2017/04/29
2017/04/25
2017/02/27
2017/02/16
2016/12/05
展覧会レポート昭和のドラマ昔の土曜ワイド劇場懐かし邦画

昭和の日本映画

        

風刺が効いたシュールな映画「億万長者」

category - 昭和の日本映画
2017/ 04/ 29
                 
先日、「女性に関する十二章」について書きましたが
同じ、市川崑監督の「億万長者」も見てみました。
公開は「女性に関する十二章」と同じく1954年です。

億万長者


「億万長者」という題名から主人公がどう成り上がっていくのか、
どんな夢が見られそうなのか期待しながら見たんですが
かなり風刺の効いたブラック・ユーモア映画だったということからも
タイトルは皮肉的な感じでつけられたようで予想とは真逆の内容でした。



当初は「億万長者」というタイトルに興味を覚え
もとはこちらだけが見たかったのですが、
放送スケジュールを確認している最中
その前に「女性に関する十二章」も放送されることを知り
放送日程から「女性に関する十二章」⇒「億万長者」という流れで2作品を見ました。


2作品とも今回初めてその存在を知ったというもので
あらかじめの知識などはなく軽い気持ちで見てみました。



木村功

税務署員・館香六(木村功)は小心者で要領も悪く出世街道から外れている。
葬儀屋の2階に下宿して一人でつつましやかに暮らしている。
唯一の趣味はパチンコ屋に行く事。
しかも、自分はやらずに人がやるのを眺めているだけというもの。

未納の税金を取立てに行く仕事もやるのだが、押しが弱いのでうまくいかない。



飛行機が墜落して死んでしまった東太賀吉(多々良純)の通夜に取立てに行けば
妻山子(北林谷栄)に借金の利子を払うだけで手一杯で払えないと断られ
贋十二夫婦(信欣三・高橋豊子)の家へ行けば、失業中の身で
長男の門太(岡田英次)は養成所へ通っている身だし
その下はみんな小さな子供ばかりで牛乳配達や
妻が内職しても収入はしれていて取り立てに失敗している。



贋の家の2階には鏡すて(久我美子)という下宿人がいるが
1年半も下宿代をもらっていないという。
館はすてが原爆を作っていると聞き
思わずボロ家を飛び出すと走って逃げてしまう。

館は通りすがりの少年に
「ここは東京からどれくらい離れているかわかるか?」
と、問うと少年は
「沼津市は東京から123.5キロ離れている」と言う。
なんと沼津まで走ってきてしまった・笑(んなわけあるか!)

原爆と聞いて沼津まで走り逃げた館は安心して
その場で新聞紙にくるんであった自分が作った弁当を広げようとする。
直後、雨が降り「放射能の雨かもしれない」と慌てその場を去る。


ある層にとっては、一部の税務署員を接待したりすることで
利益を得る場合がある。
税務署の署長伝三平太(加藤嘉)などは適当に汚職もやって
うまいこと生きているのだが館にはそんなやり方は出来ない。


億万長者

税金の取り立てさえ失敗する館は署長に怒られたりしている。
署長はやり手の署員で娘の麻子(左幸子)と一緒に取り立てに行くよう命ずる。


麻子は署長が母を子を生む機械としか考えてなく
23番目の子供を産むと亡くなってしまったことで
自分は子供なんか絶対に産まないとまくしたてる。


その上、再度取り立てに訪れた贋家で麻子は
長男の門太と意気投合してしまう。


館は麻子にいいところをみせようと
財産の差し押さえをしてみせる。
その後は汚職することもいとわなくなった。

納税者の接待に応じて料亭へ行っては見たものの
融通が利かない館は300円弱しか節税できないといい
大阪弁で押しの強さを聞かせてくる男に恐れをなして
早々に料亭を後にしてしまう。

その後、未亡人山子から1万円握らされてみると
汚職をしてしまったと罪の意識が出てきて
死ぬ決心をしてしまう。


その1万円は原爆を作っていたすてにやってしまう。


結局死ぬことが出来なかった館は
ひょんなきっかけで知り合った
芸者の花熊(山田五十鈴)にそそのかされ
「脱税メモ」なるものを作成する。


館は、麻子から門太の子どもを身ごもってしまったと
相談を受けるが「脱税メモ」作成に気が行っており
それどころではない。




完成した「脱税メモ」を持参して花熊の店へ向かうが
花熊には元愛人で政治家の団海老蔵(伊藤雄之助)という先客があり
部屋の前でふたりの話を立ち聞きしてしまう。

館は正義感に基づいて「脱税メモ」を作ったのだが
花熊はうまいことこれを利用して汚職政治家などに
高く売りつける算段をしていたのだった。
館は花熊に会わずに店を後にする。
放心状態にあった館は道端に座り込み
「脱税メモ」を置き忘れてきてしまうのだ。


その「脱税メモ」が検事総長に拾われてしまったから
さぁ、大変・・・!


館は署長や花熊から攻められるものの
行政監査委員会が行われ
汚職政治家団は記憶にないととぼけてみせ、
署長は泣き落とし作戦に出るのだが
そこへ、脱税メモは自分が書いたと
館が毅然と入室してきた。

しかし、もとが小心者の館、作成した動機を
「汚職日本を救えるのはわたくしだからと信じたからです。
私も汚職をしました。未亡人から1万円受け取ってしまいました。」
と、発言しまわりからの嘲笑を受けると
心臓がドキドキと激しくなりその場に倒れてしまうというオチ。


その後、政治家の団はぼーっと道路を歩いていて
自動車に撥ねられて自殺として処理されてしまい、
差し押さえを受けた贋家も一家心中をしようとする。


門太は死ぬための薬を買いに行く。
残った贋夫婦は子供たちに一張羅を着させて
子供が拾ってきたマグロを食べた。
このマグロは原爆マグロだったのだ。


一家心中するとき館が贋家を訪れていた。
2階のすての部屋で寝かしてもらい、起きてみると
すてが原爆4号が完成したと喜んでいる!


