「名探偵雅楽再び登場!」(1980年) 戸板康二の名探偵雅楽シリーズのドラマ化 

戸板康二の中村雅楽シリーズドラマ化の第2弾です。


※出演者名などは全て1980年放送当時のものです。

●「名探偵雅楽再び登場!お染宙吊り殺人事件
つづいて奈落殺人事件」  1980年1月5日
原作: 戸板康二  『奈落殺人事件』
脚本: 吉田剛
音楽: 木下忠司
監督: 斎藤武市
制作: 松竹
出演: 中村勘三郎、近藤正臣、淡島千景、
山城新伍、中村勘九郎、早乙女愛、入川保則、
中村雀右衛門、古手川祐子、八木孝子ほか


名探偵雅楽再び登場!


歌舞伎の名門芳沢露紅(中村雀右衛門)一座の
紫紅(中村小山三)が、舞台でお染の吹き替えを
演じている最中に細いひもが首にかかり
そのまま天井へつるし上げられ死亡した。

お染宙吊り殺人事件つづいて奈落殺人事件


警視庁の江川刑事(山城新伍)は、事故ではなく
殺人として捜査をする。



舞台の上には紫紅と相手役の久松を演じていた
嵐芙蓉(中村勘九郎)のふたりしかいなかった。


芙蓉は小道具や衣装を隠されたりと嫌がらせをされていて、
それが紫紅だと疑っていた。
そのことでふたりは度々口論しており仲が悪かった。



芙蓉は露紅の娘今日子(古手川祐子)と交際していたが
露紅は家柄の違いを理由に反対していた。



露紅には今日子の他に養子の  *紅雀(入川保則)がいる。
芙蓉に芳沢家に入られると立場が悪くなり
芙蓉をうとましく思っていた。

芙蓉と今日子の交際に関しては他にも
マネージャー田村(穂積隆信)をはじめ
芳沢一座の弟子たちも芙蓉に自分たちの
上に立たれることに拒否反応を示していた。


動機があることから、容疑は芙蓉にかかってしまう。
露紅は芙蓉に吹き替えから外すと言い渡す。


ショックを受けた芙蓉のもとへ、かつて勢いで1度だけ関係した
銀座のクラブのママ山瀬たみ子(八木孝子)が結婚を迫って来た。
たみ子は芙蓉と紫紅が争っていたのを見ていて
芙蓉に脅しをかけてきた。

たみ子の店に紅雀と田村が訪れた
3人は芙蓉と今日子の仲を裂きたいという思いが一致していた。


歌舞伎楽屋

芙蓉の友人でもある、東都新聞の演劇担当・竹野伸夫(近藤正臣)は、
芙蓉を救いたいと名優で推理マニアの中村雅楽(中村勘三郎)楽屋を訪れ
この事件の謎解きを依頼する。


その時、舞台を終えた紅雀が奈落に来ると
紅雀の前に舞台から下りていた芙蓉がしゃがんでいた。
そばには、たみ子の刺殺死体が横たわっていた。
芙蓉は「自分はやっていない」と言うが・・・


この騒動に近くの理髪店から、理容師の深川イネ(淡島千景)や
散髪していた田村が店を飛び出して現場にやってきた。



奈落へ抜けられる理髪店にいたのはイネと田村、
田村の髪を切っていた理髪師の林だ。
田村と林は鏡越しに映るテレビの野球中継を見ており
店主のイネはテレビの下にある戸棚の整理をしていて
1回だけ奈落とは反対側にあるロビーへ出ただけだ。

奈落へは他の出入り口からも
人の出入りはなく密室状態だった。
従って芙蓉と紅雀しか奈落へ行っていない。


江川が雅楽と竹野と馴染みの料理店で
飲んでいて事件の状況を二人に説明する。
たみ子は細い刃物のようなもので刺し殺されていて
凶器はみつかっていないが犯人は左利きで
あることがわかった。



芙蓉の楽屋から彫刻刀が1本紛失していること
芙蓉が左利きということからも
たみ子殺しの容疑も動機があり
状況証拠がある芙蓉にかかってしまう。



露紅は芙蓉に今日子との交際をやめろといい
続けるなら芝居の世界から葬るという。

芙蓉の舞台にはいつも紫の着物を着た
サングラスの女が芝居見物に訪れていて
芙蓉の活躍ぶりを陰から見守っていた。

その女はイネで芙蓉はイネが芸者時代に
嵐の家へ手放した息子だったのだ。
そのやりとりを紅雀がみていて田村に知らせる。


淡島千景

芙蓉はイネに芝居をやめるという。
それを阻止したいイネは自宅に軟禁されている
今日子に電話をして芙蓉に芝居を止めないようにさせてくれと頼む。


中村勘九郎



今日子は早速家を抜け出して、後でかけつけた竹野も交え
芙蓉と3人、もう一度事件を洗いなおしてみる。

芳沢一座は踊りも経理面も亡くなった紫紅と
紅雀と、田村の3人が全て仕切っていた。
露紅は今日子が結婚したら芳沢家を継がせると宣言していた。

竹野は紫紅たちが経理面で不正を働いていたのではないかと言った。
芙蓉は以前、田村が鎌倉山の別荘を売ろうとしていた
電話を偶然聞いてしまい田村に盗み聞きがバレていた。
芙蓉と今日子は事務所に戻って帳簿を見直すことにした。




