FC2ブログ
2017/04/29
2017/04/28
2017/04/28
展覧会レポート昭和のドラマ昔の土曜ワイド劇場懐かし邦画

2017年04月

        

風刺が効いたシュールな映画「億万長者」

category - 昭和の日本映画
2017/ 04/ 29
                 
先日、「女性に関する十二章」について書きましたが
同じ、市川崑監督の「億万長者」も見てみました。
公開は「女性に関する十二章」と同じく1954年です。

億万長者


「億万長者」という題名から主人公がどう成り上がっていくのか、
どんな夢が見られそうなのか期待しながら見たんですが
かなり風刺の効いたブラック・ユーモア映画だったということからも
タイトルは皮肉的な感じでつけられたようで予想とは真逆の内容でした。



当初は「億万長者」というタイトルに興味を覚え
もとはこちらだけが見たかったのですが、
放送スケジュールを確認している最中
その前に「女性に関する十二章」も放送されることを知り
放送日程から「女性に関する十二章」⇒「億万長者」という流れで2作品を見ました。


2作品とも今回初めてその存在を知ったというもので
あらかじめの知識などはなく軽い気持ちで見てみました。



木村功

税務署員・館香六(木村功)は小心者で要領も悪く出世街道から外れている。
葬儀屋の2階に下宿して一人でつつましやかに暮らしている。
唯一の趣味はパチンコ屋に行く事。
しかも、自分はやらずに人がやるのを眺めているだけというもの。

未納の税金を取立てに行く仕事もやるのだが、押しが弱いのでうまくいかない。



飛行機が墜落して死んでしまった東太賀吉(多々良純)の通夜に取立てに行けば
妻山子(北林谷栄)に借金の利子を払うだけで手一杯で払えないと断られ
贋十二夫婦(信欣三・高橋豊子)の家へ行けば、失業中の身で
長男の門太(岡田英次)は養成所へ通っている身だし
その下はみんな小さな子供ばかりで牛乳配達や
妻が内職しても収入はしれていて取り立てに失敗している。



贋の家の2階には鏡すて(久我美子)という下宿人がいるが
1年半も下宿代をもらっていないという。
館はすてが原爆を作っていると聞き
思わずボロ家を飛び出すと走って逃げてしまう。

館は通りすがりの少年に
「ここは東京からどれくらい離れているかわかるか?」
と、問うと少年は
「沼津市は東京から123.5キロ離れている」と言う。
なんと沼津まで走ってきてしまった・笑(んなわけあるか!)

原爆と聞いて沼津まで走り逃げた館は安心して
その場で新聞紙にくるんであった自分が作った弁当を広げようとする。
直後、雨が降り「放射能の雨かもしれない」と慌てその場を去る。


ある層にとっては、一部の税務署員を接待したりすることで
利益を得る場合がある。
税務署の署長伝三平太(加藤嘉)などは適当に汚職もやって
うまいこと生きているのだが館にはそんなやり方は出来ない。


億万長者

税金の取り立てさえ失敗する館は署長に怒られたりしている。
署長はやり手の署員で娘の麻子(左幸子)と一緒に取り立てに行くよう命ずる。


麻子は署長が母を子を生む機械としか考えてなく
23番目の子供を産むと亡くなってしまったことで
自分は子供なんか絶対に産まないとまくしたてる。


その上、再度取り立てに訪れた贋家で麻子は
長男の門太と意気投合してしまう。


館は麻子にいいところをみせようと
財産の差し押さえをしてみせる。
その後は汚職することもいとわなくなった。

納税者の接待に応じて料亭へ行っては見たものの
融通が利かない館は300円弱しか節税できないといい
大阪弁で押しの強さを聞かせてくる男に恐れをなして
早々に料亭を後にしてしまう。

その後、未亡人山子から1万円握らされてみると
汚職をしてしまったと罪の意識が出てきて
死ぬ決心をしてしまう。


その1万円は原爆を作っていたすてにやってしまう。


結局死ぬことが出来なかった館は
ひょんなきっかけで知り合った
芸者の花熊(山田五十鈴)にそそのかされ
「脱税メモ」なるものを作成する。


館は、麻子から門太の子どもを身ごもってしまったと
相談を受けるが「脱税メモ」作成に気が行っており
それどころではない。




完成した「脱税メモ」を持参して花熊の店へ向かうが
花熊には元愛人で政治家の団海老蔵(伊藤雄之助)という先客があり
部屋の前でふたりの話を立ち聞きしてしまう。

館は正義感に基づいて「脱税メモ」を作ったのだが
花熊はうまいことこれを利用して汚職政治家などに
高く売りつける算段をしていたのだった。
館は花熊に会わずに店を後にする。
放心状態にあった館は道端に座り込み
「脱税メモ」を置き忘れてきてしまうのだ。


その「脱税メモ」が検事総長に拾われてしまったから
さぁ、大変・・・!