慌てた館が1階へ降りると、門太と鉢合わせ。
門太は薬を調達するためにズボンを売ったので下着姿だった。
門太以外の贋家の人々は館が寝ている間にマグロの
放射能にあたって全員死んでいた。


原爆から逃れるため館と門太は家を飛び出す。
途中まで夢中になって一緒に走ると
それぞれ反対方向へ向かって逃げていった。


--おわり--




原泉

区役所と税務署の区別がつかず孫の出生届を出しに来た原泉。

この時まだ49歳くらいなのにものすごい婆さんぶり。



この映画原泉のような老け役で知られている役者が結構出てきます。


億万長者

未納の税金を徴収するため木村功がある家へ向かう。
どこのアジアのスラム?ってかんじでビックリ。


億万長者

この家は子沢山夫婦が住んでいた。
ただでさえ傾いて壊れそうな家に
小さな子供がわんさか住んでいる。



岡田英二

その家の長男門太は岡田英次。
どっかの養成所で、ニューフェイスというがまだ稼げていない。
他の子どもたちに比べてひとりだけやたら年をくったオジサンな子ども。

おまけに最後には下着姿となり
まるでオムツのようなブリーフ姿で走って逃げていた。



奥はこの家の夫婦。
贋十二役の信欣三と、妻のはん役の高橋豊子。


岡田英次って二枚目なんですけど
役をあまり選ばないっていうか
あれ、こんな役もやっちゃうの?っていう
そんな印象があります。

ここでもオムツブリーフのかっこ悪かったこと。


久我美子

久我美子は華族という名家の出身ながら、ここでは原爆作りに没頭する女鏡すてを演じている。
役でボロを着ていても、やはり育ちの良さは隠せない感じ。


北林谷栄

この人も老け役で有名ですね。
北林谷栄は当時43歳くらい。
子沢山で旦那が借金を残して死んでしまい
木村功が税金を納めるよう催促しにくるのだが
生活するのに手一杯。

なけなしの1万円を握らせなんとかその場をしのごうとする未亡人役だった。




多々良純

そのダンナ役が多々良純。
飛行機事故で早々に死んでしまうので登場シーンは少ない。


山田五十鈴

問題となる「脱税メモ」を館に作らせた芸者の花熊役は山田五十鈴。
花熊も13人子供を抱えていてこのメモを売って一儲けするつもりだったが。





伊藤雄之助

花熊の元愛人で、政治家団海老蔵役の伊藤雄之助。
悪徳政治家と思いきや、最後はあっけなく事故死してしまう。
汚職容疑で小菅刑務所から出所してきた団は
会わない間に勝手に花熊から縁を切られていた。
花熊に未練タラタラで、妻子と別れても
政治家を辞めても一緒になりたいとすがる。





加藤嘉

木村功が勤める税務署の署長伝三平太に加藤嘉。
やはり子沢山で学歴もなく、定年までなんとか
今の位置にしがみついていたいという。


老け役といえば加藤嘉もそうですね。
この時41歳くらいなんですが、そうは見えません。
20代位はどんなだったのでしょうか?



最後のほうで木村功が作成した「脱税メモ」をめぐって
元妻の山田五十鈴と共演していた。

調べるとどうやらこの映画が公開された年に
加藤嘉と山田五十鈴は離婚しているらしい。


映画ではそんなことも感じさせない息の合った演技を披露。
元夫婦だからこそできた阿吽の呼吸か。

この映画、山田五十鈴の芸達者ぶりが光ってましたね。




西村晃

館が初めて納税者の誘いに応じ料亭へ行く。
税金を少しでも安くしてもらおうと
よりによって気弱な税務署員館を接待してしまった
納税者の大阪弁の男に西村晃。




左幸子

税務署長・加藤嘉の娘の麻子は左幸子。
あれだけ子供はいらないといっていたのに
貧乏一家の門太の子どもを宿してしまう。


左幸子は左時枝の姉だったんですね。
今回初めて知りました。


億万長者

木村功らが勤務する税務署内の風景。
資料は全て紙ベース、中央にいる左幸子の手にはそろばんが。
何か調べるといっても、これだけの量があると
探し出すだけで一苦労。

億万長者

署長室にも大量の資料が。

億万長者

交通巡査役で高原駿雄。


内容としては「女性に関する十二章」の方が好みです。
いろんな役者の若いころ(?)を見れたのは良かったけど
コメディにしてるけど、テーマが原爆とか汚職とかですからね。

昔の役者たちの芸が楽しめたけど
事前におおまかなあらすじを知っていたら
敢えて見なかったと思う。


子だくさんの貧乏一家が差し押さえにあい
生活苦から一家心中を決め
知らなかったとはいえ最後の食事に
原爆マグロを食べてしまい全員死んでしまうとか
ブラック・ユーモアがきつすぎて笑えないぜ。


私のようにテーマの暗さが気にならない方は
見てみると楽しめるかと思います。

館の小心ぶりとか笑えるところもありますしね。








            
スポンサーサイト
            
                                  
        

結婚がテーマのラブコメディ 映画『女性に関する十二章』

category - 昭和の日本映画
2017/ 04/ 25
                 
市川崑監督の映画「女性に関する十二章」(1954年 東宝)を見ました。
脚本は市川監督の妻の和田夏十。
原作は伊藤整の「女性に関する十二章」という
『婦人公論』に連載されていたエッセイをまとめたもので
当時ベストセラーになったらしい。


原作はエッセイということでだいぶ脚色されているんじゃないだろうか。
ナレーターは原作者の伊藤整が務めており
伊藤整本人も出演している。
映画の中には小説自体も何度も登場していて
結構ユニークなつくりとなっていた。



バレリーナの飛鳥ミナ子(津島恵子)と銀行員の呉小平太(小泉博)は
学生時代から9年間付き合っている29歳同士で、倦怠期を迎えている。
フィアンセというよりは、もう兄妹のような関係だ。


