男たちの下半身の欲求を満たす仕事 野坂昭如処女作の映画 『エロ事師たち』

昨日は神保町シアターで『「エロ事師たち」より 人類学入門』
という1966年の白黒映画を見てきました。


野坂昭如 エロ事師


神保町シアターは「がめつい奴」以来、約1年ぶりかな。

今村昌平




これは「今村昌平を支えた職人魂生誕100年
キャメラマン・姫田眞左久の仕事」という特集の中の一作品。

姫田眞左久


監督は今村昌平、主演は小沢昭一で坂本スミ子、佐川啓子、田中春男と
若かりし日の近藤正臣が共演している。
エキストラなどをやっていたものの、近藤正臣はこの映画が
デビュー作品ということでオープニングのクレジットにも(新人)と記されていた。


小沢昭一というともっと後の姿しかしらないし
バイプレイヤーというイメージしかなかったのだが
珍しい主演作である。


また後に日活ロマンポルノで知られる田中登監督の名前もありました。

原作は野坂昭如の『エロ事師たち』という長編小説。
これは野坂昭如の処女作だということだ。

小説の舞台はどうやら東京オリンピックあたりだったようで
昭和の大阪の底辺で生活する登場人物たちの人間臭が
スクリーンを超えてダイレクトに伝わってきた。


関西弁で映画も作られていた。
エロに関西弁、バカバカしさ、嫌らしさも愛嬌がある感じで伝わってくる。


小説の方も高い評価を受けていたようだが
映画も1966年に公開され『キネマ旬報』主演男優賞などを受賞している。


スブやんの愛称を持つ緒方(小沢昭一)は、エロフィルムやエロ写真を作って売ったり、
女を欲しがる男に女の調達をしたり、アパートの住人の性行為を盗聴して
テープにして売ったりと、男たちの欲望を満たすことを生業としていた。


スブやんには伴的(田中春男)という相棒と、若い男がひとりいて
3人でこれらの非合法なこれらの商売をしている。

スブやんは理髪店の二階に下宿していて、理髪店を営む未亡人で
スブやんより3歳年上の松田春(坂本スミ子)と内縁関係になる。

春には幸一(近藤正臣)という浪人生の息子と
恵子(佐川啓子)という中学生の娘がいる。

床屋を営む子持ちの未亡人というとなんだかしっかり者の
母ちゃんと思えるが春は違っていて、どこか男にだらしなく
まだ自分の性欲を抑えきれなくて持て余しており
男にすがって生きていく弱い女なのだ。


年頃の息子と娘がいるが、亭主が亡くなって1年頃に
金の工面をスブやんにしてやるところ
ふとしたはずみでスブやんと関係を持ってしまうのである。


スブやんより年長のお春は半ばスブやんを誘うように
最初の関係を持つ。
こんな環境で育ってきた幸一と恵子もしたたかで
エロにまみれている。


冒頭スブやんと春がセックスをおっぱじめようとしたところ
階段から誰かが下りてくる気配を感じて慌てて寝巻を整える春。


降りてきたのは幸一で、ちっちゃい子供でもないのに
母の寝床に潜り込み甘えるのだ。
幸一は後にも悪事がバレそうになったとき
腹が痛いと仮病を使い、春にお腹をさすってもらう。
実の母と息子でありながらも近親相姦をイメージさせるような場面が出てくる。

幸一はなにかあると春に甘えるような声色を使い
自分の欲求を通そうとするしたたかさがある。


中学生の娘恵子も複雑な家庭環境の影響から
グレており不良中学生と夜遊びをしている。
幼いころスブやんに「お母ちゃんをいじめてたろ?」と叫び
道路に飛び出し車にはねられて足にけがをおってしまう。
おそらく”いじめていた”というのは、スブやんと春の
夜の営みを目撃してしまったのだと思う。


スブやんはこの傷をみるたび事故の事を思い出し
恵子に対して負い目を感じてしまう。


非合法な商売を細々と行うスブやんは
ある時警察に踏み込まれ家族の前で逮捕されてしまう。
エロ事師で生計を立てていたことがバレてしまうのだ。


スブやんは寺の住職(菅井一郎)の息子だが
これがクソ坊主で女房なきあと後妻(園佳也子)を迎える。
そして、度々スブやんに金をせびる。
どうやらエロっぽい後妻はその後若いスブやんと肉体関係を結んだようだ。
スブやんはこれがトラウマになっている。


