2017/08/14
展覧会レポート昭和のドラマ昔の土曜ワイド劇場懐かし邦画

2017年08月14日

        

「透明な季節・僕が愛した帝国軍人の妻」(1982年) 江戸川乱歩賞 梶龍雄の青春ミステリー

category - 土曜ワイド劇場
2017/ 08/ 14
                 
「戻り川心中」に続き、土曜ワイド劇場の五周年記念作品
第2弾として終戦記念日前日に放送された作品。




●「透明な季節・僕が愛した帝国軍人の妻
”バンザイ!あのポケゴリが死んだ”」  1982年8月14日
原作: 梶龍雄  『透明な季節
脚本: 柴英三郎
音楽: 一柳慧
監督: 藤田敏八
制作: 東映
出演: 中野良子、泉谷しげる、田村高広、
中村嘉葎雄、芦川誠、高瀬春奈ほか



太平洋戦争も敗色が濃くなったころ、東京にある中学校に新任の配属将校がやって来た。

終戦直前の暗い時代を背景に描く青春ミステリー。


透明な季節


昭和二十年初夏の東京、根津神社の境内で顕文館中学の
配属将校諸田少尉(泉谷しげる)の射殺死体が発見された。
所轄署の時川刑事(田村高広)たちは殺人事件として捜査を始めた。



残忍なほどの猛訓練をする諸田の死を、生徒たちは内心喜んだ。

英語教師の北上(中村嘉葎雄)に連れられ
通夜に行った中学四年生の高志(芦川誠)は
そこで美しい未亡人の薫(中野良子)に会い驚いた。

透明な季節


薫はその年の春に高志が根津神社で偶然出会い
ほのかな恋心を覚えた女性だったのだ。


諸田が撃たれた銃は三八式歩兵銃で
憲兵の疑いは軍国主義に批判的だった
北上に向けられた。


高志も事件直後に現場付近で北上を見かけ
疑ったが、薫から神社の境内で北上と会っていたと告げられた。












太平洋戦争も末期の昭和十九年三月、東京北部にある根津神社境内の池の畔で
『ポケゴリ』というあだ名で呼ばれていた顕文館中学校の配属将校
諸田利平少尉が銃殺死体となって発見された。


諸田は150cmあるかないかくらいの小男だったが
横幅はおそろしくあり短足でガニ股だった。
日に焼けた顔にある眉は太く、鼻が肥えていて斜視であり
その様子は滑稽なようでいて、不気味でもあった。


ポケットモンキー略してポケモンというあだ名は
当時の中学でよく使われていたようだ。
生徒たちは諸田をそれをもじったポケットゴリラ・・
ポケゴリと呼ぶようになった。


ポケゴリの猛訓練は暴力と人並み外れた
陰湿さに満ちていた。

少しでも気に入らないと罵声やビンタが飛んでくるし
号令に従って歩くと、次の号令をかけず
生徒たちは壁にぶつかったり、
罰で居残りを命じたまま学校から帰ってしまったりと
権力を利用してやりたい放題だった。


母子家庭の芦川高志は成績優秀で級長をやっていて
そんな時は生徒から職員室に行って
ポケゴリにもう帰っていいか聞きに行ってくれと言われたり、
ポケゴリの目を盗んでサボろうとするのに
協力せざるを得なかったたりと
やっかいなことも多かった。


ポケゴリは人を監視し、陥し入れ、制裁を加えるということが天才的に優秀だった。
生徒たちが秘かに交わす会話も
ポケゴリは不思議とキャッチしていた。


この頃の江戸川乱歩の小説はワイ本並の扱いで
それをカバンに入れていた生徒も見事に摘発された。

高志がポケゴリは変質者だと言うと
神経科の開業医の息子田中はキチガイだと言った。
彼の父のところにもてんかんらしい患者が来たが
見た目は普通だったと話していた。


ポケゴリの死因は右額に打ち込まれた銃弾の一発だった。
三八式歩兵銃の空薬莢も一つ発見されていて
死亡推定時間は午後の六時から七時までの間とみられた。

高志はその頃同級生の堀の家へ行こうとして
犯行現場付近を通り自動車の逆ピストンのような音を聞き
アオセビと呼ばれている英語教師の北上のような姿を見かけた。
高志は学校でうっかりそのことを話してしまった。


凶器は職員室にある銃器庫にあった堀という生徒のもので
銃器庫には鍵がかけられていて持ち出せる人間は限られている。


学校の小使い室には古見という爺さんがいて
ポケゴリを崇拝していて、生前この学校にはスパイがいると言っていて
そいつに殺されたのではないかといってきた。
高志はこのスパイが北上である可能性があると感じた。
そう考えるとあの日見た男も北上で、逆ピストンと思ったのも銃声だったのかもしれない。