女性に関する十二章

自身が所属するバレー研究所の脱退問題で
悩んでいるミナ子は結婚どころではない。


女性に関する十二章

それに音楽舞踏評論家の車田龍夫(上原謙)は
ミナ子にプリマ・バレリーナとしての復帰をすすめてきた。


小平太の母浜子(三好栄子)は息子を
なんとか結婚させたくて何度も見合いをさせている。


この日もミナ子と車田がいたレストランでは
小平太が15回目の見合いをしている最中だった。

女性に関する十二章

今回のお相手は大鳥初子(小泉澄子)で
彼女は結婚こそが女性にとって懸命な職業だという。


そんな小平太に急にフィリピン転任の話しが出た。
行くまでの間に結婚しなければならなくなった。

小平太はミナ子に結婚を迫るが
ミナ子にとって今はその時期ではなく
キッパリとプロポーズを断られ
またタイミングが合わなかった。


仕方なく小平太は母の言う通り初子と結婚しようとするが
ミナ子はせめて結婚相手は自分の知ってる人にして欲しいと
後輩の三枝千栄里(有馬稲子)をすすめてきた。


千栄里はクールなミナ子と違って夢見がちな
お嬢さんタイプだが、その反面小平太の身上調査までする
現実的な面も持ち合わせていた。
小平太が退社した後、銀行へ行き、小平太の年齢、家族構成、収入などを
同僚から聞き出しているという今では個人情報保護の面からも
考えられない場面が出てくる。



小平太と千栄里との結婚式当日に
小平太のフィリピン行が突然中止となった。

もともと海外への転勤のために決めた結婚。


有馬稲子

小平太は千栄里と結婚する気がなくなった。
式場の廊下で小平太はミナ子と会った。


女性に関する十二章


これまで9年間倦怠期を迎えていた二人の
関係が一気に結婚へ向かって加速していく。

千栄里を小平太に紹介したものの
その後ミナ子は心が落ち着かなかった。
ようやっと恋する相手はお互いなんだということに気づく。

式場を飛び出した小平太とミナ子は手を取り合って屋上に行く。
これまでの出会いから現在までを振り返る。


学生時代に結婚するのはまだ早いとミナ子が反対。
銀行に就職した小平太がもう少し高給取りになってから
結婚する自信がついてから、せめてバレエの稽古場を持ってから・・・
その後は小平太が大阪へ転勤となり、戻ってみると
ミナ子はいっぱしのバレリーナ気取りでバレエを教えていたり・・・
と9年間の間に結婚するチャンスを何度も逸してきた。

今となっては小平太も、仕事を持たず、
奥さん家業だけする妻ってどうなんだろうと思うようになっていたが、
ミナ子にそれを告げず、母が進める見合いを次々こなしていて
ミナ子には小平太の気持ちは伝わらずすれ違っていた。


専業主婦ではなくバレリーナが妻だっていいのだ。


そんな、二人は海へ向かい心中をはかる。
思い付きで海へ行ったものの中々死ねずにいた。
そうしているうちに、二人は夜の海で
海や空の美しさを感じ生きることへの素晴らしさに目覚めた。


二人がミナ子のうちへ戻り、結婚を決めキスをする。




なんとなく見たのだが、倦怠期を迎えたカップルの
「結婚」をテーマとしたラブコメディということで
軽快にテンポよく進んでいってなかなか面白かった。


最後に心中が出てくるがコメディなので
暗さは全くなく逆に滑稽なくらいだ。


原作者の伊藤整がナレーションをしているが
ただのナレーションではなく、話の展開に合わせて
この部分は本の第何章に書いてありますとか
劇中、小泉博ら俳優との掛け合いみたいになっていて
とてもユニークな作りとなっていて楽しめる。


女性に関する十二章

冒頭、いつもの看板の前で待ち合わせをするミナ子と小平太。
津島恵子と小泉博がデートをするところから話ははじまる。


女性に関する十二章


その後、津島恵子が書店前で原作本の看板広告を見つけ
本屋に入り原作を手に取る。
本がクローズアップされるとキャスト、スタッフ紹介へ。

これまでのムーディーな曲から一転
テンポアップした曲へと変わる。


女性に関する十二章

津島恵子は本を130円で購入するのだが
この書店には原作本の広告が貼られている。


女性に関する十二章

本屋から出て映画もやりすごして喫茶店でお茶するのだが
会計50円札と一緒にテーブルにはあわてて店を飛び出した
津島恵子が忘れていった原作本が置かれていた。


女性に関する十二章

伊藤整は、終盤小泉博の結婚式の場面に登場する。
同じ建物で行われている出版記念パーティーに参加するという設定だ。



若い時の小泉博がなかなかかっこいい。
そして、ダンス経験のある津島恵子もスタイルの良さも目立った。
実際にバレエのレッスン風景もありました。

津島恵子

牟田刑事官の妻というイメージしかなかったのだが
その後いろんな昔のドラマで津島恵子を見る機会があり
第一印象と変わって見えてきました。

一番驚いたのは、中年期になってからのテレビドラマだったが
地位のある旦那が浮気していて
妻である津島恵子も若いツバメと遊んでいるのを見て
それまでの陰で夫を支える品の良い妻の印象しかなかったので
自分の中でものすごいギャップを感じたのを覚えている。

この映画でもふぅ~っとタバコをふかしているしね。

飛鳥ミナ子という女性もとってもクールなんですよね。
女性の憧れ「結婚」というものにたいして淡々とした態度で。
恋人の小平太にもへんになびかないし。



音楽は黛敏郎が担当しているのだが
これがモダンな感じでとてもオシャレで心に残る。


津島恵子と小泉博の周りを固める役者たちも興味深い。

自分の女房には亭主関白ぶりを発揮するくせに
キザでやたらと外面がいい上原謙。

女性に関する十二章

レストランでも女性が座る前に椅子を引き、
コートを預かってやり、女性がたばこを手に取れば
すかさず火をつけてやりというレディーファーストぶり。



上原謙

しかし、家では帰宅後スーツを脱ぐと、その下はしっかりと肌着とももひきを履いており
部屋着の丹前に着替える。
しかし、妻から応接室にミナ子が来ていることを知らされると
そそくさとスーツを着なおしいつものように気取って出迎えたりして
そのキザっぷりには笑いが出てくる。






