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2019-12-09 (Mon)

傑作推理劇場 「百円硬貨」 松本清張、「雪の蛍」 森村誠一 (1981年)

今月もまた「傑作推理劇場」から二作品が放送されましたが
原作が松本清張、森村誠一とあっていずれも楽しめました。




●傑作推理劇場 「百円硬貨」  
放送日: 1981年8月10日
原作: 松本清張  『百円硬貨』  隠花の飾り (新潮文庫) 収録
脚本: 橋本綾
音楽: 菊池俊輔
監督: 野田幸男
制作: テレビ朝日、東映
出演: いしだあゆみ、川地民雄、上村香子、
成田次穂、相馬剛三ほか




傑作推理劇場 「百円硬貨」 




雨が降る東京駅、大川伴子(いしだあゆみ)は
公衆電話から長距離電話を掛けていた。


彼女は電話の相手に

「大阪経由で翌朝そっちに到着する。
何もかも捨てたから、もうあなたしか頼るものがない。
知らない土地でひとりで待つのは嫌なの。」

と泣きながら訴えていた。
その様子から深刻な状況に身を置いているのが容易にわかる。



伴子は電話を切ると列車に乗り込み女の一人旅とは思えない大きな二つのトランクを
荷台に置くと山陰の田舎町に着く十三時間後に思いを馳せた。




傑作推理劇場 「百円硬貨」 





四年前、二十八歳だった伴子は明和相互銀行江東支店の出納係で
勤続十年となり毎日家と職場を往復する変わり映えしない人生に嫌気がさしていた。


そんなある日、バスに乗ろうと走りながら財布を開けた伴子はうっかり百円玉を落としてしまう。
しかし、バスに乗りそびれない方に意識が向いて転がった百円玉を拾い上げることが出来なかった。
バスに乗り込んだ伴子は、置き去りにされた百円玉の存在が妙に気になって仕方なかった…。


自分を変えようと免許を取り以前から気になっていた赤い車を購入することを決意。
店へ駆け込むとそこにはセールスマンの細川龍二(川地民夫)がいた。
それがキッカケとなり伴子は細川と親しくなり、肉体関係を結ぶまでにさほど時間はかからなかった。
細川は伴子より四つ上の三十二歳ですでに妻子がある。




傑作推理劇場 「百円硬貨」 





その二年後、二人の関係がバレて伴子は細川の妻(上村香子)と二人きりで会った。
細川の浮気は初めてではなく、いつも最後は妻のもとに戻ってきたという。
伴子はいくら金を渡せば別れてくれるのかと言われた上に、
泥棒猫呼ばわりされ自尊心を傷つけられた。



妻は娘が結婚するまでは離婚に応じるつもりはない。




それから二年、伴子は三十二歳になっていた。
妻から突然呼び出された伴子は、
三千万円の慰謝料を条件に離婚すると伝えられた。



傑作推理劇場 「百円硬貨」 






細川は妻の実家は裕福で金が目当てではないといい、
二人が三千万円もの大金を用意するとは出来ないと知りながら
嫌がらせをしているだけだという。
しかし、このチャンスを逃したくない伴子は金は自分が作ると宣言してしまった。



ある土曜日、半ドンで行員たちは次々と退社し伴子一人となった。
合鍵で金庫を開けた伴子は三千万円をトランクに詰めると東京駅へ向かう。
公衆電話から愛する細川に電話した後に列車に乗り込んだ-。




翌朝、予定通りに国鉄の山金駅に着いた伴子は細川の迎えを待つ。
しかし、二十分待っても細川は迎えに来ない。
伴子は電話を掛けようとボックスに入るが小銭がないことに気がつく。




傑作推理劇場 「百円硬貨」 





一万円札を両替するために切符を買おうとするが釣銭の用意がないという。
今日は日曜日であたりの店が全て休みと知った伴子は
見渡す限り山ばかりの田舎の駅で不安に襲われ泣きそうになった。


この時、「主人は浮気してもいつも私の元に帰って来た」という
妻の顔が脳裏に浮かび裏切られたのではないかという恐怖心が襲ってくる。
すでに、約束の時間から一時間以上が経過していた…。



精神に異常をきたした伴子はある行動をとると電話ボックスに向かう。



すると、ようやく細川が到着した。
ホッとした伴子が駆け寄ろうとしたところ、窓口で切符を買おうとしていた女が
「泥棒!」と追いかけてくる。


傑作推理劇場 「百円硬貨」 





お金を崩すことだけに神経がいっていた伴子は彼女が切符代として出した金から
無意識に百円を盗んでいたのだ。
三千万円もの大金を手にしていながら、たった百円のために
伴子が掴もうとした幸せはするりと手から落ちていった。


