
原作: 森村誠一  雪の蛍 (広済堂文庫)
脚本: 服部桂
音楽: 真鍋理一郎
監督: 浦山桐郎
制作: テレビ朝日、東映
出演: 大空眞弓、二宮さよ子、河原崎長一郎、
鹿沼えり、浜村純、小鹿番。三戸部スエ、高木均ほか




森村誠一 雪の蛍





泉田栄子(大空眞弓)の夫・耀造(河原崎長一郎)は
山形で「北瓢亭」という大きな郷土料理店を経営している。



社長夫人の栄子は不自由のない暮らしをしているものの
子どもが産めない体であることが悩みだった。
それに加えて数年前より栄子を悩ましているのは
耀造に女がいるのではという疑いだった。



森村誠一 雪の蛍




いつの頃からか、耀造は服に雪蛍を付けたまま帰宅するようになった。
雪蛍が生息する仙台に女がいるとわかったときから
栄子の心の奥には激しい憎悪が生まれた。



その耀造が仙台出張から戻ってきた。
栄子は何も気づかないふりをしてかいがいしく耀造の身の回りの世話をする。
仙台の支店は本店を凌ぐほどの成績を上げているらしい。


森村誠一 雪の蛍




その矢先、入浴中の耀造が意識を失って倒れているのが発見。
一時、意識を取り戻した耀造は栄子に最後の力を振り絞って「えいこ」と呟いた。
夫が愛しているのは自分だと確かめられた栄子は
「もうあの女の事はいいのよ。」とこれまでのことを全て水に流し
耀造の自分に対する愛情の深さに涙が止まらなかった。





森村誠一 雪の蛍




ほどなく、耀造はそのまま息を引き取った…。



栄子は耀造の跡を継ぎ社長となったことを従業員一同の前で発表。
そして、仙台にいる耀造の愛人の家へ向かった。



この時、栄子は愛人の名前が根岸英子(鹿沼えり)だと知り
耀造が死ぬ間際に残した「えいこ」が自分ではなく
英子を指していたのではないかと考え愕然とした。


栄子は手切れ金として二千万円を渡そうとするが英子は拒否する。
耀造はお腹の子を自分の子どもと認める認知書を書き
英子が耀造の財産の半分を相続するつもりであること知った。


ホステス上がりで下品だが若さだけはあり
妊娠する能力があった映子に対して怒りが込み上げてきた。




森村誠一 雪の蛍




栄子は出前を頼むために階下へ降りようとする英子を衝動的に殴りつけてしまう。
その衝動で足を踏み外した英子は階段を転げ落ちてしまった。



予期せぬ出来事に動揺した栄子はまだうっすら意識のある英子の口を押えて殺してしまう。
栄子は自分の指紋を拭き取り、耀造のサインがある認知書を盗みだした。


やがて、栄子のもとに二人の刑事が訪ねてきた。


妊娠した英子が死に、相手の男が耀造であるかもしれないと確かめに来たのだ。
どうやら刑事は英子の死を事故と見ているらしいとわかり
栄子はそつなく刑事に応対し何事もないまま月日が流れた。



森村誠一 雪の蛍




ところが、栄子がホッとしたのも束の間、店の経理を見ていた
中山計理事務所の所員・島村(二宮さよ子)が栄子が
英子を事故死に見せかけて殺したのを知り脅してきた。



驚いたことに、島村は英子よりも前から耀造と愛人関係にあり
五年間の間に二度も中絶していたことを告白する。
栄子はその間、何食わぬ顔で泉田邸へ出入りをしていた島村の
厚かましさに憎しみが湧いてきた。



島村は英子が妊娠したことを知り、自分との扱いの違いに
耀造に怒りをぶつけていた。
そして、耀造の死後に三度目の妊娠がわかり
英子を殺すつもりであの日、仙台へ行っていたのだという。



森村誠一 雪の蛍



そこで、栄子の姿を目撃し状況から栄子が英子を殺したとわかったらしい。
島村が栄子の犯行を警察に言わない代わりに自分にお腹の子が
耀造の子どもだと認めさせようとしていると察した。



子どもの産めない栄子がそれを認めるという事は
妻の座を降りるという事を意味している。

栄子は「どんな状況になっても絶対に認めない!」と言い島村を殺そうと首を絞めた。



島村は「人殺し!」と叫び、それを聞いた庭師(浜村純)が
庭からゴルフボールを投げてガラスを割った。
その音に驚いた栄子はようやく島村の首から手を離し脱力するしかなかった。