徳川夢声
小平太の父、平太には徳川夢声。




三好栄子


母の浜子に三好栄子。

三好栄子は高峰秀子の『カルメン純情す』で
政治家で男遊びが激しい娘を持つ母の役で出ていて
その時女性ながらヒゲをはやしていたので印象に残っていたから
今回もすぐにあの時の女優さんだとわかった。


女性に関する十二章

小平太の両親が手書きで結婚の招待状のハガキをせっせと書いている。
しかし、帰宅してきた息子は結婚の相手を大鳥初子から三枝千栄里に変更すると言い出した。
父親はヤケになってハガキの束を部屋に投げばらまいて、全部最初から書き直しだといい、
母親は大鳥初子をなんとか千栄里に書き換えればいいだけだと言う。

しかも、この招待状、時間を「三時」で出すところを
一本線を引き忘れ「二時」で出してしまうというドタバタぶりである。




他にも久慈あさみ、伊豆肇、三戸部スエらが出演している。


特に期待もせずに思い付きで見たのだが結構面白かった。

                         
                                  
        

映画「情炎」 ニーズが少なさそうなのでだからこそ敢えて記事にしてみる

category - 昭和の日本映画
2017/ 02/ 27
                 
TSUTAYAで「情炎」(1967年松竹)という
吉田喜重監督の白黒映画を借りてきました。

前回の「エロス+虐殺」を返却する際
たまたま目に止まったので「情炎」という
そそられるタイトルとパッケージの写真を見て
気軽に手に取りました。


原作は立原正秋の『白い罌粟』という短編小説らしい。

情炎 岡田茉莉子


特に記事にするつもりはなかったのですが
なんだかこの映画に対するニーズが少なそうなので
逆にそれなら敢えて書いてみたいという気になり
あらすじを追ってみることにしました。

私の感想も最後に綴ります。



///////////////////////////////////////////


織子(岡田茉莉子)は夫の降旗(菅野忠彦=現・菅野 菜保之)との
夫婦仲が冷え切っていた。


夫は愛人をつくり度々外泊するのだが
心を閉ざしてしまった織子は醒めきってしまい
嫉妬する気すら起こることもなく淡々としている。

織子は止めていた短歌を再開しようとしていた。

そこには彫刻家の能登光晴(木村功)がいた。
能登に織子の母(南美江)が亡くなったときのことを
聞き出そうとする。

実は、織子の母は夫が亡くなった後
年の離れた能登と男女の付き合いをしていたのだ。

母は男と過ごし酔っ払って自動車事故にあって死んでしまった。
織子は母の最期の様子を聞かせて欲しいと言うが
能登はお母さんから別れ話を切り出され
お母さんの最後の相手は自分ではないと話す。

それは、名前は知らないが労務者の男だったのだと打ち明ける。
そんな振られ方をしたので能登自身ショックだったと言う。

母がいた頃を思い出す織子。

情炎 岡田茉莉子

若い頃の織子がタイプライターを打っている。
そばには能登がおり、織子はそっと
「母の情夫 能登光晴」 と、タイプする。


情炎 南美江

帰宅すると鏡台で母が化粧をしていた。
織子の帰ってきた気配を察した母は
織子に、あじの干物を買ってきたけど
自分はせっかちでうまく焼けないから
自分で焼いてと言う。

しっかりと化粧を施し紅をさす母の姿を見て
織子は「体に魚の匂いが染み付くのが嫌なんでしょ」と
母に女を感じ、これから男と会うことへの抵抗を
ささやかながら示した。。。




能登は織子が夫とうまく行ってないことを察知して
織子に問いただすが織子はそれには答えない。


能登と別れて織子が帰宅すると
義理の妹のゆうこ(しめぎしがこ)から電話がかかり
近くでパーティーをやっているから来ないかと織子を誘う。



ゆうこは、兄が浮気していることを知っており
織子にも浮気しちゃえばいいのにと話す。


織子は誘いを断ったが、ゆうこは仲間の男(小野武彦)らを
連れて織子のもとへやってきた。
結局織子はゆうこ達と車で海へドライブに行くことになった。

若い男達はパンツ一丁になり浜辺で無邪気に遊ぶ。
車には織子とゆうこの二人だけが残ったが
ゆうこも車から降りて姿を消してしまった。

織子はゆうこが気になり探しに行くと
小屋のようなところでゆうこは見知らぬ
労務者風の男(高橋悦史)に迫られており
抵抗を試みたものの男に抱かれる姿を目撃してしまう。




拒んではみたが最後は受け入れるように男を
迎え入れたゆうこ。

野生的な男が女を抱く様子に感情が動く織子だった。




後日、織子はゆうこが男に暴行を受けたと
警察へ訴え刑事(江守徹)から事情聴取を受ける。
労務者風の男は警察に身柄を拘束されていた。
しかし、刑事はゆうこは暴行は受けておらず
合意で行ったと話していると言う。


久しぶりに家へ戻ってきた夫は
夜、織子を抱こうとする。
人形のように感情を出さない織子に
夫は行為を途中でやめてしまう。

織子は夫に飼い殺し状態を止めてくれるよう
離婚を切り出すが、愛人を作っても嫉妬せず
愛してもらいたいのにそうはしてくれない織子の要求を拒んだ。



情炎 岡田茉莉子 太地喜和子

珍しく洋装をした織子は夫の情婦(太地喜和子)の洋装店を訪ねた。



情夫に夫に自分と離婚してくれるよう
説得してと頼むがあっさりと拒否されてしまう。


織子はゆうこと関係をもった労務者の男をたずねていく。
例の小屋に入ると男が帰ってきた。
ゆうこのことを話しているうち
男が織子に迫ってきた。

逃げては見たものの、最後は半ば同意のような形で男と関係を持ってしまった。



実は、織子は亡くなった母に女として嫉妬していた。
織子は能登が好きだったのだ。


織子が能登のもとを訪ねていくと
見知らぬ女(松下砂稚子)が出てきて
能登は真鶴へ秋の彫刻作りへ出かけ
しばらく帰ってこないという。


真鶴まで追いかけていく織子。
能登は淡々と大きな石を彫りながら
「相変わらずご主人とうまく言ってないな」とつぶやく。


能登の宿泊先のホテルで織子は
「あたくし、母と同じような女になってしまったんです。
行きずりの労務者風の男と関係してしまったんです。」と
能登に浮気をしたことを話す。


