2017/06/23
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「松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人」  (1979年)  森のくまさん

category - 土曜ワイド劇場
2017/ 06/ 23
                 
松本清張の「種族同盟」のドラマ化。
原作では杉山千鶴子が被害者で番頭が被告となりますが
ドラマでは千鶴子が被告となります。
番頭は西部警察のロクさんでおなじみの武藤章生ですが
冒頭に少し出てくるだけで終わります。

後味の悪さと、女の狂気を感じるドラマ。
詳しいことはあらすじの後で。



●「松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人」  1979年5月26日
原作: 松本清張 『種族同盟』  火と汐 (文春文庫) 収録
脚本: 吉田剛
音楽: 津島利章
監督: 井上昭
制作: 松竹
出演: 小川真由美、高橋幸治、金沢碧、
下条アトム、加藤嘉、朝加真由美、中村竹弥、
川合伸旺、近藤準、小島三児ほか



杉山千鶴子(小川真由美)は旅館から旅館を渡り歩く仲居をしている。
「河鹿荘」で働いていた時に、客で議員秘書の阿部(川合伸旺)に乱暴された。
千鶴子は親切心からよく釣れる釣り場を案内してやろうと思ったところを襲われたのだ。
ことを済ませた阿部は金を渡してこの場を収めようとしたが
千鶴子がそれを撥ね退けたために、貧乏な仲居が生意気な態度をとったと
憤慨した阿部は千鶴子をなぐりつけ、もみ合ううちに阿部が下の川へ転落死してしまう。


雨に打たれながら千鶴子が途方にくれていると1台のトラックがやって来た。
道路は工事中で車の進みはゆるやかだった。
とっさに千鶴子はトラックの荷台につかまって河鹿荘まで戻って来た。

帰った千鶴子は風呂で体を洗い清め、濡れた着物も洗濯をした。
遅く帰ってきて勝手な行動をとったことで番頭(武藤章生)にとがめられる。



阿部の死体はすぐに発見され、容疑者として千鶴子が取り調べを受けた。
警察は阿部の体に千鶴子と同じ血液型が付着していることからも
千鶴子を厳しく取り調べる。
千鶴子は「やってません。」と頑として容疑を認めなかった。



千鶴子には矢野武(高橋幸治)が国選弁護人としてついた。
矢野は助手の岡橋由基子(金沢碧)と二人で事務所をやっているが
事務所だけは広くて立派なものの、業績は冴えなくて
飲食店のツケも払えないありさまだった。


矢野には評価を上げて若宮弁護士(中村竹弥)のひとり娘朋子(朝加真由美)と結婚するという野望があった。
千鶴子の事件は、非力で状況証拠もある千鶴子を警察が一方的に取り調べたもので
矢野には現場と河鹿荘の距離から千鶴子の犯行に無理があるのではないかという勝算があった。
マスコミも注目している事件だ、ダメでもともと、うまくいけば一気に名をあげられる。

松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人


矢野が千鶴子の父精吉(加藤嘉)を同行して面会に訪れた。
警察の厳しい取り調べを受けていた千鶴子は態度が硬直化していたが
千鶴子のやっていませんというひと言を信じると言ってくれた矢野に心を開き始めた。


公判が始まると矢野は案の定、犯行現場と河鹿荘が
2キロ離れていて着物を着ていた千鶴子が
わずか10分間で帰れるわけがないと主張し
実際に千鶴子を使って実験を始めた。


そして、千鶴子は無罪を勝ち取ったのだ。

圧倒的に不利な事件を無罪にしたことで
矢野の評価と知名度は一気に上がった。

矢野は千鶴子にこれでどこかへ泊りなさいと金を渡し
アパートも探してあげるし、無罪が確定するまでは
自分の事務所で働くといいと言った。


松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人

タクシーを降りた千鶴子はこれまで受けたことがない好意に
矢野に心を奪われしまう。
父は矢野にもメリットがあったと話すが
千鶴子はすっかり矢野のとりこで父の言葉も受け入れなかった。



矢野は由基子と肉体関係があり、朋子に野心を燃やす矢野が面白くない。
もともとこの事件をすすめたのも、海外の似たような事例をおしえてやったのも由基子だった。
ただ乗りされて、ハイさよならでは済ませないつもりだった。
由基子は仕事で繋がりのある君川行雄(下条アトム)と組んで
矢野のスキャンダルになるような証拠を手に入れようとする。



松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人

控訴申し立ての期限の日、精吉がやってきて
千鶴子に警察の捜査ミスや、
阿部の私生活をこれ以上探られたくないということからも
このまま控訴しないという見方が強まっていることを知らせる。
事務所へ帰るとマスコミが多く詰めかけていて
案の定、千鶴子の無罪は確定した。
矢野は千鶴子に一事不再理の存在を教える。