森村誠一 雪の蛍





冷静になった栄子はお腹の子は耀造の子どもと認めないと突き放すと
警察に本当の事を言ってもいいと電話機を島村の前に置く。
ダイヤルを回した島村は受話器の向こうの声の主に
栄子の犯行を告発することが出来ないまま受話器を切った。








それからしばらくして、相変わらず大繁盛する「北瓢亭」で
栄子は馴染みの客たちの席を飛び回っていた。
島村はなんと耀造の子どもを身ごもったまま「北瓢亭」で働いていた。
栄子は穏やかな表情で島村のお腹を気遣っているではないか。



そんなある日、英子が死んだ時に来た二人の刑事が店を訪れた。
老年の刑事は、あれから新しい動きが出てきたことを栄子に告げる。
その容疑者とは島村だった。


それを聞いた栄子は微妙な表情を見せる…。



森村誠一 雪の蛍





島村を尾行した刑事たちは彼女が産婦人科に入って行くのを確認した。
その頃、栄子は耀造の遺影の前で結婚指輪を外す。




雪の蛍 (広済堂文庫)




運よく事故死で済みそうだった愛人の死を
あろうことか自分の犯行と知っているもう一人の愛人に
警察が容疑をかけ始めてきた。



さて、その後の展開はどうだったのでしょう?


ラストまでのストーリーは視聴者に委ねられ
結末まで描かれないままドラマは幕を閉じた。



意味深なのはラストの部分だけではなく
その前の自分が殺人犯だと愛人が知っていても
頑として子供を夫の子どもと認めることを拒否し
電話機を目の前に置いて愛人が110番通報するのも容認していた妻。


結局、愛人はダイヤルを回したものの妻を警察に突き出さなかった。


森村誠一 雪の蛍




その愛人が、妻が経営する店に入り込んでいる。
直後にどんな取引で終わったのかも謎だ。


最後に妻は遺影の前で指輪を外すので
愛人の子供を認めて妻の座を降りたということなのだろう。


河原崎長一郎が鹿沼えりの乳房を弄ぶシーンに
昭和のドラマのおおらかさを感じましたね。






                         
                                  
        

傑作推理劇場 「専属殺人事件」 和久峻三、「消えた男」 土屋隆夫 『加えて、消した』 (1980年)

category - 昭和のテレビドラマ
2019/ 11/ 04
                 
傑作推理劇場の「専属殺人事件」と「消えた男」が放送されました。




●傑作推理劇場 「専属殺人事件」  
放送日: 1980年7月24日
原作: 和久峻三  『専属殺人事件』  日本傑作推理12選 (2) (光文社文庫) 収録
脚本: 本田英郎
音楽: 桑原研郎
監督: 千野皓司
制作: テレビ朝日、東映
出演: 辰巳柳太郎、浅茅陽子、横内正、片桐夕子、
浜村純、菅井きん、風見章子、伊沢一郎ほか



若い女弁護士(浅茅陽子)は舅を殺したサトミ(片桐夕子)の弁護を
老齢の弁護士・菅井良介(辰巳柳太郎)と引き受けることになった。



傑作推理劇場 「専属殺人事件」




京都に住むサトミは夫のマサオが金沢へ単身赴任中で
生まれたばかりの娘と舅のヨシタロウ(浜村純)、
姑(菅井きん)の四人で留守宅を守っていた。


毎月マサオから十万円の仕送りがあるが
ギャンブル好きのヨシタロウが独り占めしていた。
姑もパチンコ通いしていてアテにはならず
サトミが飲み屋で働いて一家の生計を立てていた。


公判が始まると検事(横内正)は身内を殺したとして
単純殺人よりも刑が重い専属殺人で事件を扱おうとする。
家計を支えるために働きに出ているサトミに対して
姑はなぜか敵意をむき出しにして激しく憎んでいた。




傑作推理劇場 「専属殺人事件」




菅井らはサトミが職場にも金の無心をしにくるヨシタロウを
殺さざるを得なかったという事件の背景を明るみにするために
証拠集めに奔走していた。




そんなある日、ヨシタロウと同年代の菅原は殺人の原因は
金ではなく性的なものではないかと疑いはじめる。



サトミの家は二間続きの粗末なもので、部屋を仕切る襖には
覗き穴が開いていた。
菅原は姑からヨシタロウが未だに勢力旺盛なことを聞き出し
ヨシタロウがサトミを犯したと確信する。


サトミは暴行されたという恥を世間に知られるのを恐れて
それを否定し続けた。
サトミと同じ年頃の女弁護士は彼女の胸の内を思うと
暴くことへのためらいが生じるが罪を軽くするためには
心を鬼にしなくてはいけないと覚悟する。