そして、またいつあの男のもとを訪れるかもしれないと宣言する。
能登はそんな織子の頬を叩く。


織子は母と能登の間柄に
女として嫉妬していたことを打ち明ける。



織子が帰宅するとゆうこが縁側にいて
織子が作った短歌を読んでいた。
その内容から、ゆうこは織子に好きな人が出来たことを気づいていた。


それはゆうこだけでなく、夫も同じだった。

真鶴には夫の会社の保養所があり
来ていた従業員が織子と能登の姿をみてしまったのだ。
夫は妹のゆうこにこのことについていろいろと聞かれていたのだ。




織子は再び真鶴へ向かう。
駅で能登を訪ねたときに迎えてくれた女と鉢合わせする。


織子と能登がホテルにいたとき
織子の夫が突然部屋に踏み込んできた。


当然、夫は二人の仲を疑ったが
織子は能登とはなんでもなく
行きずりの男と関係を持ったことを打ち明ける。



織子は能登を訪ねて言ったとき迎えてくれた
見知らぬ女が能登の愛人ではないかと問いただす。
「あれは留守番を頼んだ未亡人だ」とはぐらかす。
「ずいぶん未亡人と縁があるのね」と
母とも関係していたことを匂わすような発言をした。


能登と未亡人は愛人関係だったが
未亡人は秋には再婚が決まっているため
それまでの間柄なのだと告白した。


情炎 岡田茉莉子 木村功


その後、織子は能登と関係を持つ。


織子は能登を愛していたのだ。
能登よりずいぶん年上だった織子の母も
自分と能登が続くわけもないと感じていたのだろう。
織子と一緒になってくれと能登に頼んでいたそうだ。



しかし、織子が帰ったあと悲劇が能登を襲う。

自分が彫っていた彫刻が倒れてきて
能登はつぶされてしまい
体が動かなくなってしまった。

入院先の病院で医師から
能登が性的不能になる可能性が大きいことを知らされる。
能登自身もこのことを知っていた。

織子が病室へ帰ると、報告を受けたのだろうと察知した
能登が「性的不能になるかもしれない」とつぶやく。

気丈にふるまう織子。

病室のガラス窓から覗く織子の口元からは
「あたし、それでもいいの」といっているように見えた。


///////////////////////////////////////////




良くも悪くもこれといった感想はないのですが
最後の方で岡田茉莉子と木村功のベッドシーンがあるのですが
この演出のしかたが良かったですね。


正面で見せるのは胸の上部辺りまでなのですが
うつぶせになり、長い髪をかき上げてうなじをじっくり見せていくところとか
ベッドのヘッドボードに頭をぴったりとくっつけるところなど
(一番上の写真)
映像的にわかりやすい濡れ場ではないものの
そこでねっとりとした色っぽさを表現をされていて
その見せ方のアイデアと演じ方と役者の技量に感心させられました。


またひとりの女として消えていく女としての炎に抗うかのように
若い男たちと関係をもった主人公の母を演じた南美江。



結局は男とあって酒に酔った上に車に轢かれて死んでしまうのだが
その様子を白昼の人がいない広い道路の真ん中を
南美江が歩いていて、その後ろを大型トラックが通る。
トラックが行ってしまうとそこには倒れた南美江が。
そして、トラックの荷台から労務者風の男たちが次々に降りてきて
南美江を上から見下ろす。

倒れた南美江の視点で見る
囲まれるようにして見下ろされた男たちの顔、顔、顔。。

一人去り、二人去り、残った男は高橋悦史だった。


ラストシーン、母と同じように夫以外の男たちに体を許してしまった岡田茉莉子。
人がいないあの広い道路の真ん中を歩く岡田茉莉子を
大型トラックが通り抜けていく。

倒れた岡田茉莉子を見ていたのは高橋悦史

という具合に、未だに男と逢瀬を重ねる母を嫌悪していたが
それと同じ運命をたどってしまった娘を重ねていた。



それと「エロス+虐殺」よりはエロスを感じましたねー。

「エロス+虐殺」では伊井利子という女優の
オールヌードがあったのですが
こちらでは若き日の岡田茉莉子はもちろん
しめぎしがこも脱いでません。

(岡田茉莉子か差し替えかわかりませんが
背中をさらすというのはありますが。)


視覚を刺激するのは明らかに前者なのですが
後者の方が色っぽさを感じるのです。

年齢を重ねて色恋にも余裕がある大人の男性なら
こちらの方がグッとくるはず。

ねっとりとした男女の絡み合いを
静かに妖しく美しく映像にしてました。



また夫と心が通わなくて満たされない思いを抱えていた
岡田茉莉子が無骨な高橋悦史と一線を越えてしまうところも
抵抗を試みながらも身を任せてしまうという
弱さが伝わってきてせつなさを感じてしまいます。






2月も終わりということで
3月はこの2回と全く違うタイプのDVDを借りようと思っています。

                         
                                  
        

「エロス+虐殺」 難解すぎてもう・・・と思ったが、出会うべくして出会った作品だった

category - 昭和の日本映画
2017/ 02/ 16
                 
この間TSUTAYAへ行ってきた。

2月にリニューアルしたばかりで
DVDのラインナップも以前とは変わっていた。

加藤泰の「男の顔は履歴書」のDVDが新作として入荷されて
イチオシみたいな展開をされていました。
もう一度こちらを借りて見てもよかったのですが
近くにデーンとディスプレイされていて
「男の顔は履歴書」と同じように大きく扱われていた
「エロス+虐殺」が気になったので借りてみました。