この時、バス乗り場で財布から転げ落ちていった百円玉が脳裏に浮かんだ。



「あの時から、私の運命はこうなると決まっていたのだ…。」





隠花の飾り (新潮文庫)



冒頭から何度も映る百円玉。

主人公が公衆電話に投入する百円、バス乗り場で手からこぼれ落ち通りを転がって行く百円、
切符を買う時の百円。


なかでも発車するバスに乗り遅れまいと小走りしながら財布を取り出し
小銭を取り出そうとして百円玉を落としてしまう場面。


百円玉は勢いよく転がって行き、あっという間に喫茶店の前に立てかけてある看板までいくと
ようやっと障害物にあたることによって動きを止める。
主人公は勤続十年のベテラン行員で、つつましやかな一人暮らしを営みながらも
自動車免許を取得する金も自動車を買う金も持っている。


だが、この時バスに乗ることを選択し、百円を見捨てたという意識をしっかり持っていた。
それが、人生を賭けた最後の場面で大金を手にしながらも百円玉を手に入れたいばかりに
人の金を盗んでしまうことから全てがご破算になってしまうというオチ。


傑作推理劇場 「百円硬貨」 




土壇場で100円に泣かされ彼女のプランが崩れることを暗示している表現がお見事!


また神経の細そうな主人公が山に囲まれた小さな駅で男の迎えを待つが時計の針が進むだけで男は現れない。
妻が放った「いつも最後に夫は自分のもとへ帰って来た」という言葉が脳裏によみがえり
裏切られたのではないかという不安に駆られるシーン。


傑作推理劇場 「百円硬貨」 



その不安をあおるように周辺の山や畑、呑気に伸びをする駐在、罵倒する妻の姿などが
次々にフラッシュバックしてくる。
この主人公が味わった不安と孤独と絶望感を視聴者も同じように味わうことになるという演出がいい。




「百円硬貨」というタイトルがどんな意味を持ってつけられたのが気になっていた私にとって
繊細な伏線と描き方によっていろいろと考えさせられるドラマで興味深かったです。






●傑作推理劇場 「雪の蛍」  
放送日: 1981年8月11日
原作: 森村誠一  雪の蛍 (広済堂文庫)
脚本: 服部桂
音楽: 真鍋理一郎
監督: 浦山桐郎
制作: テレビ朝日、東映
出演: 大空眞弓、二宮さよ子、河原崎長一郎、
鹿沼えり、浜村純、小鹿番。三戸部スエ、高木均ほか




傑作推理劇場 「雪の蛍」







泉田栄子(大空眞弓)の夫・耀造(河原崎長一郎)は
山形で「北瓢亭」という大きな郷土料理店を経営している。



社長夫人の栄子は不自由のない暮らしをしているものの
子どもが産めない体であることが悩みだった。
それに加えて数年前より栄子を悩ましているのは
耀造に女がいるのではという疑いだった。



傑作推理劇場 「雪の蛍」





いつの頃からか、耀造は服に雪蛍を付けたまま帰宅するようになった。
雪蛍が生息する仙台に女がいるとわかったときから
栄子の心の奥には激しい憎悪が生まれた。



その耀造が仙台出張から戻ってきた。
栄子は何も気づかないふりをしてかいがいしく耀造の身の回りの世話をする。
仙台の支店は本店を凌ぐほどの成績を上げているらしい。


傑作推理劇場 「雪の蛍」





その矢先、入浴中の耀造が意識を失って倒れているのが発見。
一時、意識を取り戻した耀造は栄子に最後の力を振り絞って「えいこ」と呟いた。
夫が愛しているのは自分だと確かめられた栄子は
「もうあの女の事はいいのよ。」とこれまでのことを全て水に流し
耀造の自分に対する愛情の深さに涙が止まらなかった。





傑作推理劇場 「雪の蛍」





ほどなく、耀造はそのまま息を引き取った…。



栄子は耀造の跡を継ぎ社長となったことを従業員一同の前で発表。
そして、仙台にいる耀造の愛人の家へ向かった。



この時、栄子は愛人の名前が根岸英子(鹿沼えり)だと知り
耀造が死ぬ間際に残した「えいこ」が自分ではなく
英子を指していたのではないかと考え愕然とした。


栄子は手切れ金として二千万円を渡そうとするが英子は拒否する。
耀造はお腹の子を自分の子どもと認める認知書を書き
英子が耀造の財産の半分を相続するつもりであること知った。