傑作推理劇場 「専属殺人事件」



菅原から子供のためにもと説得されて
サトミはヨシタロウが赤ん坊にナイフを突きつけて脅してきたため
体を提供したことを告白した。


この関係はこれまでも度々あったもので孫を人質にして
肉体関係を迫るヨシタロウの異常性が明らかとなる。



こうして菅原たちはサトミの執行猶予を勝ち取ることが出来た。






日本傑作推理12選 (2) (光文社文庫)



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●傑作推理劇場 「消えた男」  
放送日: 1980年7月29日
原作: 土屋隆夫  『加えて、消した』  「日本傑作推理12選」 エラリー・クイーン編」収録
脚本: 服部桂
音楽: 東京BGM
監督: 堀川弘通
制作: テレビ朝日、東映
出演: 緒形拳、秋吉久美子、中条静夫、高林由紀子、
北村総一朗、沢かをり、ほか



傑作推理劇場 「消えた男」


東京の大学に勤めている秋津俊輔(緒形拳)が
出張先の京都から帰宅してみると妻の美佐江(高林由紀子)が
見知らぬ男と心中していた。
美佐江は死んでいるが、まだ男は息があった…。


しばらくして、秋津から通報を受け刑事(中条静夫)と
美佐江の妹・佳代(秋吉久美子)が駆けつけた。


秋津は帰宅した時まだ美佐江の体は温かかったと言い
自殺したとすぐには信じられず30分程してから中野医院に電話をしたと証言。
「結局こうするよりほかに方法はありませんでした…」という
美佐江が残した遺書も発見される。



傑作推理劇場 「消えた男」


刑事は中野医院に連絡があった時間と秋津の証言に時間差があるのを
尋ねると秋津はしどろもどろになりながらも辻褄をあわせようとする。


美佐江は十年目にやっと出来た子供を流産してしまい秋津から責められていたこと
病院から睡眠薬を貰っていたことが決め手となり刑事も自殺とみて手を引いた。
しかし、佳代は美佐江の遺書を見て不信感を持ちはじめる。


その後、佳代は秋津の身の回りの世話をするようになるが
死ぬ前の日に美佐江に電話をしたときに誰かが風呂場を使っている気配を感じ
美佐江の恋人だった的場仁一(北村総一朗)が来ていたと直感。
それとなく秋津に探りを入れ始めてきた。


その頃、美佐江の男関係を洗っていた刑事も的場の存在を知り
行方不明になっていることから美佐江の死と繋がりがあるのではないかと捜査をしていた。


傑作推理劇場 「消えた男」




刑事から的場のことを尋ねられた秋津は帰宅すると佳代に
自分に近づいてきた本当の狙いを問い詰める。



佳代は遺書の「佳代さん」という呼び方に違和感を感じていた。
美佐江は手紙でさえも佳代の事を「佳代ちゃん」と呼んでいる。
遺書には「仁一さん」と書かれていて男の存在を消すために
「佳代さん」と細工したのだと考えた。


その通り、遺書は複数枚あり的場との関係が綴られ
流産した子供の父親も的場であることを告白していた。
そして最後のページに「結局こうするよりほかに方法がありませんでした…」と
締めくくられていたのだ。


秋津はあの夜、息があった的場を殺して死体を庭に埋めていた。


傑作推理劇場 「消えた男」



しかし、佳代はそれを暴くつもりはない。
なぜなら、秋津を愛していたからだ。


佳代が口を噤んでいる限り秋津の犯行は明るみにならないはずだったが
野良犬が埋められていた場所を掘り返し的場の靴を加えていった。
捜査を続ける刑事のそばをその犬が通り過ぎようとする…。






日本傑作推理12選 (1977年) (カッパ・ブックス)




先月放送の2作に比べるとインパクトが弱いものの
短編小説を1時間の枠でドラマ化というのは2時間枠に比べて
回りくどさが省けるのでいいですね。


専属殺人事件はドラマの概要欄を見て嫁が舅を殺した動機が分かってしまい
面白みにやや欠けるところがありましたが辰巳柳太郎のおとぼけ老刑事がいい味を出している。


事件現場となった自宅も今では見なくなった昭和のボロ屋で雰囲気がある。


もうひとつの「消えた男」は原作のタイトルが「加えて、消した」ですが
タイトルって大事ですね。
「消えた男」と変えただけで見る前から期待度があがる。



「加えて、消した」とは”仁一”に線を何本か書き足し”佳代”にすることで
遺書の文章はそのままなのに内容はがらりと変わってしまう。
つまり数本の線を加えて、自殺の真相を消してしまったという意味。