「エロス+虐殺」(えろすぷらすぎゃくさつ)は
1970年公開の吉田喜重監督の代表作だそうだ。
吉田喜重は岡田茉莉子の夫で、この映画にも岡田茉莉子が出ている。


タイトルと裏面の紹介文を読んだだけで
気軽に手に取った作品なので詳しいことはわからないままさっそく見てみることにした。



だが、20分程見たところで
「話が全くわかんない!」と再生をやめ
この映画がなにを描いたのかWikipediaを見たが
あまり映画の内容はわからないままだった。


しかし、大杉栄と伊藤野枝は名前は知っていたので
映画の詳細についてはわからないながらも
もう一度最初から見直してみることにする。



うす暗い闇の中にスポットライトが
若作りしている岡田茉莉子を照らす。

別の若い女(伊井利子)がこの女に詰問する。

岡田茉莉子はどうやら伊藤野枝の娘
大杉魔子のようだ。


エロスプラス虐殺 岡田茉莉子


この映画はロングバージョンとなっていて
なんと3時間超えの作品なのだ。
あまりに長いので連続再生はやめて
2つに区切られている章ごとに何日かに分けて
流し見で見た。

で、結局何を描きたかったのか
あらすじもよくわからないまんまです。


冒頭の魔子(岡田茉莉子)が伊藤野枝の娘であることを語り
魔子にまるで裁判のように質問を浴びせた若い女。
それに重なり合うように質問者の女が
ある男と出会い女に金を渡す様子が映る。

この魔子や伊藤野枝と女の関係がわからない。
非常にわかりにくい映画なのだ。
それもそうだ、だって次に出てきた
文章がこんなんだから。


エロスプラス虐殺



大正時代、無政府主義者の大杉栄(細川俊之)と
伊藤野枝(岡田茉莉子)の不倫による恋愛と
現在(昭和44年頃)の若者たちとの姿を
平行して描いた物語だった。


大杉栄は保子(八木昌子)という内縁の妻がありながらも
神近市子をモデルとした正岡逸子(楠侑子)という
愛人がいて自由恋愛を謳歌するという人生を歩んでいた。



(映画公開当時、神近市子はまだ存命で
映画では神近の名前を正岡逸子としていたが
名誉権とプライバシー権の侵害を主張して
映画の上映差し止めを求めていた。)



そこに辻潤(高橋悦史)という夫がありながらも
大杉栄と不倫の恋をする伊藤野枝。

二人の恋愛と後の刃傷事件を主体とした大正時代のお話と
二人にはまったく関係ない昭和40年代の醒めた生き方をする
若者たちの姿を同時進行ではさませる。



二つは途中、現在の若い女、束帯永子(伊井利子)と
野枝を絡ませたりして、野枝と栄子という
時代が異なる二人を時空を超えて同時にスクリーンに
登場させるシーンがあったりして
これがまた話をわかりにくくしているのだ。




大杉は野枝を愛したことを逸子に打ち明ける。
妻の保子、逸子、野枝の3人とも同居せず
それぞれが経済的に自立した上での
自由恋愛を大杉は主張する。


しかしこんな状態が続くわけもない。
ましてや大杉は経済的に自立しておらず
経済力がある逸子から金をもらっていた。
彼自身が”経済的自立”という条件から外れている。

逸子の方も金を渡せば大杉が会ってくれるので
自然と財布を開き金を渡す日々。


だが、大杉の野枝への愛はどんどん深まり
ある日逸子から自由になるために
大杉は逸子へ金を投げつけ縁を切ろうとする。


野枝に大杉の子供が出来たこともあり
嫉妬に狂う逸子は大杉を刺してしまう・・・
(日陰茶屋事件)
はずなのだが、このあたりも神近に遠慮したのか
あやふやな演出でわかりにくい。


最後大杉と野枝と甥が連れ去られた上に
殺害された甘粕事件も生々しい描写はなく
二人の死体が転がるのみ。



エロスプラス虐殺 岡田茉莉子と細川俊之

良かったのはモノクロ映画ながらも
映像が美しかったこと。
フィルムの状態が悪いからか
ところどころ人の顔の判別がつきにくい場面もあるが
桜の木の下で語り合う細川俊之と岡田茉莉子の
姿もとても美しかったが
日本家屋から覗く外の風景も情緒があった。

保子、逸子、野枝と3人の女性との関係を
同時進行させる色男、大杉栄を細川俊之が演じているのだが
甘い声と、舞台のような厚化粧を施した細川俊之は
大杉栄役にぴったりでした。


実際の大杉栄は重度の吃音があったり
ギョロ目でどうみてもイイ男に見えないのだが。

しかも、大杉は婚約者があった保子を
強引に犯して自分のものにしているのだ。
その上、神近市子と伊藤野枝も手に入れている。

一方の野枝も夫の辻がいながらも
大杉と不倫し、後に野枝と姉妹のように育てられた
女性が辻と抱き合っているところをみて
激しく嫉妬をするというエゴ丸出し。


大杉、野枝の間に生まれた女児に対して
世間から悪魔呼ばわりされたことから
自分の子どもに「魔子」という名前をつける。




映画に話を戻すと、、、

畳の上に細川俊之が倒れたところで
襖が次々と倒れていく様子など
演出の仕方も面白かった。


大杉と野枝のストーリーを進めながらも
昭和の永子の話も展開させていく。

永子は20歳の学生で売春行為も
気軽に行う現代の若者。

冒頭で永子に金を渡した男は
ホテルで永子を抱いていた。
全裸の永子と絡み合う中年の男。
その現場に何故かはいってくる
和田(原田大二郎)という若い男。
中年の男と和田は顔見知りなようで
この辺りも?でした。


栄子は別の男から金で体を売ったことをとがめられたり、
永子と和田が芝居を演じているみたいになったりと
いきなりこういう展開になるので
見ていて何がどうなっているのか混乱する。

この頃の若者の話し方がどうだったかわからないが
永子と和田の会話が今見るとうっとうしいくらいで
これが先ほどの画像の中の文章”トーキング”なのだろうか?