ポケゴリの死は朝礼で簡単な説明で生徒に発表され
黙とうをして終わった。


クラスで不良の古屋はポケゴリの死体を見ていて、警察からも身元の確認をさせられていた。
その古屋がポケゴリの家を教えてやるといい、高志がポケゴリの妻と会ったことがあると教えた。

以前、古屋の家に遊びに行ったとき、古屋の姉範子と一緒にいた女性がそうだというのだ。
その女性は高志が夏目漱石の「三四郎」の中の登場人物
”美禰子”を理想の女性像としていたことから、秘かに美禰子と呼んでいた憧れの人だった。
ポケゴリと夫婦と知り不快感が沸き上がったが、二人の男女関係をどこかで否定していた。


古屋はポケゴリがB(=Brother同性愛者)だといい、
二人は夫婦関係を一度も持ったことがない処女妻らしいといった。


古屋とはともに小説が好きで、隠れて本を交換しあった。
古屋が貸してくれる本は、自分のそれと趣が異なり
男女の恋愛や外国映画を扱った雑誌で興味をそそられたのだ。




こうして高志は憧れの美禰子がポケゴリの妻薫であることを知り
古屋の家へ行くことで範子の友人である薫と話すきっかけが出来た。


高志が年上の女性と何を話したらいいか困っていると
薫が高志に小説が好きなんですってねと話すきっかけを作ってくれた。

範子は年下の高志に威圧的だった。
しばらく本の話をした後に、高志がポケゴリが殺された頃
現場付近を通りかかったことを聞いてきた。
当惑した高志が口ごもっていると、
範子は薫もそのことを知りたがっているので教えてと言ってきた。
この勢いに押され、逆ピストンのような音を聞いたことと
北上らしい姿を見かけたことを話してしまう。
他に気が付いたことがあったら教えてねと言われ
本を貸すというのがこのことを聞き出す口実だったことに気が付いた。



事件を担当している時川刑事が高志のもとへ
事件が発生したころ現場近くを通っていて
何か気づいたことはないかと聞いてきた。
最初のうちは何もしらないとはぐらかしていたが
何度もしつこく高志のもとを訪れ
少しずつ高志が知っていることを聞き出していく。
高志は小使い室で余計なおしゃべりをしたことを後悔した。


時川の息子も同じ学校に通っているのだが
親が刑事だというのに息子は問題児だった。


その一方、高志と薫の仲はどんどん深まっていった。
はじめは古屋の家で会うだけだったが
その後は薫の家にも遊びに行くようになっていた。
未亡人の薫が年下で薫に憧れている高志と二人きりで
会うことを範子はそれとなく牽制してきた。


そしてあの日、犯行現場近くで見かけた男は
北上であることがわかった。
時川が薫や北上にも話を聞きに行き
北上は事件が起きた頃、根津神社で薫と会っていたということが
薫の口から高志に知らされた。
北上の方も、あの時高志の姿を認めていたらしい。


北上は自分が宿直を抜け出したことは言わないでほしいと
小使い室の古見に頼んでいてはじめは口外しなかったが
その後北上がスパイで諸田がそれを知ったので
口封じに殺したのだろうと思いそれを話したことで
北上の行動がばれてしまった。


薫は諸田との結婚がうまくいかなくて、その寂しさから
三か月ほど前からお友達のような形で
諸田の帰宅が遅くなる水曜日に
根津神社で五、六回ほど会っていた。
薫に北上を紹介したのも範子だ。


あの日も、ふたりでいると銃声のような音がして嫌な感じがするから
すぐに帰ろうとその場で分かれたということだった。
警察は北上のことを疑っているようだった。

だが、北上はその後に徴用になりマレーの捕虜収容所の通訳となり
学校を去っていった。


薫から聞かれ高志は範子から二人きりで会うなと言われたことを話し
薫を美禰子と呼んでいたことも告白した。
未亡人となった薫は実家に帰ることになり高志は落胆するが
引っ越しの手伝いに来ていた範子の目を盗み
高志に実家の住所を書いた紙をズボンのポケットに入れてくれた。
実家は井の頭公園の近くで、場所がわからず苦心したが
ついに探し出すことが出来、範子の目を気にすることなく会えるようになった。


時代は敗戦の色が濃くなってきて、環境にも大きな変化が出てきていた。

その頃、諸田が殺された日、高志が遊びに行った友人堀が結核で死んだ。
ポケゴリ殺しも未解決のままだったが、堀にその容疑がかかった。
故意にではなく誤って殺害したという可能性が出てきたのだ---。