原作ではドラマと違って秋津が帰宅した時は美佐江が一人で死んでいて
男の存在はなくただの自殺として始まっている。
美佐江にかつて仁一という恋人がいたことを知っていた佳代が
遺書の不自然さに疑惑を持ち心中事件であると暴くというもので
こちらの見せ方の方がよかったかなと言う印象を持った。



さて、来月は「百円硬貨」と「雪の蛍」が放送予定となっている。
東映制作以外でもまた見たい作品が多いのでどこかでやってくれないかなぁ。


確か、テレ朝チャンネルの「EXまにあっくす」で
「死ぬより辛い」がリクエストにあがっていたような記憶があるがどうなったんだろ?
是非、放送してほしい。





                         
                                  
        

傑作推理劇場 「殺意」 (1980年) 官能的な音楽に衝撃的なラストが秀逸

category - 昭和のテレビドラマ
2019/ 10/ 10
                 
CS各局が似たようなサスペンスを垂れ流す中で
東映チャンネルはいつも期待に応えてくれるラインナップで私を魅了する。


今月はかつてテレビ朝日で放送された「傑作推理劇場」から2作品が登場。
(傑作推理劇場やエラリー・クイーンについては『魔少年』の記事に追記)



今回は高木彬光の「殺意」



不器用だけど真面目な妻を持つ画家はようやく売れ始め
大きな一軒家に住みアトリエを構えるまでになった。
そんな矢先、妻から幼なじみで男好きする妖艶な女を
絵のモデルとして紹介される。


女の誘惑にふと魔が差してのめり込んでしまったことから
殺人事件へと発展…。


音楽を担当した菅野光亮のけだるさと甘さを感じる官能的メロディーは
エロティックで心地よく話しの筋に合っている。
それでいて、どこかせつなくて哀しい。


一度耳にしたら忘れられない印象的な曲調で
番組宣伝でバックに流れた時から一発で気に入ってしまった。


ということで雑感含め長いコメントは文末で。



●傑作推理劇場 「殺意」  
放送日: 1980年7月23日
原作: 高木彬光  殺意 (角川文庫 緑 338-54)
脚本: 播磨幸児
音楽: 菅野光亮
監督: 野田幸男
制作: テレビ朝日、東映
出演: 坂口良子、佐分利信、河原崎建三、宮井えりな、
三宅邦子、細川俊夫、相馬剛三ほか



傑作推理劇場 「殺意」




画家の今野(河原崎建三)の妻・純子(坂口良子)が
友人の加藤慶子(宮井えりな)を殺したと自首してきた。



傑作推理劇場 「殺意」




純子の紹介で慶子は今野のモデルをつとめるようになり
いつしか二人は男女の関係になっていった。
それに気づいた純子が別れて欲しいと部屋を訪ねたところ
ひどい言葉を浴びせられ思わずカッとなって刺し殺してしまったと供述。



凶器は裁縫用の目打ちだったが殺した時の状況もよく覚えてない位に
錯乱している精神状態にあった。


今野は向かいに住む老年の弁護士・沼田(佐分利信)に
弁護を依頼し問われるままにこれまでの経緯を語った。



傑作推理劇場 「殺意」




慶子は離婚したばかりで暇を持て余しており今野のアトリエでモデルをしているうちに
その肉体を惜しげもなく今野にぶつけてきた。
持て余していたのは暇な時間だけではなく肉体もだったのだろう。


芸術家の今野にとって平凡な純子とは違い、投げやりで気だるい雰囲気を持つ慶子は
非日常そのもので創作意欲を掻き立てられ妖しい世界にすっかり魅せられてしまった。



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しかし、情事の現場を純子に見られてしまい以後は慶子の部屋で
純子の目を盗んで関係を続けるようになった。
火遊びをやめるよう忠告した純子はその後も関係が継続していることを知って悩んでいた。


今野は全て自分が蒔いた種で責任は自分にあると深く悔いている。
今野夫婦の土地は二十年前自分の子どもを宿した妹を兄が殺したという
訳アリ物件だった。
それを承知で沼田から安く売ってもらったが、今野はその祟りではないかと
怯えている様子だ。