今回初めて知った伊井利子という女優の
背伸びをした演技が”トーキング”と相まって
21世紀の今現在見るのがちょっときつい部分もある。



*******************************************
常識的な見方をやめると見えてきた自分に必要な事
*******************************************


存在さえも知らなかった映画を
ふとしたきっかけで見ることになったのだが
当初無料券で借りたとはいえ
「これは借りて失敗だったか?」と思ったのだが
見終わる頃にはこの評価が180度変わっていた。


普段私たち大人は世間や親、教師などから与えられた
常識的な生き方にとらわれている。
一般的に当たり前という思考が脳に蔓延っている。

例えば努力をした人が成功するとか。
でも、世の中一生懸命やっているだけでは
成功できない人が多くいる。

私は常々、思考を活性化させたいと思っている。

この映画はあまりにわからなさすぎて
脳が混乱を起こしていた。
常識的な見方ではわからなかった部分が
思考が破壊されてきたことで見えてきたものがある。


そして、大正と昭和、同時に存在していなかった
人間たちが映画で遭遇する。
この時空を超えた出会いにも共感をもった。


今年に入ってから常識ではありえない
まさに過去と現在と未来が同時に存在しているような
ある出来事が私自身に起こった。

些細な出来事なのだが
いくら頭で考えてもあり得ない出来事なので
何故それが起こりえたのが未だにわからない。

でも、あの時、異次元が同時に存在するんだという
事が実際の経験を通じてわかった。


この映画はまさにこのタイミングで私に必要なものだったのだろう。


脳を混乱させ思考の枠をとっぱらい
時空を超えた世界が同時に存在するんだということを実感する。


まだまだこの辺り感覚的なもので
きちんと言語化できませんが。



自分の器を広げることで
借りて失敗と思った出来事も
借りて正解と思えるように認識が変化した。










「エロス+虐殺」というタイトルに目が奪われるが、
エロスも感じなければ、虐殺された甘粕事件もなかった。


映画としては大杉と野枝の物語を
もっと史実にそってシンプルにやって欲しかったな。



さて、最初に書いた加藤泰監督の作品だが、
「骨までしゃぶる」「男の顔は履歴書」「みな殺しの霊歌」を見たのだが
どれも良かった。


これらの映画を見るきっかけも
リラックスしている時にやってきた。




                         
                                  
        

寅さんの渥美清がゲイボーイ 「企業防衛」キャバレーの経営学入門

category - 昭和の日本映画
2016/ 12/ 05
                 
土曜日は2週連続で神保町シアターへ
『「経営学入門」より ネオン太平記』という
1969年の白黒映画を見てきました。

ネオン太平記

カメラマン姫田眞左久の100回目の誕生日である
11月19日から12月23日までの35日間にわたって
姫田が係った映画が公開されている。

磯田敏夫企業防衛


原作は磯田敏夫の「企業防衛」。

”経営学入門” となっているのは、その前に見たエロ事師が
”人類学入門” となり、原作も設定も違うがそれの姉妹編
『入門シリーズ』第2弾という扱いからこのタイトルがついたようだ。


キャバレーの経営学入門

10月か11月初めにTSUTAYA行った時に
告知チラシをもらい以来この日を楽しみにしてました。

当初このチラシを見た時に「経営学入門」がえげつなさそうで
面白そうだという話になって見に行くことを決めていました。

その後「経営学入門」の前に「人類学入門」があるという事を知り
「人類学入門(エロ事師たち)」と「経営学入門(ネオン太平記)」の
2本を見に行こうということになった。


本作の監督は磯見忠彦で、エロ事師たちの監督であった今村昌平は
磯見忠彦とともに脚本で参加している。
音楽は前作同様に黛敏郎。

出演もエロ事師たちに引き続き小沢昭一が務めている。
共演は西村晃、加藤武、吉村実子、松尾嘉代、北村和夫で
三国連太郎と渥美清が特別出演している豪華版なのだ。

ちなみに吉村実子は石立鉄男の元奥さんだ。



今回も舞台は大阪である。
エロ事師たちから2年後に公開された作品だ。




大阪・千日前のアルサロ「オアシス」の支配人益本利徳(小沢昭一)は
内縁の妻のカツ子(園佳也子)と赤ん坊の娘がいるが入籍しておらず
籍を入れるという話が出ると逃げ続けている。

その益本が店内で店がオープンする前に従業員の女たちを前に
カツを入れるシーンから物語は始まる。


前作のエロ事師たちがねっとりとした質感で描かれていたが
今回はテンポよくとてもエネルギッシュに作られている。


大阪の大きなアルサロということで客を獲得するためにも
女たちが客たちを素早くさばいていく姿が逞しい。


エロ事師たちでは出番が少なかった西村晃だが
益本の友人役で出ており、小沢昭一と西村晃の
掛け合いのようなやりとりが楽しめる。


アルサロは社長はある政治家で表舞台には出てこないが
マネージャーの益本とのアルサロ経営戦略において
度々スクリーンに登場する。


女も男も金がすべてのアルサロ。

ある日未回収の金を回収したままドロンした女たちの
存在が判明した。


マネージャーである益本が彼女たちの元へ向かう。

若いころからふくよかな肉体を持つ春川ますみは
病気だと偽るが益本は金をよこせと迫る。
春川ますみは色仕掛けで逃れようとする。


次の女は松尾嘉代で、彼女は実は店のボーイ島田と
出来ていたのだ。

水商売での従業員同士の恋愛はご法度だ。
早速ふたりともクビにする。


こういう店での女の入れ替えはよくあること。

双子の姉妹がオアシスに雇われた。

しつこくて嫌らしい客(三国連太郎)をうまく扱えなかった
双子の姉に従業員部屋で男の扱いの手ほどきをする益本。

三国連太郎に抱き着かれワンワン泣いていた双子の姉も
益本のおもろい話術つきの手ほどきを受け心が緩んでいく。


オアシスは二号店の話も進んでいた。
二号店は文教地区に近いということで
近所の主婦たちから反発を喰らうのだ。

このことが新聞記事となり肩身の狭い思いをするカツ子。

テレビ番組でオアシス益本と主婦たちの対決の
討論会の様子が映し出される。

この時の司会で「エロ事師たち」の原作の野坂昭如が出演。


私はわからなかったのだが、作家繋がりで言えば
小松左京も桂米朝とともにアルサロに訪れる客として
出演していたようだ。


オープニングの出演者で名前に気づいたのだが顔がわからなかった。


益本の店にはあいかわという地方出身の長身で口下手で
要領の悪いボーイがいた。
益本は偶然あいかわが乗っている電車に乗り合わせ
あいかわがカッターで女性の衣服の尻を切り裂く現場を目撃してしまう。