館は署長や花熊から攻められるものの
行政監査委員会が行われ
汚職政治家団は記憶にないととぼけてみせ、
署長は泣き落とし作戦に出るのだが
そこへ、脱税メモは自分が書いたと
館が毅然と入室してきた。

しかし、もとが小心者の館、作成した動機を
「汚職日本を救えるのはわたくしだからと信じたからです。
私も汚職をしました。未亡人から1万円受け取ってしまいました。」
と、発言しまわりからの嘲笑を受けると
心臓がドキドキと激しくなりその場に倒れてしまうというオチ。


その後、政治家の団はぼーっと道路を歩いていて
自動車に撥ねられて自殺として処理されてしまい、
差し押さえを受けた贋家も一家心中をしようとする。


門太は死ぬための薬を買いに行く。
残った贋夫婦は子供たちに一張羅を着させて
子供が拾ってきたマグロを食べた。
このマグロは原爆マグロだったのだ。


一家心中するとき館が贋家を訪れていた。
2階のすての部屋で寝かしてもらい、起きてみると
すてが原爆4号が完成したと喜んでいる!


慌てた館が1階へ降りると、門太と鉢合わせ。
門太は薬を調達するためにズボンを売ったので下着姿だった。
門太以外の贋家の人々は館が寝ている間にマグロの
放射能にあたって全員死んでいた。


原爆から逃れるため館と門太は家を飛び出す。
途中まで夢中になって一緒に走ると
それぞれ反対方向へ向かって逃げていった。


--おわり--




原泉

区役所と税務署の区別がつかず孫の出生届を出しに来た原泉。

この時まだ49歳くらいなのにものすごい婆さんぶり。



この映画原泉のような老け役で知られている役者が結構出てきます。


億万長者

未納の税金を徴収するため木村功がある家へ向かう。
どこのアジアのスラム?ってかんじでビックリ。


億万長者

この家は子沢山夫婦が住んでいた。
ただでさえ傾いて壊れそうな家に
小さな子供がわんさか住んでいる。



岡田英二

その家の長男門太は岡田英次。
どっかの養成所で、ニューフェイスというがまだ稼げていない。
他の子どもたちに比べてひとりだけやたら年をくったオジサンな子ども。

おまけに最後には下着姿となり
まるでオムツのようなブリーフ姿で走って逃げていた。



奥はこの家の夫婦。
贋十二役の信欣三と、妻のはん役の高橋豊子。


岡田英次って二枚目なんですけど
役をあまり選ばないっていうか
あれ、こんな役もやっちゃうの?っていう
そんな印象があります。

ここでもオムツブリーフのかっこ悪かったこと。


久我美子

久我美子は華族という名家の出身ながら、ここでは原爆作りに没頭する女鏡すてを演じている。
役でボロを着ていても、やはり育ちの良さは隠せない感じ。


北林谷栄

この人も老け役で有名ですね。
北林谷栄は当時43歳くらい。
子沢山で旦那が借金を残して死んでしまい
木村功が税金を納めるよう催促しにくるのだが
生活するのに手一杯。

なけなしの1万円を握らせなんとかその場をしのごうとする未亡人役だった。




多々良純

そのダンナ役が多々良純。
飛行機事故で早々に死んでしまうので登場シーンは少ない。


山田五十鈴

問題となる「脱税メモ」を館に作らせた芸者の花熊役は山田五十鈴。
花熊も13人子供を抱えていてこのメモを売って一儲けするつもりだったが。





伊藤雄之助

花熊の元愛人で、政治家団海老蔵役の伊藤雄之助。
悪徳政治家と思いきや、最後はあっけなく事故死してしまう。
汚職容疑で小菅刑務所から出所してきた団は
会わない間に勝手に花熊から縁を切られていた。
花熊に未練タラタラで、妻子と別れても
政治家を辞めても一緒になりたいとすがる。





加藤嘉

木村功が勤める税務署の署長伝三平太に加藤嘉。
やはり子沢山で学歴もなく、定年までなんとか
今の位置にしがみついていたいという。


老け役といえば加藤嘉もそうですね。
この時41歳くらいなんですが、そうは見えません。
20代位はどんなだったのでしょうか?