純子が刑期を終えても今野が彼女をこれまで通り受け入れると確かめたうえで
沼田は弁護を引き受けることにした。



傑作推理劇場 「殺意」



それから沼田は純子の周辺を自分の足で調べて回った。
血に染まった服を着たまま裸足で路上を彷徨う純子を保護した
発出所の警官も純子に同情していた。



沼田はこれまでのことから純子の犯行は誤殺であること
初犯で自首をして罪を深く悔いていることなどから執行猶予を勝ち取るつもりだと
今野に報告する。


公判で沼田は純子に犯行に至るまでの経緯を明らかにさせた。



純子は幼なじみの慶子との友情を取り戻すことで今野と別れてくれるだろうと信じて
カトレアの花を手土産に彼女の部屋を訪ねた。
ところが、慶子は今野が全てにソツがない純子を面白くない女だと言っていたといい
二人の恋愛に第三者の純子が口を挟むなと強気に出てきた。


傑作推理劇場 「殺意」



さらに今野が家庭的ではない慶子に自分の服の繕いまでさせているという。
女としての侮辱を受け生理日で精神的に不安定な状態だった純子は
とっさにテーブルに置いてあった裁縫箱から目打ちを取り発作的に刺してしまった。



沼田の予告通り、純子は執行猶予の判決を受けた。



傑作推理劇場 「殺意」




沼田の妻(三宅邦子)は沼田が純子を無罪同然にしたことで
近所でも良い噂が流れていると嬉しそうに話す。





判決から一か月、今野は負い目を感じる純子を気遣って優しく接している。


ある日、今野が慶子をモデルにして描いた絵を見ると
心臓がある左の乳房に無数の刺し傷があるのを発見し凍りついた。



傑作推理劇場 「殺意」



その様子を洗濯物を取り込んだ純子がひっそりと見ていた。
今野は絵を処分しようかと思っていると言いその場を取り繕った。


一度わいた疑念は今野の中で次第に肥大していった。


その晩、今野はそっとベッドを抜け出すとアトリエへ行き再び絵を確かめる。
暗闇に光る無数の穴は純子の激しい憎しみそのものだった。
今野が純子の裁縫箱を調べると目打ちがなくなっている。


その時、今野の異変に感づいた純子がアトリエへ姿を現した。



傑作推理劇場 「殺意」



純子は自分の目打ちは先が折れたので捨てたというが
慶子は目打ちを持つほど裁縫が得意ではなく裁縫箱にも目打ちはなかった。
初めから慶子を殺すつもりで自分の目打ちを持ち出し
それで慶子を殺したと自分の推理をぶちまけた。


完全犯罪を企ててもそれは無理な話だ。
だったら執行猶予を取ろうと考えを変え、
友人に夫を寝取られたかわいそうな妻を演じて世間の同情を集め
わざわざ生理日を選んで発作的な犯行に見せかけたのだと暴く。


今野の激しい責めに純子はついに殺意があったことを認めた。



傑作推理劇場 「殺意」



子どもの時から慶子は人の一番大切なものを奪ってきた。
ようやっと掴んだ夫婦生活をも壊そうとする彼女が憎かった。


今野は純子が初めから殺意があったのかなかったのか今ではどうでもいい事で
どちらにしても人を殺した純子に恐ろしさを感じ別れる決心をしたと本音を打ち明ける。


純子は今野を失いたくないというと、覚悟を決めナイフを取り出した…。


傑作推理劇場 「殺意」




翌朝、沼田は今野の訪問を受けた。


今野は純子が殺意をもって慶子を殺したと白状したと告げた。
だから、自分も沼田もみんな純子に騙されていたのだと興奮がおさまらない。


そして、自分もカッとなって純子を殺してしまったと告白すると
純子と同じく誤殺であり自分の弁護を引き受けて欲しいと土下座して頼んだ。


沼田が凶器の目打ちについて質問すると、あれは純子が殺すつもりで
自分の目打ちを持ち出したと答えた。


それを聞いた沼田は「なぜ、嘘をつく」と今野を一喝する。


沼田は裁判中は明らかにされなかったが警察は凶器の目打ちは
殺される数日前に慶子が購入したと調べあげていたと言い返した。



傑作推理劇場 「殺意」



さらに沼田は今野が人を殺めた純子から離れたがっていたことも見抜いていた。
そのために執行猶予を狙った誤殺を考えたが初めから殺意がある謀殺で
せいぜい狙えるのは情状酌量で罪は軽くないが
それでも良ければ弁護を引き受けると言い渡した。


目論見が大きく外れ気がおかしくなった今野は
純子の死体のそばで狂ったように叫び続けた。


沼田は廊下に出ると受話器を取り上げて警察へ通報するためダイヤルを回した。





殺意 (角川文庫 緑 338-54)



ラストがキョーレツ!!
身勝手な夫を演じた河原崎建三がどん底に突き落とされるのが見もの。



はじめこそ、自分の浮気のせいで妻が悩み衝動的に友人を殺してしまい
自責の念から妻の刑を軽くしようとしたり執行猶予になった妻を受け入れる
優しい夫を演じていたが、やがて殺人を犯した妻と同居していることに耐えられなくなってくる。