一方、雅楽は馴染みの料理店の娘(早乙女愛)と一緒に
劇場に行き、現場検証をする。

紫紅が舞台上で芙蓉を殺そうとして誤って
自分の首に紐をかけてしまい死んだのではないかと推理する。
雅楽の動きを察知していた紅雀と田村により
二人はエレベーターに閉じ込められてしまうが
江川たちが駆けつけ救出する。

劇場から戻って来た紅雀と田村は
事務所で芙蓉たちが帳簿を持ち出そうとしているところへ出くわし
芙蓉と今日子を車で別荘へ連れ出し殺そうとする。

芙蓉と今日子が心中して、
その恨みからイネが露紅を殺したと見せかけて
最後はイネも殺し紅雀と田村で芳沢家を乗っ取ろうとたくらむ。


雅楽は江川と竹野に紫紅事件の謎解きを話す。
竹野は紫紅たちの不正の話しをして
芙蓉たちが証拠を押さえようとしていることを報告する。


翌日、芙蓉と今日子が駆け落ちしたと騒ぎになった。
雅楽、竹野、江川は別荘に拉致されたのではないかと
話し、車で別荘へ向かい芙蓉たちを殺そうとした
田村を発見するが、田村は逃亡する際に
崖から転落してしまいうわごとで
「子供たちは命拾いをした」といっていたことから
紅雀が何かたくらんでいるとわかり引き返す。

江川から知らせを受けた警察は紅雀を
逮捕しようとしたところ階段から転げ舌をかむ。



戻る途中、雅楽はバスがくるりと回転するのを見て
たみ子殺しのトリックを見破る。
イネはロビーではなく反対の奈落へ行ったのだ。

証言した田村と理髪師の林はテレビの野球中継を
鏡越しに見ていた。

しかし、夢中になっていたふたりは
あるとき田村が座っていた椅子をくるりと回し
直接テレビを見ていたのだ。

その時にイネが奈落へ向かった。
鏡越しと勘違いしていたが、そうではなかった。
雅楽はイネが以前芸者をしている時から知っており
芙蓉がイネの息子であると推理する。


イネは奈落へ行き、そこにいたたみ子を
見つけ芙蓉から手を引いてほしいと懇願したが
逆になじられ手にしていた理髪用はさみで
たみ子を刺殺した。
イネもまた息子の芙蓉と同じく左利きだった。


そして雅楽は、イネが露紅が交際に反対したのが原因で
芙蓉と今日子が駆け落ちして心中しようとしていると
考えその恨みから露紅を殺そうとするんじゃないかと
思いそれを阻止しようとする。



舞台から戻って来た露紅をイネが殺そうとしたところ
雅楽が間に合いこれをとめる。
しかし、イネははさみで自分をついて死んでしまう。

露紅は芙蓉を迎え入れた。
芙蓉はその晩の舞台に立った。



*紅雀(こうじゃく)は漢字が不明のため
便宜上、紅雀と書いています。



中村勘三郎

中村雅楽(がらく)を演じた中村屋、中村勘三郎(十七代目)と

中村雀右衛門

芳沢露紅を演じた京屋、中村雀右衛門(四代目)は
ともに人間国宝。
(雀右衛門は放送後、1991年に認定)


雀右衛門は放送当時59歳だが、すごく若く見える。
これはドラマの中でも山城新伍が触れてましたね。



芙蓉を演じた中村勘九郎(五代目)は勘三郎の息子だ。
現代劇は父よりもうまかった。



ちなみに雅楽第1弾「車引殺人事件」(1979.5.5放送)では
勘三郎の娘で、勘九郎の姉の波乃久里子が出演している。


勘三郎の弟子の中村小山三(二代目)は
紫紅役で舞台上ですぐ殺されてしまうので
出演時間は短い。


余談ですが、雀右衛門、小山三のふたりはすごく長生きしましたね。


さて、最初の紫紅は自ら誤って死んでしまったものでしたが
次のたみ子殺しはイネが犯人だったのだが
これについては真犯人がイネだとすぐにわかる。

ドラマのはじめに竹野が劇場へやってくると
争う声が聞こえ芙蓉と紫紅が口論している。
それを、心配そうに遠くから見守るイネ。
淡島千景が単なる理髪店のおかみで
終わるわけではないだろうし
表情からもなんらかの深いかかわりがあることが推察される。