その夜、千鶴子は矢野と二人でアパートにいた。
貧乏な千鶴子は何もお礼が出来ないと手料理を振る舞い
体でお礼を支払うという。
その様子をアパートの外にいた由基子と君川が写真におさめる。

由基子は千鶴子に朋子の存在を教えたが
千鶴子はとくにショックを受ける様子もなかった。


若宮が友人と矢野と会っていた。
友人は矢野に女関係について尋ねると矢野は女はいますと答える。
へんに取り繕うことなく素直に女関係をしゃべる矢野に若宮と友人は感心する。
だが、若宮は朋子を悲しませることは絶対に許さないから
結婚前に女関係は清算しろと言った。
そのための金は若宮が用意することになった。
朋子が矢野を好きなために若宮は危険な男だと知りながらも認めざるを得ない。


矢野は早速由基子に手切れ金700万で手を打とうとするが
由基子はそんなわずかな金よりも事務所を大きくして
分け前を等分しようと提案してきた。
矢野はこれをつっぱねた。
由基子は千鶴子にも朋子のことを話し
矢野が婚約したことを知っているという。


矢野は千鶴子のアパートへ行った。
由基子から聞いたことを話すと
千鶴子は矢野との身分違いを心得ていて
結婚の邪魔をするつもりはないといい
最後にデートをしてくれと頼む。

矢野と千鶴子は1日何もかも忘れて
これまで見せたことがないはしゃぎぶりでデートを楽しんだ。


由基子が事務所へ行くと、業者が新しい机を運び入れてきた。
今日から司法修習生を二人入れて、由基子はクビにし
千鶴子とともに業務を行うのだと宣言した。
由基子は千鶴子に矢野が自分たちを利用しているので
仕返しに手を組まないかというが空振りに終わる。


由基子と君川は千鶴子のアパートに矢野がいた
現場写真とネガを持っていき矢野を脅すが
千鶴子がそれを燃やしてしまった。
由基子は若宮に矢野が依頼人と特別な仲であると電話をする。


しかし、ふたりは結婚へと着々と準備が進み
矢野と朋子と若宮でレストランで食事をとり
結婚指輪を買いに行った。
この様子を千鶴子がべったりとつけまわして
矢野は内心怒りがおさまらなかった。




矢野は結婚を邪魔しないといいながらも、未だに自分のことを愛し続け
まとわりついてくる千鶴子に釘を刺そうとアパートへ行った。
千鶴子は朋子は本当は矢野のことをそんなには愛してはいなくて
結婚したら息苦しくなるんじゃないかと余計なお世話を焼く。

身分をわきまえないこの発言に怒りを覚え暴言を吐く。
そんな時、ふと千鶴子は自分が人殺しであることを漏らしてしまう。





この時まで千鶴子の発言を信じていた矢野だが
千鶴子がトラックの荷台で河鹿荘へ帰ってきたことを知り
殺意がなかったとはいえ人を殺めてしまった事実に
弁護士の自分が殺人犯を無罪にしてしまったという
とんでもない汚点を残してしまったことに愕然とする。

当然、矢野はこれを口外するなと命令した。
千鶴子は無邪気にも先生とふたりだけの秘密ができたと言う。





何もかもがうまくいきそうな矢先、突然発覚した身の破滅につながる事実。
矢野がアパートを出ると、外にはカメラを構えた君川と由基子がいた。
これまで敵対していた仲だったが、矢野は千鶴子との関係を素直に認め
由基子への手切れ金で用意した700万の他に500万の小切手も出し
早めに千鶴子の始末を依頼した。




由基子と君川は千鶴子を事故死に見せかけて殺そうとした。
由基子が千鶴子を待ち伏せて一緒にアパートへ行き鍋を囲む。
君川は由基子が頼んだ酒屋の配達員に変装し
アパートへ睡眠薬入りのビールを届けた。

ビールを飲んだ千鶴子が眠ると、由基子はガス漏れにみせかける
準備をして近くに睡眠薬を置くとアパートを出ていく。





翌朝、由基子と君川が矢野の事務所でうまくいったと報告をしていると
フラフラとしながら千鶴子が入って来た。
由基子は昨日のことを千鶴子が寝ちゃったからとうまくごまかした。


失敗した由基子たちは、夜、君川が自動車の廃車置き場に
千鶴子をおびき出し車の下敷きにしようとする。
今度こそ大丈夫だと千鶴子の死体を確認しようとしたふたりも
車の下敷きになってしまった。