最後のほうで木村功が作成した「脱税メモ」をめぐって
元妻の山田五十鈴と共演していた。

調べるとどうやらこの映画が公開された年に
加藤嘉と山田五十鈴は離婚しているらしい。


映画ではそんなことも感じさせない息の合った演技を披露。
元夫婦だからこそできた阿吽の呼吸か。

この映画、山田五十鈴の芸達者ぶりが光ってましたね。




西村晃

館が初めて納税者の誘いに応じ料亭へ行く。
税金を少しでも安くしてもらおうと
よりによって気弱な税務署員館を接待してしまった
納税者の大阪弁の男に西村晃。




左幸子

税務署長・加藤嘉の娘の麻子は左幸子。
あれだけ子供はいらないといっていたのに
貧乏一家の門太の子どもを宿してしまう。


左幸子は左時枝の姉だったんですね。
今回初めて知りました。


億万長者

木村功らが勤務する税務署内の風景。
資料は全て紙ベース、中央にいる左幸子の手にはそろばんが。
何か調べるといっても、これだけの量があると
探し出すだけで一苦労。

億万長者

署長室にも大量の資料が。

億万長者

交通巡査役で高原駿雄。


内容としては「女性に関する十二章」の方が好みです。
いろんな役者の若いころ(?)を見れたのは良かったけど
コメディにしてるけど、テーマが原爆とか汚職とかですからね。

昔の役者たちの芸が楽しめたけど
事前におおまかなあらすじを知っていたら
敢えて見なかったと思う。


子だくさんの貧乏一家が差し押さえにあい
生活苦から一家心中を決め
知らなかったとはいえ最後の食事に
原爆マグロを食べてしまい全員死んでしまうとか
ブラック・ユーモアがきつすぎて笑えないぜ。


私のようにテーマの暗さが気にならない方は
見てみると楽しめるかと思います。

館の小心ぶりとか笑えるところもありますしね。








            
スポンサーサイト



            
                                  
        

「整形復顔未亡人」(1986年) 整形復顔シリーズ

category - 土曜ワイド劇場
2017/ 04/ 28
                 
なんだか、だんだんサブタイトルのセンスがなくなってきますね。
自分で考えたわけではないけど、書いてて気恥ずかしさが。。。

昔の短くてツボにはいるやつが好きでした。




●「整形復顔未亡人・私は名門夫人になりたい・・・
美しい看護婦の変身願望」  1986年4月5日
脚本: 下飯坂菊馬
音楽: 鏑木基盟
監督: 高橋繁男
制作: 国際放映
出演: 岡江久美子、松尾嘉代、並木史郎、
江藤潤、高木美保、仲谷昇ほか



富豪的場(安井昌二)は落馬事故で妻を亡くし
自分も半身不随で車いす生活となった。
的場は看護婦の玲子(岡江久美子)に好意を持っていて
退院後は専用看護婦として自宅での看護を依頼した。
同僚のナツエ(泉じゅん)も雇い入れることにした。
屋敷には家政婦のよし子(松尾嘉代)がいた。



整形復顔未亡人

玲子には刑事(江藤潤)の恋人がいたが
的場のオファーが魅力的で別れを告げた。
的場はナツエの素行が気に入らずクビにすると
本命の玲子にプロポーズをして結婚をした。
だが、時がたつと玲子の態度がガラッとかわり
本性を現した玲子は男が出来たようで家を出てしまった。



パブで働く明美(高木美保)のもとへ、亡き母の友人だと言うよし子がやって来た。
明美はよし子とは初対面だったが、彼女は明美のことをよく知っていた。
そして、整形手術をして行方不明になった玲子になりすます計画をもちかける。
明美は整形外科医の杉山(並木史郎)と付き合っていた。


整形復顔未亡人

最初は渋った明美だったが、杉山にこのことを話すとノリ気だった。
よし子にきっぱりと断るが、杉山がそれを知ると態度が冷たくなり
よし子に誘われて食事から帰った晩、酔った明美はヤケになり
手術を受けて玲子になることを承諾した。