ホステス上がりで下品だが若さだけはあり
妊娠する能力があった映子に対して怒りが込み上げてきた。




傑作推理劇場 「雪の蛍」





栄子は出前を頼むために階下へ降りようとする英子を衝動的に殴りつけてしまう。
その衝動で足を踏み外した英子は階段を転げ落ちてしまった。



予期せぬ出来事に動揺した栄子はまだうっすら意識のある英子の口を押えて殺してしまう。
栄子は自分の指紋を拭き取り、耀造のサインがある認知書を盗みだした。


やがて、栄子のもとに二人の刑事が訪ねてきた。


妊娠した英子が死に、相手の男が耀造であるかもしれないと確かめに来たのだ。
どうやら刑事は英子の死を事故と見ているらしいとわかり
栄子はそつなく刑事に応対し何事もないまま月日が流れた。



傑作推理劇場 「雪の蛍」





ところが、栄子がホッとしたのも束の間、店の経理を見ていた
中山計理事務所の所員・島村(二宮さよ子)が栄子が
英子を事故死に見せかけて殺したのを知り脅してきた。



驚いたことに、島村は英子よりも前から耀造と愛人関係にあり
五年間の間に二度も中絶していたことを告白する。
栄子はその間、何食わぬ顔で泉田邸へ出入りをしていた島村の
厚かましさに憎しみが湧いてきた。



島村は英子が妊娠したことを知り、自分との扱いの違いに
耀造に怒りをぶつけていた。
そして、耀造の死後に三度目の妊娠がわかり
英子を殺すつもりであの日、仙台へ行っていたのだという。



傑作推理劇場 「雪の蛍」




そこで、栄子の姿を目撃し状況から栄子が英子を殺したとわかったらしい。
島村が栄子の犯行を警察に言わない代わりに自分にお腹の子が
耀造の子どもだと認めさせようとしていると察した。



子どもの産めない栄子がそれを認めるという事は
妻の座を降りるという事を意味している。

栄子は「どんな状況になっても絶対に認めない!」と言い島村を殺そうと首を絞めた。



島村は「人殺し!」と叫び、それを聞いた庭師(浜村純)が
庭からゴルフボールを投げてガラスを割った。
その音に驚いた栄子はようやく島村の首から手を離し脱力するしかなかった。




傑作推理劇場 「雪の蛍」






冷静になった栄子はお腹の子は耀造の子どもと認めないと突き放すと
警察に本当の事を言ってもいいと電話機を島村の前に置く。
ダイヤルを回した島村は受話器の向こうの声の主に
栄子の犯行を告発することが出来ないまま受話器を切った。








それからしばらくして、相変わらず大繁盛する「北瓢亭」で
栄子は馴染みの客たちの席を飛び回っていた。
島村はなんと耀造の子どもを身ごもったまま「北瓢亭」で働いていた。
栄子は穏やかな表情で島村のお腹を気遣っているではないか。



そんなある日、英子が死んだ時に来た二人の刑事が店を訪れた。
老年の刑事は、あれから新しい動きが出てきたことを栄子に告げる。
その容疑者とは島村だった。


それを聞いた栄子は微妙な表情を見せる…。



傑作推理劇場 「雪の蛍」






島村を尾行した刑事たちは彼女が産婦人科に入って行くのを確認した。
その頃、栄子は耀造の遺影の前で結婚指輪を外す。




雪の蛍 (広済堂文庫)




運よく事故死で済みそうだった愛人の死を
あろうことか自分の犯行と知っているもう一人の愛人に
警察が容疑をかけ始めてきた。



さて、その後の展開はどうだったのでしょう?


ラストまでのストーリーは視聴者に委ねられ
結末まで描かれないままドラマは幕を閉じた。



意味深なのはラストの部分だけではなく
その前の自分が殺人犯だと愛人が知っていても
頑として子供を夫の子どもと認めることを拒否し
電話機を目の前に置いて愛人が110番通報するのも容認していた妻。


結局、愛人はダイヤルを回したものの妻を警察に突き出さなかった。


傑作推理劇場 「雪の蛍」




その愛人が、妻が経営する店に入り込んでいる。
直後にどんな取引で終わったのかも謎だ。


最後に妻は遺影の前で指輪を外すので
愛人の子供を認めて妻の座を降りたということなのだろう。


河原崎長一郎が鹿沼えりの乳房を弄ぶシーンに
昭和のドラマのおおらかさを感じましたね。






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