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夏樹静子の「黒白の旅路」 セクシャリティを扱った風変わりなミステリー

category - ライフスタイル
2018/ 01/ 16
                 
去年の夏頃、「風の扉」を読みたくて、<夏樹静子作品集3>を読んでいたら
「黒白の旅路」も収録されていたので読んでいました。
タイトルだけは知っていたので、以前からどんな話か興味がありました。







野添立夏子は静岡から東京へ出てきて一人暮らしの大学生。
六本木のバー、ジュゴンでアルバイトをしている。
5歳で母が亡くなった後、男手ひとつで育ててくれた父が
大学入学直後に再婚したのがショックだった。
立夏子は軽度の鬱と離人症がありどこか無気力だった。




ジュゴンの客で年の離れた朝永敬之と男女の関係にあった。




朝永は七年前、会社社長の娘と恋愛し、婿養子として迎えられた。
義父が他界すると、朝永が事業を引き継ぎ社長に就任した。
妻の美佐子も異常分娩の結果赤ん坊とともに死亡してしまった。
二年前に現在の妻雪乃と再婚。




事業の方は経営不振で、おまけに会社の裏に住んでいた
幼女をはねて死亡させてしまい賠償金の支払い後も
相手の家族から恨まれている状態だった。


立夏子が朝永との情事の最中ピルを使用し始めたことを話すと
朝永はピルに詳しく使うのをやめろという。
立夏子は朝永を思ってピルを使い始めたのだが
思いもしなかった拒否反応に意外な一面を見たのと
自分の体を気遣ってくれることに奇妙さを感じた。


そんな情事のあとで朝永が立夏子に
会社の業績や事故のことを話すうちに死を口にした。


幼女の遺族が朝永につきまとい、ジュゴンにも来たことがあった。
それとは別に”岩田”と名乗る男からも店に電話があり
朝永は居留守を使っていた。





朝永は立夏子に一緒に死んでくれといった。
雪乃とはもう形ばかりの夫婦で死の道連れに立夏子を選んだのだった。

心中を承諾した立夏子は翌日朝永と待ち合わせて天城峠へ向かった。
現地に到着しハイヤーに乗ると、その後ろを着いてくる車に立夏子が気づいた。
ふたりは宿で最後の夜を過ごすと翌日睡眠薬を大量に飲んで心中をはかる。

しかし、これは未遂に終わった。
初めて睡眠薬を大量に飲んだ立夏子は知らないうちに吐き出していた。
立夏子が意識を取り戻すと、隣には左わき腹をナイフで刺されて死んでいた朝永がいた。
ナイフの柄は立夏子の右手に握らされていたのだ。

死のうと思った立夏子なのに、この状況で生きる本能が目覚めたのか
逃げなければと思った立夏子は東京まで帰った。


立夏子は嘘の理由をいって結婚していた友人の文代の家にしばらく置いてもらう。



そこから立夏子の身の証を立てるための行動が始まった。



立夏子は朝永にジュゴンの勘定を取り立てるフリをして
幼女の祖父である桜井に近づいた。
桜井は朝永が行方知れずになっていることを知っていて
妻の雪乃を籍に入れていないことも教えてくれた。



電車に乗った立夏子が桜井は疑わしいのかどうか思いあぐねていると
向かいの席のてっきり男と思っていた乗客がサングラスをはずし
女であることに驚いた。

これをヒントに立夏子は男装することを思いつく。
ちょうど身を隠すのに好都合だ。


立夏子は朝永の自宅へ行ってみることにした。
桜井は雪乃に情夫がいると確信を持っているようだった。
初めて見る雪乃は桜井が怖いような美人と表現したように
不思議な華やぎをたたえた女だった。
最初こそ偽名を使ったものの、正体を明かして雪乃に迫るが
朝永は関西に出張にいっていると門前払いをされる。

立夏子は雪乃の情夫を確かめるべく家を見張る。
しかし、一向に変化が訪れず今夜はあきらめて
帰ろうとするとナイフを持った暴漢に襲われ左手に傷を負ってしまう。
次の瞬間大きな影が暴漢に近づいてきて撃退してくれた。
大きな影は「岩田さんじゃないのか。」と暴漢に向かっていった。


大きな影の主は滝井といって、姉礼子の夫の岩田周一を探していた。
岩田は行方不明となっていて礼子の話では自分を本当に愛してなく
昔の恋人を忘れられないようだった。
さっき岩田だと思ったのは礼子の話で聞いていた岩田の服装に似ていたからだった。
滝井も岩田の身辺を調べている最中、朝永の家へ出入りをしている形跡があるのを掴んでいた。


朝永の死体も発見されて、いよいよ立夏子も追われる立場となってきた。
立夏子は手の傷の手当で病院を訪れていた。
そこで雪乃がピルを常用していたという情報を掴んだ。

立夏子は文代の機転で文代の祖父母の家でかくまってもらうことになった。
しかし、警察の捜査もすすみ朝永の同伴者が立夏子であることから手配した。

このままでは拉致があかないと立夏子は東京に戻る。
その間に朝永の会社は倒産し、雪乃は用意してあった目黒のマンションに引っ越していた。
立夏子が目黒のマンションを突き止め、そこで滝井と再会した。