本物の玲子は駆け落ちではなかった。
よし子と結託した杉山は玲子にうまく近づいて関係をもつと
彼女を殺し林の中に埋めていた。


よし子から実家に帰っていたと聞かされていた玲子が戻り
的場は喜んで家に迎え入れた。
しかし、車いすの的場は2階から降りてくるときに
ブレーキがきかなくなり衝突死を遂げてしまう。


的場が亡くなると杉山が病院建設の資金を玲子にねだってきて
玲子は杉山に一億五千万渡す。

あるアパートの床下から白骨死体が見つかった。


整形復顔未亡人

復顔を依頼し、完成した顔は玲子そっくりだった。
杉山は雑木林からではなく、アパートの床下から見つかったことで
不思議に思い遺棄した場所へいくと確かに死体はあった。



整形復顔未亡人

玲子のもとに電話がかかり、杉山が以前から関係を持っていた看護婦が
玲子になりすましていることを知っていると一億円をゆすってきた。
それを知ったよし子は杉山に始末するようにいう。
杉山は看護婦を車で連れ出し、食事をしていたが
その間によし子がブレーキに細工して、ふたりは事故死した。


雑木林の中からまた白骨死体が発見された。
復顔をしてみると、それはナツエそっくりだった。


刑事は先日玲子にあったときに、赤が嫌いだったのに
赤い服を着ていたことに疑問をもっていて
玲子が別の女のなりすましであることを見破っていた。




整形復顔未亡人

明美はよし子と的場の間に出来た子供だった。
しかし、認知されることもなくよし子は復讐のために
自分も整形をして的場家に家政婦として乗り込んだ。


明美に的場の財産を相続させようと
杉山を利用して整形手術を受けさせて
的場の後妻に収まった玲子とすり替えた。


本当の玲子は、整形をして玲子そっくりになった
ナツエによって殺されてアパートの床下に埋められていた。
すれいかわったナツエは本性を隠さないまま
計画のためにすりよってきた杉山の誘惑にのり関係を持ち
自分も殺されて雑木林に埋められてしまった。










高木美保が若くてビックリ。
こんなだったんですね。


シリーズ最後の二作は松尾嘉代が出演しています。

彼女の事だから、高木美保を使って
財産をひとり占めしようかと計画して
利用するつもりだけなのかと思ってましたが。

だけど、実の娘の顔を整形して
父親の妻とすりかえてしまうというエグさ。



仲谷昇が復顔をする役で少しだけ出演しています。



****** 関連記事 *****



◆ 「復顔・整形美女の復讐」

◆ 「整形復顔の女・私の過去をあばかないで」

◆ 「整形復顔の花嫁」

◆ 「整形花嫁の復讐」

◆ 「整形復顔未亡人」

◆ 「整形復顔女流デザイナー殺人事件」





                         
                                  
        

「授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行」 (1984年)  佐野洋 『汚れた手錠』

category - 土曜ワイド劇場
2017/ 04/ 28
                 
受け持ちの生徒の母親がかつて関係した売春婦だった。
やがて教師は殺人事件に巻き込まれていく。



●「授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行」
1984年4月28日
原作: 佐野洋  『汚れた手錠』  賢い人の愚かな犯罪―自選短篇シリーズ2 (文春文庫 さ 3-7) 収録
脚本: 須川栄三
音楽: 坂田晃一
監督: 野田幸男
制作: 東映
出演: 緒形拳、万田久子、藤田弓子、
伊東四朗、伊藤かずえ、内田朝雄ほか


富士ヶ丘小学校の教師・田坂(緒形拳)の学校に
大学の二年後輩・クガ(船戸順)が教頭として赴任してきた。


田坂はローンが残る一軒家に妻(藤田弓子)と音大を目指す娘・アキ(伊藤かずえ)の
三人で暮らしている。
家へ帰れば妻からいつ教頭になるのかとつつかれる毎日。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



田坂はこの春から一年生を受け持つことになった。
そして入学式の日、田坂は生徒の父兄の中に
かつて関係したことのあるコールガールがいるのを発見し驚いた。



それは大学時代の同期で出版社の部長・白木(伊東四朗)から
参考書用の原稿を頼まれて旅館に缶詰めになっていた時、
気晴らしにと白木が気を利かせて田坂に内緒で用意した女だった。



