2016/07/24

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遊女の逞しさを描く 骨までしゃぶる 加藤泰 1966年

category - ライフスタイル
2016/ 07/ 24
                 
昨日は近代フィルムセンターへ加藤泰監督の
「骨までしゃぶる」 1966年 (東映京都)を見に行ってきました。

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加藤泰の生誕100年ということで計44作品が9月の上旬まで上映されている。


加藤泰というと今回のラインナップにも入っている
江戸川乱歩の「陰獣」(1977年松竹)を今年DVDレンタルして見たことがあるくらい。


陰獣(出演:香山美子・あおい輝彦)は大昔まだ『土曜ワイド劇場』がいまのようなゆるいドラマではなかった頃の
1979年7月21日に<劇場大作映画テレビ初公開①>とされ放送されており
見たことはないけど、何故か気になっていたからだ。

当時の土曜ワイドはトラック野郎など映画も放送することがあった。



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「骨までしゃぶる」  桜町弘子と夏八木勲


主人公のお絹を演じるのは桜町弘子。
名前は見たような記憶があるくらいでよくわかりません。


「骨までしゃぶる」の舞台は明治33年(=1900年)の白黒映画。


以下はおおまかなあらすじです。

俳優名や役名などが詳しくわからず
書き方に統一性がないため読みにくいかもしれません。




貧しい家に生まれたお絹(桜町弘子)の家にある男が訪れた。


男はお絹の父親のもとを訪ねお絹を買う交渉をする。

父親は借金がありすでに長女も売り渡していた。
次女お絹の下にも弟妹がおり
お絹を売ることで金を工面しようとしたのだ。


この買いに来た男が役とは思えないくらい
その下品さといやらしさが見事に役とマッチしていた。

さらにお絹の父親も枯れ果ててしなびてて
一言もセリフを発しないにも関わらず存在感は抜群である。


男はお絹にも「姉さんの時とは違い3年の年季だし
嫁入りする資金も十分稼いで出てくることができる」と
嘘を並べ立てお絹を約100円で買うことに成功する。


その後男は「松風楼」という遊女屋へお絹を売る。

この松風楼の主人が三島雅夫なのだが
以前ホームドラマチャンネルで放送された
木下恵介の「3人家族」(出演:竹脇無我と栗原小巻)で
長男:竹脇と次男:あおい輝彦のお父さん役で知っていた俳優。


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男やもめで人が良く、母親がいない3人家族で
エリート社員の長男竹脇が父親のような役割だったので、
父親は学生の次男あおいに対し母親のようなおおらかさで接しており
”いいお父さん”のイメージがあったのだ。


が、しかし今回は遊女屋の主人ということでかなりの人でなしな役だった。


またお絹を買う際体を調べる遊女屋の使用人(若いときは遊女)が
お歯黒の菅井きん!


「3人家族」ではやもめのお父さん三島雅夫に菅井きんが恋心を抱き
勝手に押しかけてきてくる家政婦の役だったのだが
こんなところでも三島雅夫&菅井きんのペアが見られるとは!


話を「骨までしゃぶる」に戻して・・・



お絹は松風楼に売られた初日三島主人とその妻から
うなぎをふるまってもらい、うまいものが食えない
両親と弟妹を思い涙を流しながす。


夫婦はその様子に「これからはしっかりと働くんだよ」と声を掛けます。

この辺りではまだ情けのある夫婦だと思っていたのだが
ところがどっこい、お絹に与えたきれいな部屋も化粧台も
そのうなぎの代金さえもお絹からしっかりと徴収するしたたか者。


生娘のお絹は早速耳の後ろに大きなコブのある初老の醜男に買われる。

以後、お絹が処女だったことをいいことに
男をしってからも生娘を売り物に稼ぎまくる。


しかし、最後にお絹がこれを客にばらしてしまい
生娘役はジ・エンドになった(笑)


松風楼では定期的に女たちが性病等のチェックのため
病院で定期検査を受けている。

この辺り廓の日常もしっかりと描いておりました。


さて、松風楼では主人夫婦は「お父さん、お母さん」と呼ばれ
遊女の先輩たちのことは「お姉さん」とその呼び方を教わります。

そんな折、遊郭に救世軍がビラを巻きに現れた。
乱闘が終わった後、顔立ちがきれいな20代半ばのお姉さんが
自分の部屋にお絹を招き入れ、以前救世軍が巻いたビラを見せ
廓で働く女の実情を教えてくれる。


3年の年季で前借を返し、貯金も出来ると思っていたお絹は
お姉さんから廓の仕組みを聞かされ、働いても決して前借は減らず
それどころかさらに借金は増え足抜け出来ない現実を知ることになる。