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梶龍雄の江戸川乱歩賞受賞作品「透明な季節」のドラマ化です。
ブログではちょうど1か月前の7月14日にも乱歩賞の
「蝶たちは今・・・」を書いたばかりですが
土ワイは乱歩賞の作品を結構ドラマ化していますね。


こちらは推理小説というよりも、芦川高志の青春日記といった趣でした。

確かに冒頭はポケゴリが殺されたところからスタートで
その犯人探しに見えるんですが、全体的な印象は
戦時下、中学生の高志が年上の薫に抱く愛情を
心情豊に書き綴っている青春小説だと思いました。




透明な季節

諸田少尉役の泉谷しげるは過酷な訓練を強いる鬼将校。
生徒たちからは「ポケゴリ」と恐れられている存在で
その異常な暴力性が表現されている。

少尉の命令で連日猛特訓が行われるのだが
交換ビンタの場面では藤田敏八監督から
「本気で殴れ!」と気合を入れられていた。

だが、殴り慣れない若い俳優はもうひとつ迫力不足。
そこで泉谷しげるが本気でパチンと殴る。
生徒役の俳優はひたすらがまんして殴られ続けるという
ふるえる若手俳優のエピソードがあります。


泉谷しげるは土曜ワイド劇場で1979年6月30日に放送された
「吉展ちゃん事件」で初主演をし、見てはいないのだが
いつか記事を書こうと思いながらも月日がたち
「透明な季節」の方を先に書いちゃうことになりました。

「吉展ちゃん事件」は映画の撮影と同じようなくらいに
ガッツリと作り上げられたようで以前からすごく気になっていました。



さて、「透明な季節」の方は、神社で薫と会っていて
記事では書いてませんがその後不審な行動もあり
北上に容疑がかかりますが、北上が学校から消え
堀が病死すると事件当日の堀の行動から容疑がかかる。


高志が聞いた逆ピストンの音は、他に聞いたという証言があり
その中の教師のひとりも絡んできたりと広がりすぎてしまうので
字幅の関係でいくつか割愛しています。


薫も実家に帰ったあとは軍人の妻という後ろ盾が無くなり
父も頼りにならないことから一家の暮らしは困窮していきます。
平和な時代ではないし、ましてや敗色が濃くなっています。
空襲で高志の友人一家も死亡したりと
はじめこそこっそり食物を薫の家に分けてやっていた高志も
薫だけに構える状況ではありません。
無力な少年、ましてや時代背景を考えれば悲しい結末が待っているのは当然ですね。
どういう終わり方だったのかは書きませんが。




その後高志は友部という友人が出来ます。
ポケゴリは高志には暴力を振るわずそのことは他の生徒たちも気づいてましたが
Bであるポケゴリがもうひとり特別扱いしていたのが友部です。


しかし友部が優遇されていたのは、高志と同じ理由ではありませんでした。
友部の兄にポケゴリは世話になっていたため、へんな扱いはできなかったんですね。

その友部の兄からポケゴリの死の真相を知ることになります。
意外な結末だが、それも・・・。

というかんじです。


暗い時代背景の中でも、最後の締めくくりが清涼感のあるものであり
美しい終わり方の中にも、力強さを感じさせてくれました。




私はドラマを見た後に、小説を読んだのですが
単発作品の映像化では長編小説そのままを忠実に
ストーリーにのせるのは時間的に無理がありますが
本では高志少年の日常や恋愛感情をじっくりと綴っています。

中学生の男子が、年上の人妻に憧れをもち
心の中で思い続けるだけではなく
その女性と実際に会い話すことが出来た。
未亡人となっていた女は、年下の自分に
本当に頼れるのはあなたなのかもしれないといい
私たち恋人よねとまで言う。


そんな二人を同じ年頃の弟をもつ範子は
危ういものを感じ介入してこようとする。
一見、ウザイ姉さん気取りの女だが
優等生とはいえ、難しい年頃の高志を
傷つくことがないように助言してやっている。


薫は高志に私たちあまり年がかわらないじゃない
というがこの年代はひとつの年の差が大きいもの。


だから高志がしっかりした子だなと思いました。
書いてないけど小説の最後の方で。




また、ポケゴリの訓練の様子や、人物像なども
細かく表現されています。

戦中の話しだけど、高志がイキイキと描かれているのがいい。


あとは、ポケゴリ事件の意外な結末。
ここもポケゴリという人物を妥協なく作り上げていったのも良かった。


最後の片仮名手紙は読むのに辟易してしまったが。



            
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