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ロシアの深い闇 -前編ー

category - 雑記
2008/ 08/ 09
                 
先月、図書館へ予約しておいたビジネス本を2冊借りに行ったとき、他にもいい本がないかと蔵書を見て回っていると、ある1冊の本が目に留まった。

アッラーの花嫁たち ―なぜ「彼女」たちは“生きた爆弾”になったのか?

『生きた爆弾』 という言葉がひっかかり本を手に取りパラパラとめくってみた。
2002年にチェチェンの武装勢力による「モスクワ劇場占拠事件」での、女性テロリストについて書かれていたものだった。

これは当時ニュースで見て知っていたので、借りてみることにした。

とはいうものの、この本を読むまでは日本で報道された表面上のことしか知らず、チェチェン共和国からロシア軍撤退を要求するため、狂信的なテロリストたちが自爆覚悟でこの行動にでたという程度の知識しか持ち合わせていなかった。

読み進めていくうち、彼女たちがなぜ『生きた爆弾』となったのか、その真相を知り衝撃を受けた。

多くの若い女性たちは、死ぬことを望んでおらず、中にはモスクワまでの往復切符を渡され、使命を果たしたのちには生きてそこから出られると信じていたものも・・・

自爆テロは「モスクワ劇場占拠事件」だけでなく、一連の事件の中では怪我を負いながらも生還したものもいるが、彼女もまた命を狙われる危機にさらされ堕ちた生活に身をゆだねるしかない状況に。

悲しかったのは、好意をもった男性にだまされるようにして、また親に売られるようにして、彼女たちが生きた爆弾にならざるを得なかった背景である。また、不幸な女性を狙ってシャヒード にするところも許せない。

一般市民への残酷な行為の数々が書かれており、少数派ではあるが、そうした行為による絶望の果て、復讐のために自らの意思で生きた爆弾となった女性の話も書かれており、なんともやりきれない思いにさせられた。

余談であるが、著者のユリヤ・ユージックは、この本を書いたときは確か22歳だったはず。
著者・ユリヤの写真だが、女優ばりの美貌の持ち主で、妖艶なフォトに驚かされた。

アッラーの花嫁たち ―なぜ「彼女」たちは“生きた爆弾”になったのか?
アッラーの花嫁たち ―なぜ「彼女」たちは“生きた爆弾”になったのか?


「アッラーの花嫁たち」ではチェチェン戦争について詳しく書かれていないため、この問題について詳しく知らない自分には政治的・民族的なことについてわかりづらい部分もあり、ロシア-チェチェンについて理解を深めるため、もうひとりのロシア人女性ジャーナリストの本を借りてみることにした。
ジャーナリストとしては、ユリヤよりも彼女のほうが有名です。

プーチン政権批判で知られる「ノーヴァヤ・ガゼータ」紙のアンナ・ポリトコフスカヤの著書チェチェン やめられない戦争である。彼女は「モスクワ劇場占拠事件」では、武装グループから仲介役を指名され交渉にあたった人物でもある。

こちらではチェチェンの地図、歴史から戦時下の様子から、この紛争が誰に利益をもたらすのかまで書かれている。(チェチェン戦争が何故起こったのかは、この後紹介するリトビネンコの著書の方がわかりやすいと思う)


チェチェンには、規制の厳しさから外国人のジャーナリストが入りづらいという中、身の危険もかえりみず現地へ取材に赴き、チェチェン人の生の声を集め書き起こし、堂々とプーチン政権を批判する。彼女の勇気ある行動力から浮き彫りとなったチェチェンとロシアの現実は重く読む価値がある。


まさに命を懸けた彼女の現地での取材による生の声の数々、そしてロシア軍の「掃討作戦」という名目の残虐行為。日本のニュースで報道される伝えきれていない国際情勢の一部を深く知ることになった。

「掃討作戦」の実態がこの本では生々しく書かれている。


この中でひとつ明るい話題があった。
チェチェンからロシアへ抜け出し、モスクワで普通の暮らしを手に入れた年配の女性の話だ。
希望が見出せない(というより、絶望しかない)生活を強いられている様子ばかりが取り上げられていたので、ほっと胸をなでおろすことが出来た唯一のケースである。

チェチェン やめられない戦争
チェチェン やめられない戦争


現実を伝えるジャーナリスト・アンナは、航空機内で毒を盛られ重態に陥ったこともあったが、最後まで伝えることを諦めなかった。

しかし、そんなアンナも2006年10月7日暗殺される。

モスクワ市内の自宅アパートのエレベーター内で、銃殺された死体が発見された。

命を狙われながらも、貫いた正義。

彼女以外でも、多くのジャーナリストが殺されているそうだ。


彼女の本はプーチニズム 報道されないロシアの現実と、ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳を、まだ読んでいないので近々読む予定だ。きっと、迫力ある渾身のルポであるはず。





※ノルド・オスト事件(=モスクワ劇場占拠事件)についてもっと掘り下げて調べてみたくなり、人質のひとりが書いた「モスクワ劇場占拠事件」も借りてみたが、こちらはお勧めできない。

著者がジャーナリストということもあり、迫力ある壮絶な手記かと思いきや、その殆どが事実の羅列であるからだ。

ジャーナリストでもありかつ人質でもあった彼女が一体何をこの本で伝えたかったのか理解に苦しむ。
アンナ・ポリトコフスカヤのように、その場にいたからこそ伝えられる恐怖や苦しみなど、メディアが伝えられなかった当事者のありのままの声が聞きたかったのに。

モスクワ劇場占拠事件―世界を恐怖で揺るがした4日間
モスクワ劇場占拠事件―世界を恐怖で揺るがした4日間

ロシアの腐敗、チェチェン戦争は何故起きたのか、プーチン政権は何故批判されたのか、などイマイチすっきりとこなかった自分にとって次に紹介する人の本は、わかりやすくこれらを教えてくれそうだ。

ロシアの深い闇 ー後編ー

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