そんな時、計画的な犯行とわかりそれに便乗するかのように別れを宣言。
ナイフを持ち出した妻を殺害するのだが、自分の場合は誤殺が認められず
実刑を喰らう可能性が高いと知り叫び狂う。


この人にイイ人は似合わない。
悪党なんだけど小悪党で最後にやられちゃうというのがピッタリな人。
佐分利信が河原崎建三を平手打ちするのもウケる。



気まぐれといたずらな気持ちから友人の夫を誘惑する宮井えりなとともに
ナイスなキャスティングです。


また妻が以前から殺意を持っていたと知るシーン。
それに気づいた夫を雷雨に打たれながら妻がジーっと見る場面は
すごく怖かった。
その妻がかわいらしく可憐な坂口良子だっただけになおさら。


傑作推理劇場 「殺意」



疑惑を抱いた夫に責め立てられついに殺意を認めるところもコワイ。
ヌードの絵の心臓部分に開いた無数の穴がキラリと光る演出も見事。


傑作推理劇場 「殺意」



さて、冒頭に書いた東映チャンネルについてですが
時間の関係上、土曜ワイドメインで書いてますが
これまで放送された火曜サスペンス劇場の作品も見ていました。
(もちろんそれ以外の1時間枠のやつも)


これまでのラインナップを振り返って、東映チャンネルは他局と違い
80年代の古めのサスペンスにある一定層のコアなファンがついているってことを
バッチリ把握している感じが伺えます。


毎度、「そうきたかーっ!」と唸らされる作品がリストアップされてますよね。


ちょっと前は、チャンネル銀河や日本映画専門チャンネルも他でやらない
単発ものもやってくれたんだけど気がついたらいつの間にか無難な線に落ち着いている。


かなーり前はファミリー劇場、ホームドラマチャンネル、AXNになるまえのミステリーチャンネルが
頑張ってくれましたが最近はサッパリ。


まだAXNミステリーは見たかったのをやってくれるのでちょいとマシかな。



こうしたブログを書いていると結構そのあたりのドラマのファンが多いんだなと実感させられる。
だいたい人気記事は決まっていますが、それ以外のものもコンスタントにアクセスがあり
「あぁ、私と同じようにこういうのが好きな人っているんだわ~。」と嬉しくなります。


おそらくこのブログを読んでいただいてる方々は私と同じく
単発ものや海外作家の作品が見たいって人多いんでしょうね。


AXNミステリーなんて海外のサスペンスを沢山放送しているんだから
土ワイや火サス、ザ・サスペンスなんかでやった海外作家のものを
放送してくれれば他との差別化も図れるのに。


もう終わっちゃったみたいだけど早川書房のオリジナル番組も放送してたようだし
コネクションは他に比べて強いはずなので頑張って欲しいところ。



東映チャンネルのこの枠来月も傑作推理劇場から2作品放送される。
昔、再放送で見たことがあるやつだが内容をすっかり忘れているので今から楽しみです。




                         
                                  
        

傑作推理劇場 「魔少年」 (1980年) エラリー・クイーンが選んだ森村誠一の短編小説のドラマ化

category - 昭和のテレビドラマ
2019/ 10/ 09
                 
先日、CSの東映チャンネルで森村誠一の短編小説をドラマ化した
「魔少年」が放送された。

「魔少年」はテレビ朝日で2回映像化されているがどちらにも
松尾嘉代がそれぞれ違う役で出演しているのが興味深い。


今回は「傑作推理劇場」なのでドラマ自体は約45分ほど。
原作が短編という事もありほぼ忠実に描かれていた。
その後に土曜ワイド劇場はこの倍なので原作にない
設定が盛り込んであり見比べてみたい。




●傑作推理劇場 「魔少年」  
放送日: 1980年7月21日
原作: 森村誠一  『魔少年』  「日本傑作推理12選」 エラリー・クイーン編」収録
脚本: 神波史男
音楽: 菊池俊輔
監督: 佐藤肇
制作: テレビ朝日、東映
出演: 松尾嘉代、森本レオ、名古屋章、織本順吉、
久富惟晴、荒谷公之、西沢利明、大川栄子ほか


買い物帰りの主婦・牧子(松尾嘉代)はある光景を見てゾッとした。
小学生の子供たちが車が行きかう信号もない大通りを無理に横断している。
牧子は慌てて彼らに駆け寄って注意した。