芙蓉の舞台を頻繁に見に来る紫の着物のサングラスの女。
これは淡島千景のイネだとモロというわかりやすさ。

たみ子殺しも凶器は細い刃物で見つからない。
これも理髪店のイネなら商売道具のはさみがあるし
すぐに隠せるポジションにいる。


そういう意味では見る人によってはつまらないかもしれません。
しかし、単なる推理ドラマという視点だけで
見ていない私には十分楽しめる内容でした。




今回はふたつの殺人だが、原作は『奈落殺人事件』
という短編小説のみ。

紫紅殺しの”お染宙吊り殺人”は
ドラマのオリジナルみたいですね。

『奈落殺人事件』はのちに短編集として
『團十郎切腹事件』というタイトルの
<中村雅楽探偵全集1>に収録されており、
ドラマ化された『車引殺人事件』も入っています。




團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉 (創元推理文庫)


戸板康二の原作も興味があったので
この機会に読んでみました。


20ページほどの短い話なので
ドラマのような複雑なものにはなってません。

芙蓉とイネ、たみ子の関係もドラマとは微妙に違う。

ドラマでも芝居の説明は竹野の近藤正臣がやっていたが
小説でも私、竹野の語りで綴られている。

もとが歌舞伎評論家で随筆家の戸板康二が書いているので
より詳しく歌舞伎の周辺事情が書かれいるのがいい。

「奈落」についても、劇場の地下室で、舞台や客席の真下に
当たる部分をそういうと説明されている。

怪談狂言でよく幽霊が「ともに奈落につれいかん」という
地獄の底というような意味合いをもっているようだ。

観客の目が届かない奈落は、設備費用節減のためか
表舞台と違って装飾がされておらず
コンクリートむき出しの殺風景さにもふれられている。

歌舞伎 奈落

配管もむき出しで、表舞台と
裏舞台のコントラストがわかりやすい。


その他の歌舞伎界の事情にも筆が及んでいて
歌舞伎を深く知らない人にも楽しめる内容だ。


こちらの探偵集には18話のお話が収録されています。


短編とはいえ、さすがに18話あると食傷気味です。
殺人事件だけではなく、ちょっとした出来事の謎解きもある。


興味深かったのは歌舞伎評論家で随筆家の
戸板康二を推理小説の世界にひっぱってきた
江戸川乱歩の話でした。



乱歩がなぜ戸板に推理小説を書かせてみようと思ったのか
また各話のどの辺りに著者の特性が出ているのかなど
ふんふんと納得しながら読ませてもらった。



その後に続く、戸板の作品ノートでは
デビュー作「車引殺人事件」について
なぜ「車引」が選ばれたのかが書かれている。


舞台で行われる殺人ということで、すさまじい形相をさせたいと
殺害される役者を青い隈どりの藤原時平という悪人を演じさせることにした。
そのため「車引」になったということでした。


登場人物の設定やモデルについての話しもありました。

探偵・中村雅楽の雅楽は、中村歌右衛門の歌を酒井雅楽頭の”雅楽”に代えて使ったそうで
もともとシリーズ化するつもりはなかったので、気軽に決めたそうだ。


ワトソン役の竹野記者については同級生の姓を借り
江川刑事については映画俳優の江川宇礼雄の姓を借りた。


江川宇礼雄は徳川夢声が探偵局長役のNHKの「私だけが知っている」で
探偵役をしており、戸板自身ものちにこの番組のレギュラーになった。


江川宇礼雄は円谷プロダクションの”ウルトラシリーズ第1弾”の
「ウルトラQ」で一の谷博士を演じていたのを覚えています。
容姿が独特だったのが印象的でした。


徳川夢声
徳川夢声も映画「女性に関する十二章」で出演していたので
「私だけが知っている」という探偵ドラマの映像も
見たことがないけどイメージがつくかんじだ。




また「尊像紛失事件」(團十郎切腹事件に収録)のテレビドラマ化で
当時はまだ録画ではなく、役者がナマで演じており
演技の途中でハプニングがあり筋書きがメチャクチャになって
混乱してしまったというエピソードも書かれていた。



「立女形失踪事件」(團十郎切腹事件に収録)に出てくる
”浜木綿(はまゆう)”という芸名の役者が出てくるが
これは戸板の考えた好きな名前であったが
その後”浜木綿子(はま ゆうこ)”が出てきたことによって
ふりがなをふらないで済むようになったとか。


その他、昭和56年に書かれた「團十郎切腹事件」の後記では
こんなことが書かれていた。

「車引殺人事件」でデビューした、雅楽、竹野、江川も
初登場から24年が経過しているが”役者に年齢なし”として
24年過ぎても登場人物たちは年をとっていない。

土ワイの「雅楽シリーズ」が松竹で3本制作され
竹野役が近藤正臣になっていて、
こちらも若返ったようで嬉しかったと感想を述べている。


小説本編以外でも楽しめる内容でした。



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