このお姉さんは後に廓を逃げ出すことに成功する。


ある日、いいところの出のお姉さん(久保菜穂子)が
お母さんに自分の前借がどうなっているのか帳簿を見せて欲しいと要求します。


お母さんの迫力に他のお姉さんたちは帳簿を見せることを要求しませんが
お絹は帳簿を見せることをしっかりと要望しました。

お絹は借金が増えてることに抗議をするものの
松風楼にいる限りはこの借金から逃れることはできません。


そんなある日松風楼に若い男(夏八木勲)が現れお絹がその相手をすることになりました。


若い男は職人(大工)で廓は初めて。

ベロンベロンに酔って先輩に連れてこられた大工の夏八木は
そのままお絹の存在にも気づかず大いびきをかいて寝てしまう。

お絹に起こされても床を一緒にすることを拒絶し
お絹は松風楼で初めて一晩ぐっすりと眠ることが出来た。


朝になりそのことを大工夏八木に話すお絹。
結局その後ふたりは結ばれる。


大工夏八木は女が初めてだったのだ。

そして、大工夏八木はお絹の客となるというか
ふたりは付き合う関係となる。


既に男性経験があったお絹も
女を知らなかった大工夏八木はもちろん
お互いが初恋の相手だったのだろう。

大工夏八木は本気でお絹に惚れてしまい
「結婚したい」と迫ります。


大工夏八木は自分の貯金と親方に渡さなければいけない金で
お絹を見受けしようとするが、お絹はこれを拒否します。




しかし、廓から足抜けする気持ちがなくなったわけではありません。


逃げ出したい気持ちは他のお姉さんたちも同じ。

年若いお姉さんのひとりがある日松風楼からの
逃亡を試みますが、この辺りにシビアになっていた
松風楼の男衆につかまり捕まえられたお姉さんは
縄で縛られ吊るしあげられたうえ、お父さんから
激しい折檻を受けることになるのです。


遊女たちに逃げ出そうとしたものはどんな罰が待っているのか
この事を徹底的にわからせるために、仲間が拷問されている様子を
遊女たちを前に並べて見せつけます。


彼女たちに大きな恐怖心を植え付け、絶対服従をさせようとした。


目の前で繰り広げられるむごたらしい光景から顔を背けたくなる遊女たちを
そうはさせまいと強引に見ることを強要する。


そんな中ふいに器量が良くない年増の遊女(石井富子)が
「腹が痛えぇ」とわめきだす。


この場から逃げ出したいがための仮病ではなく
石井遊女は客から陰部を消毒だと言われタバコの火で焼かれており
病院へ連れていくと3週間体を売れないことが判明した。


これに怒ったお父さんとお母さんは
石井姉さんを食事抜きで物置小屋に閉じ込めてしまう。


お絹は、石井姉さんを気遣い夜にぎりを差し入れに行く。


石井姉さんは握り飯を貪るように食らう。


石井姉さんの故郷の話をして束の間楽しんでいたが
見知らぬ男たちと物置小屋を訪れたお母さんに見つかってしまう。


客が取れなくなった女にはもう用はない。


お母さんはそばにいた見知らぬ外国人男に
嫌がって暴れまくる石井姉さんを強引に売り払ってしまう。


お絹にとって辛い出来事は続くもので
心の支えにもなっていた久保菜穂子姉さんにも不幸が訪れる。


久保姉さんは、もともと夫と子供がいた両家の出身だったのだが
家計のために自分が身売りするから離縁してくれと自ら申し出て
今の仕事をするようになった。


久保姉さんがお絹に自らの事情を話した後
松風楼に女のすさまじい悲鳴が聞こえた。


なんと久保姉さんは絞殺死体となっていたのだ。


犯人はすぐに捕まった。

男は久保ねえさんの愛想の悪さに怒りが湧き
その場で殺してしまったのだ。


お絹と大工夏八木とのロマンスも知っていて
廓を抜け出すことを勧めていた久保姉さんを失い
お絹は犯人の男に殴りかかる。


しかし、犯人の男もまた辛い事情があった。


貧しい男で、半年間女を買うことだけを支えに働いてきた。


汗水たらして得た金を握りしめようやく買った女は
愛想が悪いだけでなく体も触らせてくれなかった。


姉さんを殺された悔しさでいっぱいだったお絹だが
この事情を知り貧しさが生む悲劇にやるせない気持ちになってしまった。

窓から路地を眺めるとある男の作業風景が目に入った。


これを使ってここから逃げよう。

お絹は松風楼から逃げ出す決心を固める。


大工夏八木と救世軍にも協力をお願いすることにした。



いつものように性病検査の定期検診へ行く道中
窓から見た男の作業風景が目の前に見えてきた。


お絹は男が作業している最中その振り下ろされてくる
大きな木材のようなものの下に自らの腕を差し込み
故意に怪我をする。


病院で入院生活を送りいよいよ退院当日
計画は実行される。


菅井きんや男衆とともに病室を後にしようとしたその時
大工夏八木と救世軍の男が病院へ乗り込み
お絹を救いだそうとする。


しかし、何度も女に逃げられようとした松風楼側も
必死の形相でこれを阻止しようとする。


通りで繰り広げられるお絹側と松風楼側の大乱闘。


絶対にお絹を逃がすまいとお絹をむしり取ろうとする松風楼側と
どんなことをしてでも絶対に逃げ切って見せるという執念の元
そこから決死の覚悟で逃げようとするお絹たちの闘い。