身上書によるとそのコールガールは沢田由香子(萬田久子)といい
生徒の名は英作と書かれている。
事情があり法律上の父親はいないが、英作には父親は交通事故で死んだと伝えているらしい。



その後「お話したいことがあるので、午後三時にこの間の旅館で会いたい」という
由香子からの手紙を英作から渡された。
面倒なことになるのを恐れた田坂は断りの電話をいれようとするが由香子は不在で
仕方なく重い足取りで旅館へと向かう。



授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



由香子の話したいことというのは英作の事だった。
初登校の日に田坂の呼びかけに英作が答えなかったのは、
幼い時に中耳炎をこじらせて耳が聞こえにくいのと、友達がいないために
緊張しすぎていたからだという。



田坂は話題がてっきり自分との男女関係に及ぶかと不安を抱いていたが
英作の事で取り越し苦労だったとホッと一安心する。


由香子はさらに英作を産むまでのいきさつまでも赤裸々に田坂に話す。
そうしているうちにいつしか由香子は田坂に体を預け
一度関係を持っていた二人は互に求め会うように関係を結んでしまう。



授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



ある日曜日、スーパーを経営する義父(内田朝雄)が教師を辞めて
会社を手伝ってくれるように頼みに来た。
そこへ学校から英作が登校してきたと電話がかかり
教師を辞める気はない田坂は良い口実が出来たとばかりに学校へ向かった。



日曜日にもかかわらず由香子は不在で、田坂は仕方なく英作を自宅に連れて帰る。
夜になりようやく由香子が英作を迎えに田坂の家へやってきた。
彼女はどこかやつれた表情で道で転んだときに顔を傷つけてしまったといい
そそくさと英作をアパートに連れて帰った。



翌朝、田坂が学校へ行くと同僚の教師(小林稔侍)がクガが心中未遂したことを知らされた。


クガは前に勤めていた学校時代に付き合っていたバーのホステスと手を切ろうとして
別れ話が拗れた末の無理心中だった。


校長(下元勉)はこのことを伏せようとしたが警察が来たことで事件は明るみとなってしまう。



クガの見舞いを終えた田坂は白木を呼び出すと
あまり大事にならないようにしてほしいと協力を依頼した。
おそらく今回の事でクガは教頭を辞めざるを得ないだろう。
白木は由香子にはヒモがいることから身辺に気を付けるよう田坂に忠告した。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行





学校へ戻った田坂は英作が無断欠席していることを知らされ自宅に電話を掛けた。
由香子はそのことについて後日話すというがどうやらそばに人がいる様子が感じられる。
心配した田坂がアパート前まで行くと、公園のブランコに英作がいた。


彼の話しでは今、部屋には由香子の客がいるらしい。
それ以上何も出来ないまま田坂は引き返すしかなかった。


午前の授業が終わり下校する生徒たちを校門まで
見送った田坂のところへ由香子が訪ねて
この間話せなかったことを聞いてほしいという。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行




田坂はそのまま由香子を誰もいない教室に招き入れると
由香子は現職刑事の愛人がいて稼ぎを巻き上げられていることを打ち明けた。


そして、「今日の午後一時から三時まで教室で田坂と面談していたことにしてほしい」と頼まれる。
由香子はその間に報酬の良い仕事があるが、その金を刑事のヒモに取られたくないのだ。
英作のために少しでも金を残してやりたいという母としての切実な願いに
田坂は二つ返事でアリバイ証言をすることを引き受ける。



そして、人目に触れないよう由香子を学校から出て行かせると
一時から父兄との面談があると同僚に知らせて、約束の時間を喫茶店で時間を潰した。
その間、由香子が見知らぬ男に抱かれている映像が脳裏に浮かび田坂を苦しめる。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



約束の時間が終了する少し前の午後二時半頃、
喫茶店を出た田坂は通りでバイクに乗った暴走族風の男が
老婆(原泉)をなぎ倒すところに遭遇した。


田坂は急いで駆け寄り老婆を助けている時、英作の姿を見かけた。
由香子は英作には学校へ行くから外で遊んでいなさいと伝えていたらしい。


田坂は学校へ戻り三時半からの職員会議に出席した。
終わったときには疲れがどっと出て田坂はしばらく自分の机に突っ伏してしまった。


そこへ、田坂に面会者がいると用務員が伝えてきた。
行ってみると校庭には人相の悪い富士ヶ丘署の森(磯部勉)と名乗る男がいた。
とっさに由香子が言っていたヒモだと思った田坂は頼まれた通りに
今日の一時から三時まで教室で由香子と面談していたと証言する。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行