驚いたことにそれは息子の同級生で悪評高い宗一(大栗清史)だった。
宗一は大通りを走る自動車のギリギリを抜けて
向こう側の通りまで横断し勇気を試す遊びなので
危険なのは当たり前だと涼しい顔で説明する。


傑作推理劇場 「魔少年」




彼は国語で1番を取ったクラスメートのメダルを奪うと
強引に「横断遊び」をさせ度胸を試したのだ。


そこへ、息子の正男(中越司)が見知らぬ老婆(原ひさこ)を連れてやってきた。
正男は風呂敷と手荷物を持ち道に迷っている老婆を案内している途中だった。
老婆は牧子が正男の母だとわかるとお礼を言う。



正男と宗一は同じクラスで、宗一の父・大野(織本順吉)は
牧子の夫・相良(名古屋章)が経営する会社で守衛をしている。



正男は各科目で1番こそ取れなかったが多くの科目で2位をとり
平均して優秀な成績をあげている牧子の自慢の息子だ。
しかし、エリートコースを歩ませたい相良は1番を目指すよう正男にハッパをかけ
家庭教師の小畑(荒谷公之)をつけていた。



傑作推理劇場 「魔少年」



ある日、団地の主婦が焼却炉でゴミを燃やそうと火を放ったところ
ものすごい悲鳴を聞いて腰を抜かしそうになった。
中に生き物がいると思った時には炎が燃え盛りどうすることも出来ない。


火がおさまって取り出したところ佐川ひとみの愛猫・とんべえが焼き殺されていた。
その主婦が焼却炉の近くから逃げる宗一の姿を目撃していた。
校庭で遊びを邪魔した宗一をひとみがきつくしかったことを根に持ち
嫌がらせにとんべえを縛って焼却炉に放り込んだものと見られた。


騒ぎを知った大野は宗一を問い詰めるが黙ったまま
大野に殴られ続けても泣き声一つ上げない。
異様な親子の様子を見て近所の主婦たちも背筋が寒くなった…。




傑作推理劇場 「魔少年」




小学校では熱帯魚の餌作りの授業が行われていた。
”魚博士”の異名を持つ内藤弘が自作の餌をまくと魚たちが寄ってきてパクついた。
その時、宗一も自作の餌を水槽にまくと同様に魚たちが群がる。


宗一の意外な一面に先生(森本レオ)もクラスメートも驚きの声をあげ
一躍人気者となり弘は得意分野で宗一に出し抜かれたような気分を味わう。


下校する弘に宗一はさっきの餌は近所の大学生が作ったもので
引っ越してしまいもう同じものは作れないという。
魚博士の弘なら同じものが作れるだろうからあげるので
このことは誰にも言わないようにと話すと餌を譲った。



帰宅した弘は飼っている熱帯魚にその餌を与えたが魚は全て死んでしまう。
弘は父(西沢利明)と母(大川栄子)に自分が怪獣の本を宗一に貸さなかったから
その仕返しに嫌がらせをしたのだと説明した。



傑作推理劇場 「魔少年」




弘の母が餌を学校に持って行き調べてみると農薬が混入していることが判明。
だが、宗一は先生の追求に「やったのは自分ではない」と否定し続けた。
教師たちも宗一が怪しいと思いながらもそれ以上どうすることも出来なかった。



そんなある日、正男は偶然牧子が小畑の車に乗り込みホテルに入るところを見てしまう。


二年ほど前から牧子は小畑の若い肉体を楽しみ後腐れがないよう都度小遣いも渡していた。
正男が敏感な年頃になり牧子はそろそろ関係を清算しようと考えていたが
小畑はいつしか本気になってしまい別れ話はこじれていた。



傑作推理劇場 「魔少年」



しかし、帰宅してみると団地住まいのひとみと弘の死んだペットの墓にと
正男は自宅の庭を提供していた。
牧子は困ったもんだと思いながらも正男のクラスメートを思う優しい気持ちに触れ
まだまだ子どもだと思わず顔が緩んだ。



しばらくして、近所で火事が発生し正男が通う板橋区立城西第五小学校の
女子の家ばかりに小学生が書いたような不気味な火事見舞いのハガキが届き始めた。
筆跡から贈り主が宗一とわかり呼び出され詰問を受けた。



宗一は無記名にしたのは相手が女子で恥ずかしかったからで
火事に気を付けた方がいいというそれだけの思いだけだったという。
先生は宗一が自分がやったと素直に認めたことでこれまでの事は
全て許すので今後変な行動はとらないよう忠告を与えただけで終わった。