この「エロ事師」としての仕事も面白い。

冒頭、屋外でエロフィルムの撮影を行うのだが
女優は素人で商売女、それとやらせようとする男は
オヤジで無理やり学生服と制帽を着せるのだ。
違和感ありあり。


お次は恵子のセーラー服を拝借し若い女に着せ
中年・・・、いや初老の男に犯させようとする。
しかし、若い女は知恵遅れで全く演技もどきすらできず
初老の男が棒キャンディーを与えた時だけ反応し
ガリガリキャンディーをかみ砕いて食べる。

実は若い女は初老の男の娘だった。
頭が弱い娘を犯すというよりは、父としてはかわいがっているつもりなのだそうだ。
全く狂っている。

この初老の男が殿山泰司なのだからいかがわしさ
嫌らしさがハンパない。


そして、年配の身なりのしっかりした男(中村鴈治郎)から
一度でいいから処女を抱きたいと懇願され
女をあっせんしている女将(ミヤコ蝶々)のところへいく。

どこの男の子ともしれない赤ん坊を生んだばかりの
女にセーラー服を着せ、ニセの診断書を差し出し
処女に仕立て上げて男に提供する。

女将を演じるミヤコ蝶々のテンポのいい演技が愉快だ。


ある夜、スブやんは同窓会の席に恵子を同伴していく。
若い女房をもらったと勘違いされるスブやんだが
帰り道恵子とキスをしてしまう。
何事もなかったように帰宅するスブやんと恵子。


春は一度スブやんの子供を宿しているが
すでに大きな二人の子供がいることや
世間体を気にして堕胎していた。
ややこが欲しかったなというスブやん。


この後春は病気で入院してしまう。
そして、その間にグレて不良仲間と遊び歩く恵子を
しかりつけているうちにとうとうスブやんは
恵子とやってしまうのだ。

行為が終わったあと帰宅した幸一。
スブやんの衣服の乱れとガラスの向こうの恵子の様子から
すぐに何が起きたのかを理解した。

それは、入院先の春も同じだ。
離れていても内縁の夫の正体はわかっている春。
見舞いに訪れた恵子の様子から出来事を察知し
春の言葉に恵子は全てを打ち明ける。

直後スブやんが面会に来た。
会いたくない恵子はカーテンの後ろに隠れる。
春はスブやんに恵子はスブやんが好きなようだ
自分と別れて恵子が大人になったら結婚して欲しいという。
既にスブやんには、250万相当の土地と家を渡すと伝えていた。

恵子と結婚して幸一の面倒を見て欲しいと言う春。
スブやんは春を愛してると取り合わなかったが。


他の女にやるくらいならスブやんを恵子の夫にしようという
春なりの思いがあったのかと思ったが
春は内心嫉妬していた。

それは、恵子の写真でわかる。
春は恵子の写真の両目に針を何本も突き刺していた。
春の中の女の情が伺われる演出だ。


春が不在となった理髪店。
スブやんのエロ事師仲間の若い男が
以前撮影所でカツラを整える仕事をやっていたから
そこで床屋をやるという。

理髪師免許もない若い男が春の代わりに床屋をやり始めた。

エロ仕事をするためにも金が欲しいスブやん。
しかし、金が欲しいのは幸一も同じで
以前から受験のためと偽って本当は女と一緒に暮らすため
春にたびたび独立資金をせがんでいた。

ある日幸一はスブやんがいない間に家の物を
片っ端から持ち去ってしまう。
春の元も訪れスブやん頼まれたと嘘を言い預金通帳も持っていった。

なんだかドタバタした展開の中、春の病状も重くなっていく。

春は度々幻想を見て卑猥な歌を大声で歌うようになり
医者(北村和夫)から苦情を言われる。

恵子もこの頃悪事を働きとうとう警察のごやっかいになってしまう。
この時の警部が西村晃で、警察に訪れた恵子の担任が菅井きんだった。
出番は少ないのだがふたりの演技がみせてくれる。


そうこうしているうち春の病状はどんどん悪化していき
ついに病院でスブやんのいる前で卑猥な歌を大声で歌い
病院の策から飛び出さんばかりに暴れる春。
寝巻の前を大きくはだけながら通りに向かって狂いまくる春。