朝永の記事が報道されたことによって滝井も立夏子の事情を知っていた。

ここから立夏子は滝井の世話になりながら協力者となる。


ふたりは情報の交換を行うと滝井も雪乃に会っていて
岩田のことを聞いてみたが知らぬ存ぜぬだったことなどを教えてくれた。

ひとりより二人になったことでここから動きが活発化していきます。

未亡人となった雪乃は未だにピルをもらい続けていて
一人の男とあっている現場を押さえた。
男は変わった女性画を書く葛西悌二郎という画家だった。

葛西は雪乃に絵のモデルを頼んでいて
雪乃から中山と言う36歳くらいの男を紹介された。
しかし、男の上着には「岩田」の縫い取りがしてあったというのだ。
葛西はその後消息を絶ってしまい、福岡へ行ったらしいことを知った
立夏子は福岡へ旅立つ。

立夏子は葛西の足取りを追い、日本舞踊の池島という家を訪ねた。
そこでは収穫は得られなかったものの、滝井が葛西からの連絡を受けて
二人が葛西の宿泊先へ行ってみると一足早く葛西の元を男が訪ねていて
近くの浜辺で虫の息になっているところを発見した。
葛西は「ヤマテ病院の、マキノ君・・・」という謎の言葉を残して死んでしまう。
宿の女中の話しでは謎の男の服装は、岩田が最後に家を出たときに
着ていた背広に似ているようだった。


滝井は岩田がかつて福岡に住んでいたことから、昔の同僚を訪ねていった。
そこで岩田が思い続けていたかつての恋人の正体を知る!



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この小説はすごく面白かったです。


不倫関係にある立夏子が朝永の愛撫を受けているところから始まります。
いよいよ最後へ・・・という時に立夏子がピルを使いはじめたことに朝永が拒否反応を示してくる。


ピルは友永の再婚相手(内縁)の雪乃が常用している。
しかも、未亡人になってからも使い続けています。
雪乃のまわりにちらつく男の影。


そして、死に損なった立夏子が追われる立場になったとき、
ふとしたキッカケで男装することを思いつきます。

立夏子が電車でみかけた男に見えた女の話しは
逃亡する際の変装のヒントだけでないことは容易に想像がつき
一体どんな重要なポイントとなるのか興味をそそられてきました。



物語の最初から岩田という謎の男の存在が
いたるところにちりばめられています。
岩田のかつての恋人を追っているうちに
いよいよ性的な問題は活躍を見せます。


その後をざっくりと書くと---


滝井はついに岩田の過去の恋人が誰かをつきとめます。
かつての同僚から岩田の恋人結城典子が殺されていて
それは典子の姉の夫婦関係のもめ事が発端です。
姉の夫が舞踏の名取で弟子の草場一と関係があった。
典子は義兄の件で草場と口論になり刺殺されたという事実をつかみます。
名取も病気で死んでしまって、典子の姉というのが
立夏子が福岡で訪ねた池島だったのです。
立夏子たちは、岩田は典子殺しの草場を見つけて復讐を果たそうとしているのではないかと思い始めます。

その草場の正体を推理しているうちに、それが朝永である可能性を考え
朝永の過去を洗い、朝永の戸籍から江藤信夫であったことを突き止める。

ヤマテ病院のマキノ君も判明し、葛西がゲイバーやレズビアンバーへ出入りしていて
話の流れから9年前に性転換手術した男が立派な家の奥さんに収まっていることを知る。


岩田も二人よりも前からこの事件を調べていた、岩田の復讐は遂げられたのか?


これまで点在していた人物たちが、繋がっていく面白さ。

東京、静岡、福岡に続き、最後は北海道で事件は解決します。
北海道でもうひとつ見せ場があります。
深い闇をもつ者たちの過去を追跡する旅で二転三転するストーリー。
意表をつかれたフィナーレ。


「黒白の旅路」は昭和49年に週刊小説で連載されてたようです。
この頃に、この意外性のある展開は結構斬新だったのではないかと思います。


最後は事件を通じて知り合った二人のロマンスで終わります。


土ワイの原作「風の扉」はドラマも見ていたし
ある程度の内容も知っていたので淡々と読んだのですが
「黒白の旅路」はテーマも面白く、ページを早く繰りたくなるほど
引き込まれて読んでしまいました。


これドラマ化されているだろうなと思ったら
土ワイの裏番組「ザ・サスペンス」でドラマ化されていました。
ザ・サスペンスも軽くはチェックしていたので
タイトルだけは頭に残っていたんですね。


「黒白の旅路」と似た話では土ワイの「仮面法廷」を思い出しました。


ザ・サスペンスはTBSで1982年4月10日から1984年9月29日まで
放送されていました。

私は残念ながら一度も本放送を見たことはないのですが
フォーマットから何から土ワイをパクっていたということで
あまりいい印象はなかったのですが
4年位前にTBSチャンネルで何作か放送していたのを
たまたま見て結構面白い作品があり
以来見てないものが放送されたときは見たりしています。






●「黒白の旅路」  1983年1月15日
原作: 夏樹静子  黒白の旅路 (徳間文庫)  
脚本: 長尾広夫
監督: 西村潔
出演: 原田美枝子、谷隼人、江原真二郎、
夏木マリ、小坂一也、梅津栄ほか




妻子ある男と心中を図った女子大生。
一人目を覚ました時、男は何者かによって刺殺されていた。
殺人犯に仕立てられたヒロインが真犯人を捜す中
次々と意外な事実が浮かび上がる。


女子大生の野添立夏子(原田美枝子)が
妻子ある友永(江原真二郎)と伊豆山中で
睡眠薬心中を図った。
だが、夜明け一人で目を覚ました立夏子は
友永が何者かにナイフで刺されて死んでいるのを発見した。
友永の妻(夏木マリ)を追って北海道へ向かった立夏子は
そこで思いがけぬ人物に会った。





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