千鶴子は奇跡的に無事で車の下から這い出てきた。

君川を探し周りをうろつくと、車に押しつぶされた君川の死体を見つけた。
その近くには瀕死の状態の由基子がいて最後の言葉を発するがすぐに息を引き取った。







松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人

久しぶりに千鶴子は精吉に会った。
事務所を辞めたことを告げると、精吉はふられたんだなといい
当たり前だ、種族が違うとつぶやいた。




求職中の千鶴子を矢野が訪ねてきた。
矢野は退職金の給料1か月分を渡しに来たのだった。
以前手切れ金として500万を渡そうとしときは
千鶴子に拒否されたが、これは正当な金だから受け取ってくれと言う。
そしてふたりだけの送別会をやろうと千鶴子を誘った。

松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人


二人はホテルのレストランで夕食をとり1夜をともにした。
翌朝、矢野は千鶴子をボートで湖に連れ出す。

千鶴子は頭が弱いながらも何もかも知っていた。
由基子に仕組まれたガス事故の時からおかしいと思っていて
廃車置き場の時も由基子が残した矢野という名前から
矢野が自分を殺そうとしていたことに気が付いていた。


矢野は千鶴子をボートの事故に見せかけて殺害しようとする。
すると、千鶴子はりんごを向いていたナイフで矢野を刺し殺す。
矢野を殺人犯にはしたくなかった・・・。










杉山千鶴子は田舎出の貧しい頭の弱い女。
それを小川真由美が見事に演じていて絶品です。


これまで社会の片隅で生きてきた千鶴子は
計算高く野心しかない弁護士矢野の依頼人を信じるという一言で
弁護士に愛情を持ち始めます。

裁判は圧倒的に不利に見えたが、矢野の活躍で無罪を勝ち取ります。
さらには、貧しい千鶴子の身の回りの世話までして美談を作り上げ
群がって来たマスコミを利用して自分の知名度を上げることに成功。

矢野は自分のためだけにやっていることなのに
それを好意だと勘違いした千鶴子はますます矢野に入れあげる。
矢野に大物若宮の娘との縁談が出てきても、それはなんのその。
ひたすら矢野を思い続け、皮膚に吸い付いてくるようにつきまとい
矢野の邪魔をしないといいながらも吸い付いて離れない。



いつまでもいつまでも自分を思い続け、離れると言いながらも
まとわりついてくるうざい女。
こうなってくると男にとっては
心ん中で思い続けられているというだけでもどんなに迷惑なことか。




おまけに無罪とした千鶴子は実は本当は人を殺していて嘘をついていた。
世間の注目を浴びただけに、この事実がしれたら身の破滅だ。



薄弱と思われた千鶴子だが、自分に起こる危険にはちゃんと気が付いていた。
バカなのか普通の感覚を持っているのかわからない、紙一重の怖さを感じる。
だからこそ、矢野から離れるといいながらも、そうはならないような
本人は故意にまとわりついているのではないんだろうけど
結果そうなっているというこの女の怖さがある。

その演技にあざとさを感じさせず、実際のところは
どうなのか計り知れない恐ろしさを表現していました。




氷のような冷たい雰囲気を持つ高橋幸治が
今回の役にピッタリ。
高橋幸治は土ワイのライバルだったザ・サスペンスの
「悪魔のような完全犯罪」でも意味ありげな役で登場していて
これがまた良かった。
正体はただの刑事でしたが。

「悪魔のような完全犯罪」の裏では
土ワイの「天使と悪魔の美女」が放送されていたんですよね。
いい時代でした。






小川真由美と高橋幸治が上野でデートをするシーン。
何故か森のくまさんが陽気に流れる。


松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人
松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人
松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人

それまでとてもドロドロとしていたのに
いきなりデートでは、奇をてらったはしゃぎっぷり!


松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人

森のくまさん♪もこの表情で歌が終わる。




そして、ラストのボートで刺し殺す場面でも
湖の向こうから森のくまさんが流れる。

小川真由美は「あたしこの曲好き。かわいい。」って。

森のくまさんというとこのドラマを思い出しそうで
怖いイメージがついてしまいそう。


千鶴子は、多分自分を殺すために湖にやって来たのだろうと疑いながらも
信じたい気持ちがあり複雑な心境になる。

松本清張の種族同盟 小川真由美

だが、非常にも悪い予感が的中する。

愛した人を殺人犯にしないために、自分の方が相手を殺すって・・・。

このドラマ怪奇というわかりやすい怖さではなく
人間が持つ愛憎、底知れぬ怖さが見事に表現されています。








松本清張の種族同盟 加藤嘉


そんなヒロインの父親に加藤嘉。

嘉は社会的地位のあるきちんとした役もやりますが
今回のような役の方が私は好きです。




森のくまさんとか、デートのシーンは
これまでの流れからすごく浮いていて、それだけに恐ろしい。
というか、エキセントリックな小川真由美そのものが怖かった。






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