結局春は入院中再びスブやんの子を宿したことがわかったものの
死んでしまった。

スブやんはエロ事師に必要な機材などを相方だった伴的に
持ち去られてしまう。

あれほどエロかったスブやんもだんだん性欲が枯れカラカラになっていく。
その後乱交パーティーを主催するものの儲けが少ない。
自身のカラカラも治らない。
そして、悟った。
ダッチワイフを作ろうと。


時は流れ、幸一は独立し恵子も美容院を営むようになっていた。
スブやんは家の前のドブ川に浮かぶ汚らしい小船の中で
エロ事師仲間の若い男とダッチワイフ作りに励んでいた。

ダッチワイフは春がモデルのようだ。
幸一がある男(内田朝雄)を連れてきた。
男はダッチワイフを買いたいといい100万渡したが
スブやんはそれを撥ね退けた。

ドブ川に浮かぶ万札と内田朝雄。


ある夜、スブやんの汚い小船は止めてあった縄がほどけ
海をゆらゆらと流れていく。

大きな船が横切る側でただ流れに身を任せて
流れていくスブやんの小船。

エロ家業に身を置き、内縁の妻の娘を犯したりしたものの
スブやんが本当に愛したのは春だけだったのかもしれない。


この映画で春を演じた坂本スミ子。
もっと年を食った坂本スミ子しか知らなかったので
ショートカットの細身のおばさんというイメージだったのだが
この映画ではロングヘアを結い(性行為をするときは乱れていたが)
中年女特有の緩やかな体型をしていて
クレジットがなかったら坂本スミ子だとはわからなかった。

この人の演技を初めてちゃんと意識してみましたが
この役は当時の坂本スミ子にとってハマリ役でしたね。
夫に先立たれた男に弱い子持ちの女を見事に演じていました。

またスブやんの相方だった伴的をやった田中春男の卑猥さもいいかんじ。


そして、カメラのアングルも面白かった。


春は夫を亡くした日にフナが生まれたのだが
そのフナを夫の生まれ変わりだと信じている。
スブやんが春にエロい事をしようとすると
フナが水槽で暴れるのだ。

そのフナがいる水槽越しに描かれる場面が
なんだか幻想的だったし
柵越しに撮影されるシーンや
床屋でスブやんの髭を春が剃るシーンは
天井から撮影されていた。


またエロ事師の仕事や日常を描いているのだが
終盤の乱交場面はじめ
スブやんと春のベッドシーンでもバストは出てなかったのに
春が亡くなる前に病院で錯乱状態に陥ったときには
前がはだけて胸が丸見えになっている。


エロ事師は面白かったので昨日寝る前にネットで調べてみたら
こんなサイトを発見した。

http://www.cinemanest.com/imamura/flabo1/zinruigaku_1.html

「今村昌平ワールド」という名前で、当時のスタッフが
エロ事師の全てを語っている。



野坂昭如の原作でもスブやんは実在のモデルがあったようで
映画化するにあたりそのモデルを尾行しているのだ。

映画の中でスブやんは内縁の妻春の娘恵子と肉体関係を結ぶのだが
実の親子ではないとはいえ、籍は入っていなくても義理の父と娘。
ましてや恵子は中学生だ。

これについても本当にあったことかどうか検証されている。


今は個人情報保護法なんてものがあるが
当時はプライバシー保護なんてされていない時代。

勝手に他人の戸籍謄本を取ったり、尾行したりして
他人のプライベートにズケズケと侵入している。

当人にとってはたまらないだろうが、不謹慎にも
面白くて一気に読んでしまった。


なるほど、撮影中いろんな困難もあり
最後坂本スミ子がオッパイをさらしたのも
この辺の事情があったのかな?


野坂昭如の原作をもとにしながらも
映画版だけのストーリーも加えられているみたいで
そこも含めとても楽しめた映画です。


それに加えて脇役の面々もまぶしかった。
エロ事師の仕事の場面のちょっとしたところで
ウルトラマンシリーズでおなじみの小林昭二も出ていたり
先に書いたミヤコ蝶々、西村晃をはじめ結構豪華なのだ。


若いころの近藤正臣もカッコよかったし。
この人若いころは色気を感じさせてくれる俳優さんでしたね。

そして、随所に大写しで登場するフナ。

2時間8分という長丁場でしたが退屈することなく見ることが出来ました。





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