傑作推理劇場 「魔少年」



しかし、これまで宗一を陰で操っていたのは優等生の正男だった。
宗一の父が交通事故で会社をクビになったとき正男は相良に
大野を雇ってくれるよう頼んでいた。


事故がもとで片足が不自由になった大野は相良の会社を追い出されれば
もう再就職は難しいと宗一を脅して自分の代わりに悪事を働かせていた。


正男の次のターゲットは母を奪った小畑だった。



もうやめたいと泣く宗一をねじ伏せて火炎瓶を作ると
正男はトランシーバーを使い歩道橋の上で待機していた宗一に指令を送った。



傑作推理劇場 「魔少年」



小畑の車が近づき正男は宗一に投げるよう指示を出したその時
牧子が助手席にいるのを発見。
慌ててやめるよう伝えるがすでに宗一は火炎瓶を小畑の車めがけて放っていた…。



車は転覆し辺りは火の海となりトランシーバーを持っていた
宗一がその場で捕まえられた。



結局、小畑は死に牧子は奇跡的に軽症で済んだ。



傑作推理劇場 「魔少年」



退院した牧子は刑事(久富惟晴)の訪問を受ける。


小畑の遺品からホテルのマッチが見つかり牧子との関係がわかってしまった。
刑事は不倫関係を暴くつもりがないようでホッと胸をなでおろしたのもつかの間、
火炎瓶を投げた宗一が正男の命令で動いたと白状したことを聞かされる。


トランシーバーで指示を送っていた正男を見たという目撃者も出てくるが
牧子には信じられず狂乱した。


刑事の話しでは横断遊びも、猫や熱帯魚を殺したのも自分より成績が上の生徒に
精神的な動揺を与えて成績を下げさせようとする正男の狙いだったという。


子どもとは思えない位の悪質な嫌がらせにもう一人の刑事(河原裕昌)は
横断遊びにはそれ以上の狙いがあったとさえ思えると牧子を睨みつけてくる。



傑作推理劇場 「魔少年」



十歳の子どもに責任能力を問えるはずもなく刑事は事実だけ伝えると
そのまま出て行った。



牧子が放心状態でいると何も知らない正男が学校から帰ってきた。


彼はついに算数で1位を取ったとメダルを誇らしげに牧子に見せる。



傑作推理劇場 「魔少年」



あどけない表情を見せる正男が猫や魚と同じように人も殺す
恐ろしい殺人鬼だと知った牧子は引きつった笑みを浮かべるしか出来なかった。





日本傑作推理12選 (1977年) (カッパ・ブックス)



松尾嘉代は傑作推理では魔少年の母親役を
土ワイでは少年の父の愛人役を演じている。


傑作推理劇場 「魔少年」


良妻賢母のイメージはない嘉代さんだが
模範的な優等生の息子を優しいまなざしで見守る母の顔と


夫の目を盗んで息子の家庭教師と二年も関係を続ける悪女と

息子の正体を知って叫び狂い醜態を晒す女と

カメレオンのように様々な表情をみせる嘉代さんの顔芸と
いい意味でのオーバーアクションが大きな見どころ。


特に若い愛人に別れ話を切り出し本気になられてしまい
小バカにしたようにほくそ笑む表情なんか年季が入っており
得意分野なんだよなぁと思わされる。


そして、何度かある荒谷公之とのベッドシーンでは
またしても乳見せするというサービス(?)精神も旺盛である。


庶民的な名古屋章が社長ってのがピンと来ないが
それ以上にピンとこないのが妻が松尾嘉代ってところ。
絶対に力負けしちゃうでしょ。
圧が違うもの。



東映制作、松尾嘉代、森本レオが出演しており
土ワイの「密会の宿」も再放送してほしいなぁと思いました。



傑作推理劇場はわずかな記憶しかないが、確か夕方に放送されている時に見て
冒頭にエラリー・クイーンが出演していたような覚えがある。
記憶が浅いわりに面白かったという印象は残っていて
ずっと見たいなと思っていたらとうとうやってくれた。



魔少年が収録されている「日本傑作推理12選」 エラリー・クイーン編第1集は持っていて
日本人の推理作家をエドガー・アラン・ポーをもじった江戸川乱歩くらいしか知らなかった
クイーンがスエディット社より依頼されて翻訳された日本人作家の作品を読みまくり
12本の作品を選んだという前書きが書かれている。


各作品ごとにクイーンのコメントがあるのだが魔少年については

「十歳の小学生の犯意と残虐性を描き読者に強いショックと恐怖を味わわせるであろう。
登場する子供の一人は”悪に対する絶対的な天性”を持っている」と紹介されている。