森はかなりしつこく由香子の事を聞いてくる。
なんでも殺人事件が絡んでいるかららしい。
本当は由香子の稼ぎが目当てで、殺人事件が嘘であると思っている田坂は
由香子を救うためにうまく芝居を打った。



ところが、翌日田坂は由香子の部屋で本当に男が殺されたという新聞記事を見て
驚きを隠せなかった。
しかも死んだのは片岡真二という名で昨日会った森とは全くの別人だ。



マスコミで報道されたことで事件を知った教師たちも騒ぎ始めた。
田坂はそこでも由香子の偽のアリバイを証言し彼女を守る。



田坂は白木だけには由香子に頼まれた経緯を話しており
共犯だととばっちりを食う恐れがある田坂に
本当のことを警察に言った方がいいとアドバイスする。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行




だが、田坂にはまだ由香子が殺したのか信じられない。
それをハッキリさせるために由香子に会って確かめることにした。



田坂は初めてアパートで由香子とあった。
その姿はコールガールとは思えない位質素でどこにでもいる普通の母の姿だった。



由香子はこれまでのことを今度こそ正直に田坂に話した。


ヒモの片岡は薬の常用者で、金を巻き上げるだけでなく由香子に激しい暴力も振るった。
彼女を助けるために片岡に向かってきた英作にまで殴りかかってくる。
由香子は英作を守るためにもこの男ときっぱりと別れなければいけないと覚悟を決めた。



これで、彼女が片岡を殺したことは明らかとなった。
由香子母子のこれまでの不幸な生活を考えると田坂には彼女を責められない。
しかも、由香子は山形の佐々木(三谷昇)という年配の男性との結婚を考えているという。
田坂は由香子の新たな人生を壊すつもりはなくそのままアパートを引き上げた。



授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



その後も、度々森がやってきて田坂だけでなく他の教師にも事情を聞き始める。
そんな時、事件があった日に田坂が助けた老婆が訪ねてきた。
運悪く田坂のそばには森がいる。


田坂が由香子と会っていると証言した時間に老婆を助けていたことがバレれば
由香子のアリバイが崩れ殺人者にされてしまう。


田坂はとっさにお礼を言う老婆に人違いだという。
ただならぬ様子を感じた森は、老婆からあの時の出来事を洗いざらい聞き出した。
しかも、老婆は校庭で遊んでいた英作の姿も見つけ自分の言っていることが正しいと話す。


田坂がどうしてもあの時のことを認めないと知った老婆は
英作にあの時会ったことを覚えているかどうかを訪ねた。
そこは子供だ、覚えていればうなづいてしまうだろう。



授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



老婆も森も英作に詰め寄って彼の口からイエスの答えが出るのを待った。
なす術もない田坂は、英作に鋭い視線を送り続ける。



すると、英作は「知らない」と老婆の質問を否定し森も引き下がるしかなかった…。



一か月後、英作は学校を欠席しがちで事件は進展が見られないままだった。


田坂はなぜ英作があの時否定したのだろうかと考え続けていた。
もしかしたら、英作はドアの鍵穴から由香子が片岡を殺す現場を目撃して
子供なりに母の窮地を救おうとしたのかもしれない。



そんな中、田坂のところへ由香子から電話が入った。



授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行




彼女は佐々木との結婚を決め山形へ行くため英作を転校させる予定だと告げる。
田坂はようやく彼女が幸せになると知り自分の心も踊った。


ところが、電話を切り英作、佐々木と列車に乗り込もうとした由香子の元へ
森がやってきて警察への同行を求めた。



事件があった日、老婆を襲った男が警察に捕まり容疑を晴らすために
通りで老婆を襲いその時に田坂と英作が一緒になっていたことを証言したのだ。
男は小学校時代田坂の教え子だった。



最後に思いがけない形で由香子のアリバイは崩されてしまった。


授業参観の女・まじめ教師のたった一度の非行



その後、何も知らない田坂は爽やかな気分で学校から帰ろうとする。
そろそろ本気で教頭になる試験に力を入れてみようと考え始めていた。


そこへ対面から森がこちらに向かってやってくると田坂に同行を求めた…。




賢い人の愚かな犯罪―自選短篇シリーズ2 (文春文庫 さ 3-7)