最終的にはお絹は逃げ切ることが出来たのだ。


その後救世軍の保護のもと、警察の一室で刑事とともに
お絹を連れ戻そうとするお父さんと向き合う。



法律により遊女でも自主廃業が出来ることを主張するが
お父さんもこれまでの借金をカタに足抜けを許さない。


お父さんがお絹とふたりきりで話し合うことを要求して
不本意ながら応じざるを得ないお絹。


二人っきりになると甘い言葉でお絹を丸め込もうとするお父さん。


お絹の着物の胸元へ強引に20銭を入れる。


お父さんの声掛けで部屋の外で待機していた警察官のオヤジと
救世軍の男が部屋に入ってくる。


すっかりお絹を籠絡したと思っていたお父さんだが、
お絹はお父さんの要求には応えず、しっかりと自主廃業を主張する。


その後はお父さんの反論や行動をしっかりと
法律を盾に撥ね退けるお絹。


最初のわけもわからず遊女にされたお絹からは想像もできない位
逞しいひとりの自立した女へと成長した。


結局、この場でどうにもできないとわかったお父さんは
しぶしぶ警察を後にする。



人生最大の大芝居で、ほっとした安ど感からその場に倒れこむお絹。


警察のオヤジも


「いやぁ、これまで自主廃業したおなごはおったが
あんたみたいなのは初めてじゃ」


と、呆れるやら感心するやらだった。


お絹をすくったのは、最初に足抜けした
あの20代半ばの美しい姉さんがくれた
救世軍のビラだったのだ。


お絹はこのビラを毎日読んで勉強し
法律を使いこなし自らが自由になれるようにしたのだった。


その後、救世軍に保護されていたお絹のもとに大工夏八木がやってくる。


救世軍の男はいま二人がここを出たらどうなるかわからない。
もう少し一緒になるのを待てと諭すが
若い二人の気持ちは揺るがない。


救世軍の男もふたりを信じて認め
明るい表情でお絹と大工夏八木を見送る。





と、ハッピーエンドで終了でした。




あらすじだけみるとものすごく重くて暗い映画に思えるかもしれませんが
随所にユーモアを混ぜてあるのでところどころ笑いを誘うし
最後の脱出劇なんて見てるこっちが熱くなってしまうくらいで
お絹が逃げ切ったときには爽快感があった。



主役の桜町弘子も初めてこの映画で認識する形となったが
(これまでも何かの映画やドラマで見たことはあったのかもしれないが)
写真からわかる通り非常に透明感のある女優さんで
華やかさがあるわけではないし、わかりやすい美人というわけでもないが
時折見せる表情がとても魅力的で明るく
重苦しくなるストーリーでも見るものに暗さを引きずらせない。



主人公が自分の人生をきちんと考えるきっかけのひとつもとなった
大工の恋人を演じた夏八木勲。


クレジットでは「夏八木勲(新人)」となっており若かったです。
だけど、顔の濃さはすごかった。



この物語を改めて書いてみると
しょせんフィクション。


体を売る商売の女がまっとうな男と
所帯を持って幸せになれるはずがない


っていうのが大方の見方だと思うが
私はそうは思わない。



お絹は3年の期限を諦めて
親や弟妹のために体を売る生活を
割り切っていた。


しかし、借金が増えてそれが足かせとなり
身を売る商売から抜け出せないように
巧妙に考えられた廓の仕組みを知り。


自らの人生を受け身ではなく能動的に考えるように変化した。


さらに自分を本気で好きになってくれた男の存在があった。


女にとって惚れた男の存在はどんなに大きいものか。


お絹は真剣に自分に向き合った。


お絹は惚れた男と一緒に暮らし、まっとうな人生を歩むと決めた。


私は思うのだが、人間理想の未来は
考えついたというだけで実現可能なものなのだと。


現状がどんな状況でも、理想の未来を設定したなら
現状と理想にギャップがあっても現実化には問題にならないのだと思う。



お絹は理想の将来を決めた。
現在の日々がどうであれ、それに振り回されることなく
ただただ理想の未来、そうなることだけに思考を働かせたのだと思う。



その時点で、体を売るお絹ではなく
大工の女房お絹になりきっていたのだろう。



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今週の火曜日からは企画もので「角川映画の40年」をやるようだ。


加藤泰の映画はまだまだ見たいものがあるので
時間を作って企画展の方も見れるといいな。


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