場所を移して益本はあいかわに詰め寄る。
その後飲み屋にあいかわを連れ出す。
口下手で要領の得ないあいかわだが
孤独感からあのような行為を行ってしまったようだ。

飲んだ日の深夜、あいかわを自宅に連れ込む益本。


狭い家に妻のカツ子と赤ん坊がいて
カツ子の母も遊びに来ていて一時的に宿泊していたにもかかわらず
あいかわはしばらく益本の家に同居することになる。

長身でおどおどしているようにみえたあいかわだが
益本の家では周囲に気を配ることなく
まるで我が家のように住み着いてしまいカツ子の怒りをかう。


そんなカツ子の存在がないかの如くふるまうあいかわ。


アルサロオアシスでは女性ダンサーに
わいせつな行為をさせておりそれがもとで
益本は警察にパクられてしまい豚箱へしばらくぶちこまれる。


この間カツ子は母を再び自宅に住まわせる。


益本は内縁の妻カツ子とカツ子の母ともども
入籍を懇願されるものの縛られる生活が大嫌いで
話をはぐらかす。


入籍するという普通の生活への嫌悪感は
益本の出自が深くかかわっているのだ。


益本がブタ箱にいる間に、カツ子と母が
益本の素性を洗い出す。

益本利徳というのは大阪での仮の名で
本名は違い東京の古本屋の息子だったのだ。


古本屋の息子時代の益本の家庭環境は
堅苦しい家風でありその縛りから逃れるため
大阪へ逃げ出し名前も変えて水商売についたのだ。


カツ子の母は、古書の目利きも出来るんだし
水商売から足を洗ってまっとうな仕事についてほしいと言う。



結局カツ子とは調停で争うことになる。



金にシビアで女を商品としてしか見てないように見えた益本だが
後にちゃっかりあの双子の姉と出来てしまう。


カツ子との関係が壊れてから双子の姉の家に
住み着いてしまう益本。


双子の姉妹は二人で暮らしており、そこへ泊まり込むうちに
今度は双子の妹とも関係をもってしまう。


妹と益本の関係に気がついた姉は狂わんばかりに妹と喧嘩する。
そしてふたりから養女でもいいからと籍を入れることを迫られて
双子の元から逃げ出す益本。


カツ子からも入籍を迫られたうえ、そういうこととは無縁と思っていた
双子からも籍を入れることを懇願された益本は
つくづく安定感を求める女のうざったさに疲れた様子だ。


そんなとき店を辞め消息を絶っていたあいかわが
突然、益本の前に現れる。

あいかわはふたりの男を連れて来ていた。


そして、あいかわが連れてきた男たちから
暴力を振るわれる益本と従業員。
益本たちが動けない間に、あいかわたちは
店の売上金を奪って逃げてしまう。


この不祥事が表ざたとなりオアシスの社長の
政治家のおやじも政界から身を引かざるを得なくなった。


結局あいかわは逮捕された。
あいかわは前科持ちだったのだ。


警察の廊下で益本はあいかわとすれ違いざま
あいかわに殴りかかろうとするがあいかわから
「マネージャーも弱いじゃないか」と言われる。



悪いことは続くもので、カツ子、双子の元にもおれなくなった
益本は店に住まうことになるのだが、店が火事にあってしまうのだ。


疲れ切って電車に乗っていた益本だが
そんな時魔が差し、指の間にカッターを挟み
あいかわのように女の着物の尻を切り裂きたい欲求にかられる。
ギリギリのところで思いとどまる益本。


人間誰しもが持っている弱さや不安定さ。
調子がいい時はいいが、ひとたび悪くなると
これらが顔をだしてきて自分自身との戦いが始まる。


しかし、大阪の地で水商売での成功を目指す益本は
逆境も跳ね返していくべく積極的に攻めていく。



オアシス二号店のオープンも諦めず、
火事となって営業できない一号店だったが
宣伝もかねてなのか益本は大胆なプランを実行に移す。


オアシスのホステスや従業員を引き連れ真昼間に大阪の街を
大行列でマラソンするのだ。

これはゲリラ撮影だったのかな?


爽快感あるラストシーンでした。


そして、益本たちがゲイバーへの店に行くところがあるのだが
ここでゲイボーイ(ゲイのママ?)役で出演していたのが
あの寅さんの渥美清なのだ。

着物と女もののカツラをつけていただけで
特に化粧もしてなかったのだが
大きな四角顔でゴツゴツしたゲイに扮した姿に
館内は大きな笑い声に包まれた。


出演時間は本当に短かったにも関わらず
観客の心を一瞬で掴んでしまった渥美清。

あれで全て持っていかれてしまったかんじでした。



ちょい役の渥美清だが、超脇役でありながらも
存在感の大きさが際立っておりさすがだなと感心させられました。


またゲイといえば加藤武もゲイ役で小指を立てながら出てました。
加藤武とゲイという組み合わせの意外性が笑えました。


あと、名前はわからないがゲイボーイに扮していた長身の俳優さん。

きれいなゲイボーイで、男性としての姿もさぞかし
イケメンなんだろうなと思い誰だか気になっています。



小沢昭一が演じた主人公の益本利徳だが関西弁の大阪人かと思いきや
実は東京の出身だったという設定なのだが
小沢昭一も東京の出身だったんですね。

この映画を見ててっきり関西方面出身の方かと思っていました。



20161203_4.jpg

私が見た「経営学入門」の前には
今村昌平監督で緒形拳主演の「復讐するは我にあり」と



20161203_5.jpg

後には同監督で桃井かおりと泉谷しげるの
「ええじゃないか」がやっていたようです。

桃井かおりといえば、萩原健一と出ていた
「青春の蹉跌」も同館で12/17から始まるようです。

初日の会は上映後に長谷川和彦監督の
トークショーも行われる予定だそうですよ。


20161203_6.jpg

今回はカメラマンの特集でしたが
名画座もいろんな切り口で企画を考えているので面白いですね。